« 台風14号の影響やいかに? | トップページ | 帝国データバンク「企業の価格転嫁の動向アンケート」の結果やいかに? »

2022年9月20日 (火)

30年ぶりの上昇率を記録した消費者物価指数(CPI)をどう見るか?

本日、総務省統計局から8月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.8%を記録しています。報道によれば、30年ぶりの高さの上昇率だそうです。ただし、エネルギー価格の高騰に伴うプラスですので、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+1.6%にとどまっています。なお、ヘッドライン上昇率は+3.0%に達しています。まず、日経新聞のサイトから統計を報じる記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価8月2.8%上昇 30年11カ月ぶりの上昇率
総務省が20日発表した8月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が102.5となり、前年同月比2.8%上昇した。消費増税の影響を除くと1991年9月(2.8%)以来、30年11カ月ぶりの上昇率だった。5カ月連続で2%台となった。資源高や円安が、エネルギー関連、食料品の価格を押し上げた。
生鮮食品を含む総合指数は3.0%の上昇率で91年11月以来、30年9カ月ぶりの水準となった。海外との比較では米国やユーロ圏の総合指数は8~9%の上昇率で日本より高い水準にある。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は1.6%上昇した。
生鮮を除く総合指数はQUICKが事前にまとめた市場予想の中央値(2.7%)を上回った。上昇は12カ月連続となった。522品目のうち、上昇した品目は372、変化なしが40、低下が110だった。上昇品目数は前月の376から微減だった。
エネルギー関連が16.9%上がり、2桁の伸びが続いた。発電所の燃料費の高騰を受けて電気代は21.5%と7月の19.6%を上回って上昇した。都市ガスは26.4%と、1981年3月(38.4%)以来、41年5カ月ぶりの上昇率となった。
政府の補助金による抑制効果があり、ガソリンは7月の8.3%から縮小し6.9%の伸びだった。エネルギー関連だけで指数を1.27ポイント押し上げた。
食料は4.7%上昇し、7月の4.4%を上回った。生鮮食品は8.1%(7月は8.3%)、生鮮食品を除いた食料は4.1%(同3.7%)の上昇で、いずれも高い上昇率が続く。
食パンは15.0%、チョコレートは9.3%上昇した。メーカーの値上げが相次ぐ食用油は39.3%伸びた。ウクライナ危機で輸送ルートの変更を余儀なくされているさけは28.0%、輸入品の牛肉は10.7%、梨は10.4%と購入頻度の高い商品で上昇が続く。
原材料高などの影響は外食にも波及し、ハンバーガー(11.2%)などの品目も上がった。
2021年8月に一部の事業者で値下げがあった影響で、携帯電話の通信料は下げ幅が縮んだ。7月のマイナス21.7%から、8月はマイナス14.4%になった。宿泊料の押し上げもあり、財・サービス別で、サービスが19年12月以来のプラスとなった。
日本経済研究センターが14日にまとめた民間エコノミスト36人の予測平均では、消費者物価指数上昇率は、四半期ベースの前年同期比で22年7~9月期が2.49%、10~12月期が2.64%と2%台の上昇が続く。23年は1~3月期まで2%台で推移し、4~6月期に1%台になるとみている。
他の主要国の総合指数は米国は8月に前年同月比8.3%の上昇と、8.5%だった7月より低下したものの高水準にある。ユーロ圏は8月に9.1%と、7月(8.9%)からインフレが加速した。英国は8月に9.9%の上昇で、10.1%だった7月から下がった。11カ月ぶりに伸び率が縮んだ。

やたらと長くなりましたが、いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

photo

まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.7%の予想でしたので、ホンの少しだけ上振れた印象です。もちろん、物価上昇の大きな要因は、基本的に、ロシアによるウクライナ侵攻などによる資源とエネルギー価格の上昇による供給面からの物価上昇と考えるべきですが、もちろん、円安による輸入物価の上昇も一因です。すなわち、コストプッシュによるインフレであり、日銀による緩和的な金融政策による需要面からのディマンドぷるによる物価上昇ではありません。CPIに占めるエネルギーのウェイトは1万分の712なのですが、8月統計におけるエネルギーの前年同月比上昇率は16.9%に達していて、ヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度は+1.27%あります。このエネルギーの寄与度+1.27%のうち、電気代が半分超の+0.74%ともっとも大きく、次いで、都市ガス代の+0.24%、ガソリン代の+0.15%などとなっています。ただし、エネルギー価格の上昇率は3月には20.8%であったものが、4月統計では+19.1%、5月統計では+17.1%、6月統計では+16.5%、7月統計では+16.2%、そして、直近で利用可能な8月統計では+16.9%と、高止まりしつつも、ビミョーに落ち着いてきているように見えます。他方で、生鮮食品を除く食料の上昇率も4月統計+2.6%、5月統計+2.7%、6月統計+3.2%、7月統計+3.7%に続いて、8月も+4.1%の上昇を示しており、+0.92%の寄与となっています。ヘッドライン上昇率とコアCPI上昇率は8月統計で、それぞれ、+3.0%と+2.8%ですから、ほぼほぼ+2.0%を超える部分はエネルギーと生鮮食品を除く食料による寄与と考えるべきです。そして、現状ではまだまだエネルギーの寄与度が大きいのですが、毎月の寄与度の差を考えれば、寄与度差という観点ではインフレの主因はエネルギーから食料に移りつつあるように見えます。

9月末までと予定されていたガソリン補助金は12月末まで延長されましたが、従来から私が主張しているように、化石燃料に補助金を出して消費を促すのは気候変動=地球温暖化に逆行しかねません。しかし、食料についてはもっとも基礎的な生活必需品と考えるべきです。経済政策で然るべき対応が求められます。

|

« 台風14号の影響やいかに? | トップページ | 帝国データバンク「企業の価格転嫁の動向アンケート」の結果やいかに? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 台風14号の影響やいかに? | トップページ | 帝国データバンク「企業の価格転嫁の動向アンケート」の結果やいかに? »