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2022年10月 4日 (火)

高等教育における社会人向け教育の必要性やいかに?

先週火曜日の9月27日に、経済協力開発機構(OECD)から The New Workplace in Japan と題するリポートが公表されています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大から、日本の雇用に必要とされるスキルが大きく変化し、特に、社会人の学び直しを重視する必要がある、という結論を示しています。まず、OECDのサイトからこのリポートの要約を引用すると以下の通りです。

The New Workplace in Japan: Skills for a Strong Recovery
In the context of a rapidly changing world of work, the COVID-19 pandemic has heightened pre-existing challenges to Japan's adult learning system and raised new ones. This report examines how skill requirements have been evolving in Japan prior to and during the COVID-19 crisis. It examines changes in the skills composition of Japan's workforce as well as policy efforts to improve the accessibility of career guidance, broaden training participation and foster the adoption of teleworking practices. The report also provides concrete recommendations to tackle inequalities in skills and training among socio-demographic groups. Finally, it provides suggestions for how to develop a labour market information system to feed real-time data into crucial policy and decision-making processes.

3章構成となっていて、以下の通りです。

Chap. 1
How the labour market and skills needs in Japan are changing during the COVID-19 crisis
Chap. 2
The policy response of the Japanese Government during the pandemic
Chap. 3
Looking ahead: Innovative skills policies for a strong recovery

photo

目次を見ても明らかな通り、どうしても、コロナに目が起きがちなのですが、私はもっと第3章に注目すべきと考えています。例えば、上のグラフは第3章p.73から Figure 3.2. Non-regular (temporary) workers are employed in generally lower-skilled jobs を引用しています。いくつかの分野では、期間の定めのない正規職員よりも臨時の非正規職員の方がスキルが低いとされています。もちろん、因果関係は複雑です。スキルが低いので非正規として働いているのか、それとも、非正規の職しかなかったのでスキルの伸びが十分でなかったのか、特に後者では、どうしても伝統的にOJTが充実してしまっている日本の職場においては格差拡大の方向に作用するおそれが十分あります。ですから、昨日の岸田総理大臣の所信表明演説にもあったリスキリングのような形も含めて、社会人向けの教育はそれなりに重要です。もちろん、学齢期の生徒や学生に対する教育も重要なのですが、新卒一括採用が一般的で初職から長期雇用につながるケースが少なくない日本の労働市場においては、入職時のつまずきが一生涯の長きにわたって残存し、あるいは、格差拡大の方向で作用しかねません。これを防止するためには社会人になってからの教育、特に、高等教育の果たすべき役割は重要です。

ひるがえって、我と我が身を見ると、私の勤務している大学では、海外からの留学生を大学院に受け入れる体制を整備・強化しようとしているように見えます。橋本内閣の時に国際協力については「重点化」の名のもとに実態的な削減が始まってもう25年になります。経済系の大学院の場合、日本人院生は極めて限られたトップ校に向かい、私の勤務している大学くらいであれば、留学生がほとんどです。そろそろ、社会人向けの大学院授業の充実を図らないと時代に取り残されそうな気がするのですが、東京に位置する大学と関西のそれも京阪神からやや距離のある大学のロケーションの差が埋めきれない可能性はあるのかもしれません。

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