大きく悪化した7月の景気ウォッチャーと赤字に転じた6月の経常収支をどう見るか?
本日、内閣府から7月の景気ウォッチャーが、また、財務省から6月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲9.1ポイント低下の43.8、先行き判断DIも▲4.8ポイント低下の42.8と、いずれも悪化しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列で▲1324億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。ただし、景気ウォッチャーについては最初の3パラだけ、経常収支については最後の2パラだけを引用しています。
7月の街角景気、2カ月連続低下 「持ち直し足踏み」
内閣府が8日発表した7月の景気ウオッチャー調査(街角景気)は、3カ月前と比べた現状判断指数(DI、季節調整値)が43.8と、前月比9.1ポイント低下した。低下は2カ月連続。新型コロナウイルスの新規感染者の急増が影響した。原材料や食料品の価格高騰も影を落とす。
調査期間は7月25~31日。好不況の分かれ目となる50を4カ月ぶりに下回った。内閣府は現状の景気の基調判断を前月の「緩やかに持ち直している」から「持ち直しに足踏みがみられる」に下方修正した。
家計動向関連のDIは42.6と10.8ポイント低下した。飲食関連は前月の62.0から半分以下の30.8まで落ち込んだ。
経常黒字3兆5057億円、22年上期 8年ぶり低水準
6月単月の経常収支は1324億円の赤字だった。経常赤字は1月以来、5カ月ぶりとなる。
貿易収支の赤字傾向は足元でも変わっていない。貿易収支は1兆1140億円の赤字と、8カ月連続で赤字だった。輸出は前年同月比20.4%増の8兆5831億円、輸入は49.2%増の9兆6970億円といずれも最多となった。輸入額が輸出額を上回る構図が鮮明になってきている。
短いながら、よく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。
現状判断DIは、ここ半年ほどを見れば、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大にほぼ従う形で、やや荒っぽい動きを示しています。上のグラフの通りです。すなわち、3月21日でまん延防止等重点措置の行動制限が終了した後、4月50.4、5月54.0、6月52.9と50丁の水準が続いたものの、最近時点での感染拡大により7月は43.8へ大きく悪化しました。先行き判断DIもよく似た動きながら、さすがに先行きを的確に想定して、6月DIはすでに50を割り込んだ47.6を記録していました。こういった動きを反映して、統計作成官庁である内閣府では、引用した記事にもある通り、基調判断を6月の「緩やかに持ち直している」から、「持ち直しに足踏みがみられる」と半ノッチ下方修正しています。現状判断DIに戻って7月の統計を6月からの前月差で少し詳しく見ると、家計動向関連が▲10.8ポイントと企業動向関連の▲3.7ポイントよりも大きく落ちていて、中でも、飲食関連が▲31.2ポイントの低下となっています。いかにも、COVID-19の感染拡大の影響といえます。何度か、このブログでも明らかにしているように、消費は所得とマインドの影響が大きく出ます。書牘はボーナスなどがそこそこ出たとしても、マインドはCOVID-19次第ということですから、エコノミストの手におえません。
続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。季節調整をしていない原系列の統計で見て、6月統計では今年1月以来の経常赤字を記録しています。6月経常収支の内訳は、国際商品市況における資源価格の高騰などを受けて、貿易収支が▲1兆7475億円の赤字、サービスと合わせて貿易・サービス収支が▲1兆6644億円の赤字を計上しています。1次所得収支がやや縮小したため、経常収支が▲1324億円の赤字に転じ、繰り返しになりますが、1月以来の赤字となっています。ただし、季節調整済みの系列では経常収支は5月統計こそ+82億円まで黒字が縮小しましたが、6月には+8383億円の黒字に戻しています。ウクライナ危機以前の+1兆円の黒字に比べれば縮小したとはいえ、パンデミックや戦争や円安であってなお黒字を計上しているのは1次所得収支の黒字、その基は海外資産の賜といえます。ただ、いつものことながら、国際商品市況で石油をはじめとする資源価格が値上がりしていますので、資源に乏しい日本では輸入額が増加するのは当然であり、消費や生産のために必要な輸入をためらう必要はまったくなく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。
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