« 節分にまくのは大豆ではない??? | トップページ | 今週の読書はまたまた経済書なしで計5冊 »

2023年2月 3日 (金)

1月の米国雇用統計はちょっとびっくりの+517千人増を記録

日本時間の今夜、米国労働省から1月の米国雇用統計が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、非農業部門雇用者数の前月差は直近の1月統計でも+517千人増となり、失業率は前月からさらに低下して3.4%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に5パラ引用すると以下の通りです。

U.S. jobs report today: Economy added 517,000 jobs despite recession risk; unemployment fell to 3.4%
Employers added a booming 517,000 jobs in January as hiring unexpectedly surged despite high inflation, rising interest rates and the prospect of a weakening economy.
The unemployment rate fell from 3.5% to 3.4%, lowest since 1969, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had forecast 185,000 job gain.
The blockbuster jobs total will likely not be welcomed by a Federal Reserve looking for job gains and wage growth to slow to further reduce high inflation and bolster its plan to pause its aggressive interest rate hike campaign in coming months.
As a result, futures traded for the Dow Jones Industrial Average dropped by nearly 80 points after the report was released.

よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが広がった2020年4月からの雇用統計は、やたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

photo

ということで、米国の雇用は非農業部門雇用者の増加が、ちょっとびっくりの+517千人蔵を記録しました。加えて、失業率もさらに低下して3%台半ばのここ50年来の水準を続けているわけですので、労働市場の過熱感は継続していると考えるべきです。もちろん、インフレ高進に対応して連邦準備制度理事会(FED)が強力な金融引締めを実施していますが、それでも、直近の連邦公開市場委員会(FOMC)では、従来の利上げ幅から大きく縮小させて25ベーシスポイントにとどめました。私自身は米国経済はインフレ抑制のコストとして景気後退に陥るであろうと考えていましたが、1月の雇用統計を見る限り、雇用はまだまだ強いとしか言いようがありません。例えば、引用した記事の3パラ目にあるように、Bloomberg による市場の事前コンセンサスでは+200千人を下回る+185千人程度の雇用増との見通しだったので、実績は上振れた印象です。加えて、失業率も前月からさらに低下しています。明らかに、米国連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーが長期的な均衡水準と考える+4%を下回った状態が続いています。私が知る限り、昨年2022年も、一昨年2021年も、なぜか、1月の雇用者数増加幅は大きく跳ねる傾向があるのですが、毎年1月には季節調整をかけ直すので、何らかの統計のクセが出ている可能性は否定できませんが、それにしても、+500千人超の雇用増はちょっとしたサプライズです。ですので、USA Todayの記事の5パラめにあるように、FEDのさらなる強力な金融引締めを予想して株式市場は下落するという反応を見せました。他方で、米国のメタなどの大手IT企業が相次いで大幅な人員整理を打ち出していると報じられており、こういった動きが統計に反映されるのには少し時間がかかるのかもしれません。他方で、量的には失業率も雇用者数も加熱気味なのですが、同じ米国労働省の統計で見る限り、賃金上昇もインフレもピークを越えたように見受けられるのも事実です。下のグラフは、時間あたり賃金の伸びと消費者物価の前年同月比上昇率をプロットしています。少なくとも、パッと見ではすでにピークを超えた印象があります。

photo

|

« 節分にまくのは大豆ではない??? | トップページ | 今週の読書はまたまた経済書なしで計5冊 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 節分にまくのは大豆ではない??? | トップページ | 今週の読書はまたまた経済書なしで計5冊 »