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2022年11月10日 (木)

来週火曜日11月15日に公表予定の7-9月期GDP統計速報1次QEに予想やいかに?

先月末の鉱工業生産指数(IIP)や商業販売統計をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、明週火曜日の11月15日に7~9月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。今年2022年の4~6月期には、まん延防止等重点措置が3月21日に解除された後、特段の行動制限もなく前期比年率で+3.5%の高い成長を記録していますが、7~9月期には引き続きプラス成長が予想されています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。なお、今回から PwC Intelligence と明治安田総研の新たなシンクタンクを2機関加えています。それから、ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の10~12月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。いくつかのシンクタンクが7~9月期以降の見通しに言及しています。その中でも特に、大和総研とみずほリサーチ&テクノロジーズが詳細であり、私の方でも意識的に長々と引用しています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.4%
(+1.6%)
10~12月期もプラス成長が続く見通し。新型コロナ感染者数の減少や全国旅行支援の実施などを背景に、個人消費の増勢が高まる見込み。工場新設や機械投資が堅調に推移することで、設備投資も増勢を維持する見込み。
大和総研+0.6%
(+2.4%)
2022年10-12月期の日本経済は、感染状況が落ち着く中で経済活動の正常化が一段と進み、個人消費や輸出などを中心に回復基調が強まる見込みだ。設備投資や公共投資も増加することで、実質GDPは5四半期連続のプラス成長(前期比年率+2.9%)になると見込んでいる。
個人消費は夏場に比べて感染状況が落ち着く中、サービス消費を中心に回復ペースが加速しよう。10月11日に開始された全国旅行支援がサービス消費の回復を後押しするとみられる。他方、食品などの値上げが相次ぐ中で家計の消費マインドが一段と悪化すれば、物価高が個人消費を下押しする可能性がある。
なお、自動車生産は10-12月期に増加するものの、そのペースは緩やかなものに留まろう。トヨタ自動車は半導体不足の影響により、10、11月のグローバルの生産計画を8月に公表した計画からそれぞれ引き下げた。ホンダも10月に国内工場において生産調整を行った。繰越需要に対応した大幅な挽回生産は2023年に発現し、個人消費や設備投資、輸出を後押しするだろう。
住宅投資は緩やかな増加傾向が続こう。引き続き、住宅価格の上昇は住宅投資の重しとなるものの、住宅ローン減税の制度変更に伴う反動減が一巡することで持ち直すとみられる。
設備投資は増加傾向が続くだろう。機械設備への投資は緩やかに増加するとみている。機械設備投資に先行する機械受注は均して見ると増加傾向にある。ただし、米欧中央銀行の利上げ、中国での「ゼロコロナ」政策や不動産投資の低迷などによる世界経済の減速懸念が強まっており、企業の投資意欲に影響を及ぼす可能性がある。他方、グリーン化、デジタル化に関連したソフトウェア投資や研究・開発投資は底堅く推移するとみられ、設備投資全体を下支えしよう。
公共投資は緩やかな回復が続くだろう。前述した「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の執行が下支えするものの、人手不足や資材価格の高騰が影響することで、回復ペースは緩やかなものとなろう。政府消費は、医療費の増加やオミクロン株対応ワクチン接種の進展により緩やかな回復傾向が続こう。
輸出は非常に緩やかな増加基調を辿るとみている。中国では「ゼロコロナ」政策の堅持が景気回復を阻害することで対中輸出の回復ペースを鈍化させるほか、不動産不況が重しとなって鉄鋼や建機などの輸出が伸び悩むだろう。他方、米欧では景気後退が現実味を帯びてきている。とりわけ欧州経済については物価高、金融引締め、エネルギー不足と懸念材料が多く、対欧輸出は伸び悩むだろう。他方、10月11日に水際対策が大幅に緩和されたことを受け、サービス輸出に含まれるインバウンド(訪日外客)消費は回復ペースが加速するとみられる。
みずほリサーチ&テクノロジーズ+0.2%
(+0.9%)
10~12月期以降については、後述の物価高が財を中心に個人消費の下押し要因になる一方、政府による「全国旅行支援」が実施されることで対人サービスを中心に個人消費の押し上げが見込まれる。みずほリサーチ&テクノロジーズは、全国旅行支援について1~3月期までの延長を想定した上で、経済効果は波及効果を含めて約1.1兆円(2022年度GDPを+0.2%押し上げ)と試算している。水際対策の緩和を受けてインバウンドの受入が徐々に拡大することも経済活動の押し上げに寄与するだろう。
コロナ禍の影響が長引く中、日本はこれまで欧米対比で経済活動の回復が遅れてきたが、その分回復余地が残されている状況だ。個人消費の15%程度を占める対人サービス消費が2022年度末までに(リベンジ消費とまではいかなくても)コロナ禍前に近い水準まで回復していくことで、GDPを2%以上押し上げることが期待される。インバウンドの本格回復は中国のゼロコロナ政策解除後の2023年後半以降を見込むが、水際対策緩和・円安を受けてインバウンドの受入拡大が進むことで2023年度にかけてGDPを+0.9%押し上げると試算している。
一方で、急速な利上げやロシアからの天然ガス供給縮小等に伴い、欧米は景気後退入りが見込まれる。米国・ユーロ圏とも年末以降マイナス成長に陥るとみられ、輸送用機械、電気・電子、設備機器などの輸出が下振れるほか、設備投資も下押しされる公算が大きい。欧米の景気後退を中心とした海外経済の減速が先行きの日本経済の最大の逆風になるだろう(みずほリサーチ&テクノロジーズは、2022年の世界経済成長率は+2.3%、2023年は+1.6%と一段の低成長に陥ると予測している)。
前述したとおりサービス分野の回復が下支えすることで、2022年度から2023年度にかけて日本経済はプラス成長を維持し、主要先進国が軒並みマイナス成長の中で相対的には堅調に推移するとみているが、回復ペースは緩やかにならざるを得ないだろう。現時点で、10~12月期、2023年1~3月期はいずれも年率0%台半ば程度の低成長が継続するとみている。2022年度の経済成長率は+1.5%(2023年度は+0.9%)と予測している。
ニッセイ基礎研+0.4%
(+1.5%)
2022年10-12月期は、欧米を中心とした海外経済の減速を主因として輸出は低迷することが見込まれるが、高水準の企業収益を背景に設備投資が堅調を維持すること、民間消費が物価高の影響を受けながらも、感染状況の落ち着きや全国旅行支援策によってサービスを中心に伸びを高めることから、内需中心のプラス成長が続くと予想する。
第一生命経済研+0.2%
(+0.7%)
10-12月期については成長率が高まるとみている。水際対策の緩和による外国人観光客の増加、全国旅行支援によるサービス消費の押し上げ等、政策効果による押し上げが見込まれる。諸外国に比べてコロナ禍からの回復が遅れていた分、回復余地が残されていることもあり、欧米と比較すれば底堅く推移する可能性が高い。
一方、今後の下押し要因となるのが海外経済の悪化だ。歴史的な高インフレにより購買力が毀損されることに加え、極めて速いペースで実施されてきた利上げの悪影響が本格化することで、欧米経済への下押し圧力は今後強まるとみられる。日本からの輸出も下振れる可能性が高い。内需が下支えになることで景気後退局面入りは避けられるとみるが、外需の下押しを通じて23年の景気は減速感が強まると予想する。
PwC Intelligence+0.6%
(+2.7%)
実質GDPの成長率を、前期比+0.6%(年率+2.7%)と見込んでいる。設備投資と輸出が成長を押し上げられたとみられる一方、インフレによる実質所得の低下が、COVID-19の落ち着きを受けた消費回復の動きを押し下げたとみている。
その後、2022~2023年度の経済成長率はそれぞれ+1.8%、+0.6%となろう。2023年度の成長率は、市場平均等よりも低いとみられるが、これは①インフレ鎮静化のための利上げの継続・加速による海外経済のマイナス成長、②国内の経済対策の効果が、経済下支えにとどまり、経済の押し上げには不十分であるとみているため。なお、2022~2023年度の物価は、それぞれ+2.5%、+1.4%を見込む。
伊藤忠総研+0.4%
(+1.4%)
10~12月期は設備投資の拡大が続く中、コロナ感染収束を受けて個人消費は持ち直し、インバウンド需要が輸出を下支えするとみられ、成長ペースはやや加速すると予想。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.2%
(+0.7%)
2022年7~9月期の実質GDP成長率は、前期比+0.2%(年率換算+0.7%)とプラス成長は続くものの、伸び率は4~6月期の同+0.9%から大きく鈍化する見込みである。久し振りに行動制限のない夏休みを迎えたものの、感染第7波の拡大の影響があったうえ、物価上昇によるマイナス効果もあったと考えられ、個人消費の伸びが鈍ったこと、輸入の増加を主因として外需寄与度がマイナスに転じたことから、全体の伸びは小幅にとどまった。
三菱総研+0.4%
(+1.8%)
2022年7-9月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.4%(年率+1.8%)と4四半期連続のプラス成長を予測する。
農林中金総研+0.4%
(+1.8%)
7~9月期のGDP成長率見通しについては、実質成長率は前期比0.4%(同年率換算1.8%)と、4期連続のプラスと予想する。前年比も2.3%と6期連続のプラスで、成長率は3期連続で高まる見込み。また、名目成長率は前期比0.6%(同年率2.4%)と4期連続のプラスが見込まれる。
明治安田総研+0.2%
(+1.0%)
2022年7-9月期実質GDP成長率は、前期比+0.2%(年率換算: +1.0%)と、4四半期連続のプラスになったと予想する。

ということで、すべてのシンクタンクが7~9月期の成長率はプラスと予想しています。欧米先進各国は2ケタもしくは2ケタ近いインフレの抑制のために金融引締めを継続しおり、かなりの確率で米国や英国は景気後退に陥ると私は考えています。もちろん、市場における価格を資源配分のシグナルとしているわけですので、現在の資本主義経済においてはインフレが高進した場合、景気を犠牲にしてでもインフレを抑制するというのが、いわば、セオリーとなっています。ですから、7~9月期には我が国でも輸出については伸び悩んでいるものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大抑制のための行動制限はありませんでしたし、「リベンジ消費」とまではいいませんが、それなりに消費が伸びた実感はあります。加えて、足元の10~12月期もプラス成長を展望するシンクタンクが多いと感じています。
ただし、先行き景気について注意すべき点は2点あり、まず第1に、4四半期連続のプラス成長とはいえ、成長率はまだまだ高くありません。ですから、アベノミクスの大きな失政というべき2019年10月からの消費税率引上げ直前のピークであった2019年4~6月期のGDPの水準に比べてまだ▲2%ほど低くなっています。単純に+0.5%成長を続けても、その水準に回帰するのはもう4四半期=1年かかるわけで、欧米先進各国のインフレから景気後退の可能性、ロシアのウクライナ侵攻、COVID-19の感染拡大などなどを考え合わせると、下方リスクな決して無視できませんし、たとえ、下方リスクなしでも長い道のりだという気がします。第2に、国政選挙がほぼほぼない、いわゆる「黄金の3年」において、岸田内閣が大きく緊縮路線に舵を切ろうとしているように私には見えてなりません。軍事費をGDP比2%に上げるだけでも、私はどうかと考えていますが、その財源をひょっとしたら増税で調達するなんて説も飛び出していますし、日銀の黒田総裁総裁の任期が切れる来年には引締めに転じるような人事が検討されるかもしれません。私はアベノミクスをそれなりに評価しているのですが、岸田内閣は「逆コース」を志向する可能性なしとはしません。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研究所のリポートから引用しています。

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