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2023年1月26日 (木)

2022年12月統計に見る企業向けサービス価格指数(SPPI)は早くも上昇幅が縮小し始めたか?

本日、日銀から昨年2022年12月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.5%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIも+1.2%の上昇を示しています。サービス物価指数ですので、国際商品市況における石油をはじめとする資源はモノであって含まれていませんが、こういった資源価格の上昇がジワジワと波及している印象です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、12月1.5%上昇
日銀が26日発表した2022年12月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は107.7と、前年同月比1.5%上昇した。22カ月連続のプラスとなり、2001年3月以来の高水準だった。22年の年間ベースの指数は106.9と2000年(109.2)以来の高水準となった。
値上げの動きがみられたタクシーや、年末に出稿需要が旺盛だったインターネット広告が指数を押し上げた。廃棄物処理では物流費上昇などの価格転嫁が進んだ。
一方、宿泊サービスでは観光振興策「全国旅行支援」が指数上昇を抑えた。日銀は全国旅行支援の影響がなければ、12月の前年比上昇幅は1.8%だったと推計する。
22年の年間ベースの前年比上昇幅は1.7%と、消費増税が影響した14年(2.6%)以来の高水準になった。日銀は「消費税(の影響)を除いたベースで仮にみると、1992年(1.9%)以来の伸びになると思う」とする。ロシアのウクライナ侵攻、新型コロナウイルスからの経済再開、コスト転嫁の動きなどが影響した。
調査対象となる146品目のうち、価格が前年同月比で上昇したのは93品目、下落したのは21品目だった。

コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業物価指数(PPI)とともに、企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、日銀公表資料にはありませんが、景気後退期を示しています。

photo

上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率の2022年中の推移は、2022年6月に上昇率のピークである+2.1%をつけ、その後も、7月と9月は+2.0%を記録しましたが、10月+1.8%、11月+1.7%、そして、本日公表された12月統計では+1.5%と、ジワジワと上昇幅を縮小させ始めているように見えます。もちろん、前年同期比プラスは2年近い22か月の連続となっていますし、石油価格の影響の大きい国際運輸を除くコアSPPI上昇率は昨年2022年9~11月に3か月連続で+1.5%まで拡大した後、12月にようやく+1.3%に上昇幅を縮小させたに過ぎません。すなわち、上昇幅が縮小し始めたと判断するのは早計かもしれませんが、他方で、少なくとも上昇率がグングン加速するという段階は脱したといえそうです。しかも、上昇率は日銀の物価目標に届かない+1%台半ばですから、私の見方からすれば高止まりしているとすら表現しかねます。もう何度も指摘されている点ですが、基本的には、石油をはじめとする資源価格の上昇がサービス価格にも波及したコストプッシュが主な要因と考えるべきです。もちろん、ウクライナ危機に起因する資源高の影響に加えて、新興国や途上国での景気回復に伴う資源需要の拡大というディマンドプルの要因も無視できません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づく直近2022年12月統計のヘッドライン上昇率+1.5%への寄与度で見ると、機械修理や労働者派遣サービスなどの諸サービスが+0.43%、石油価格の影響が強い外航貨物輸送、国際航空貨物輸送、内航貨物輸送などの運輸・郵便が+0.41%、リース・レンタルが+0.39%、などとなっています。また、寄与度ではなく大類別の系列の前年同月比上昇率で見ても、特に、運輸・郵便が+2.5%の上昇となったのは、エネルギー価格の上昇が主因であると考えるべきです。ただし、この上昇率も11月の+3.1%からはいくぶん縮小しています。もちろん、資源価格のコストプッシュ以外にも、リース・レンタルの+5.2%、広告の+1.7%の上昇などは、それなりに景気に敏感な項目であり、需要の盛り上がりによるディマンドプルの要素も大いに含まれている、と私は受け止めています。ですので、エネルギーなどの資源価格のコストプッシュだけでなく、国内需要面からもサービス価格は上昇基調にあると考えていいように私は受け止めています。また、引用した記事の3パラめで言及されている全国旅行支援の影響を見ると、2022年11月統計では諸サービスの中の宿泊サービスが前年同月比で+8.8%の上昇を記録していますが、12月には一気に+0.9%となっています。引用した記事でもインプリシットに寄与度が▲1%程度あるとの推計結果が指摘されています。

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