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2022年10月 6日 (木)

国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し」分析編を読む!!!

日本時間の昨夜、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し」World Economic Outlook, October 2022 の分析編 Analytical Chaptersが公表されています。まず、チャプターのタイトルは以下の通りです。

ch2
Wage Dynamics Post-COVID-19 and Wage-price Spiral Risks
ch3
Near-term Macroeconomic Impact of Decarbonization Policies

私のこのブログでは国際機関のリポートを熱心に注目しており、ひとつの特徴となっています。従って、このリポートについても、図表とともに簡単に取り上げておきたいと思います。

photo

まず、上のグラフはリポート第2章から Figure 2.3. Changes in Wages, Prices, and Unemployment after Past Episodes with Accelerating Prices and Wages を引用しています。第2章では、インフレに焦点を当てていて、現在のインフレが賃金上昇とスパイラルを生じて、インフレ率が上昇するとともに、高インフレが長期に継続するリスクを分析しています。結論としては、過去のよく似た22の事例のエピソード分析により、そういった物価-賃金スパイラルを生じるリスクは大きくないとの検証結果が示されています。上のグラフでは、米国を例に、インフレ率、失業率、明国賃金上昇率、実質賃金上昇率について22のエピソードのメディアンをプロットしています。赤いラインだけはそれらのエピソードの中から、もっともインフレの厳しかった1973年の第1次石油危機の際のデータをプロットしています。第1次石油危機の際のインフレや失業率の上昇はたしかに大きいのですが、22のエピソードのメディアンはそれほどでもありません。その理由としては、インフレを引き起こしたショックが労働市場の外からもたらされていること、実質賃金の低下が物価上昇の抑制に役立っていること、中央銀行が積極的に金融引締め政策を取っていること、の3要因が物価-賃金スパイラルを生じさせるリスクを抑制している、と分析しています。

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次に、上のグラフはリポート第3章から Figure 3.3. Macroeconomic Impact of Different Recycling Options in the United States を引用しています。2050年にカーボンニュートラルを達成するためには、この先10年間で温室効果ガスの排出量を少なくとも¼に削減する必要があるのですが、こういった温室効果ガスの大きな排出削減は、短期的には経済的コストを発生させる一方で、気候変動を遅らせるという長期的な利益に比べればわずかなものである、と指摘しています。上のグラフは、実質GDP、インフレ率、雇用、賃金、実質消費、実質投資について、短期的なコストによる下振れと労働税制や生産に対する補助金を組み合わせた効果をプロットしています。温室効果ガスの削減に起因する成長率の低下やインフレ率の上昇といったコストがかなりの程度に緩和されることが示されています。

もう少しすれば、国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し」の見通し編も公表されることと期待しています。機会があれば、改めて取り上げたいと思います。

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