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2022年10月27日 (木)

日本政策投資銀行リポート「高まるインバウンドへの期待と課題」やいかに?

今週火曜日の10月25日に日本政策投資銀行から「高まるインバウンドへの期待と課題」と題するリポートが明らかにされています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大から長らく下火になっていたインバウンド観光客の訪日とインバウンド消費なのですが、ウィルスの弱毒化が進んだかどうかは専門外の私には不明ながら、COVID-19の感染拡大の抑制に応じて、徐々に国際的な観光客の移動が制限が緩和され始めているのも事実です。こういった動きに合わせてのリポートですので、簡単に図表を引用しつつ取り上げておきたいと思います。まず、リポートの要旨を3点引用すると以下の通りです。

要旨
  • コロナ禍で世界的に国際移動が制限されたが、足元では各国で緩和が進む。日本も、2022年10月11日に水際対策を大幅に緩和した。
  • 観光客数の回復はアジアで鈍く、特に日本の回復が遅れていた。円安は訪日外客数の押し上げ要因となるため、円安や水際対策緩和による訪日外客の増加が期待できる。
  • コロナ前の訪日外国人消費において大きな割合を占める中国が今後のインバウンド回復のカギとなるが、ゼロコロナ政策の緩和は23年中頃との見方が多く、訪日外客の本格的な持ち直しは23年後半以降となると考えられる。それまでは、日本人の国内旅行消費の回復が補うほか、単価向上などの取り組みも検討されることとなろう。

私は、COVID-19の感染拡大が抑制されているからといって、ポストコロナの観光事情がプレコロナにそうそう簡単に戻るとは考えていませんが、関西ではかなりの程度にインバウンド需要に依存していた部分もあり、また、私も月一くらいで京都に行くのですが、確かに、直近10月中旬以降では、少なくとも京都には欧米人観光客がチラホラながら見受けるようになったのも実感として持っています。いずれにせよ、過大な評価は禁物ながら、インバウンド消費の今後の動向については大きな興味あるところです、

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まず、上のテーブルは、日本の水際対策緩和状況 のテーブルをリポートから引用しています。10月11日から、入国者数の上限は撤廃され、ワクチン接種証明があれば陰性証明は不要とされ、短期のVISAは従来と同じように不要とされ、個人旅行も解禁されています。ですから、水際規制はほぼほぼなくなった、と考えてよさそうです。また、諸外国でも、ゼロコロナ政策を取っている中国で観光目的は不可とする入国制限を設けいているほかは、かなりの程度に入国規制は緩和が進んでいるようです。

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続いて、上のテーブルは、入国者数と出国者数 のグラフをリポートから引用しています。こういった水際規制の緩和などに従って、米国では入国者数についてはコロナ前の60%、出国者については80%超の水準まで回復してきていますし、トルコの入国者数についてはコロナ前の水準を上回っていたりします。他方で、日本については入国者数・出国者数ともに、コロナ前と比較して、まだまだ低い水準にとどまっています。逆から考えれば、どちらもこれから回復する余地が大井にある、ということなのだろうと私は受け止めています。

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続いて、上のテーブルは、訪日外客数と12年からの増加要因 のグラフをリポートから引用しています。私も一昨年の紀要論文でインバウンド消費の決定要因を分析したりしましたが、基本的に出国地域の所得水準の上昇を主因に我が国のインバウンド需要が増加します。リポートでは、加えて、為替や物価差、渡航費用に影響する原油価格の影響を受けると想定して、入国者数のモデルを考え、足元の円安などを考慮すれば、国内外の行動制限がなかった場合、潜在的には年率3,400万人程度の潜在訪日外客があった、との推計結果を示しています。

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最後に、上のグラフは、全国中小企業団体中央会「9月の中小企業月次景況調査」から 前年同月比DIの推移 を引用しています。インバウンド消費の恩恵を受けるのは中小企業が少なくなく、まだまだ本格的な景気回復が望めず、、電力料金などエネルギーや原材料価格の高騰、急激な円安の影響により先行き不透明感も残る中小企業には、インバウンド消費の拡大も中小企業には起爆剤のひとつにならないものか、と考えないでもありません。

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