東京商工リサーチによる価格転嫁と賃上げの相関分析の結果やいかに?
日曜日なのですが、さる2月12日付けで東京商工リサーチから価格転嫁と賃上げの相関分析の結果が明らかにされています。下のグラフに見られるように、資本金1億円で区分した中小企業では、相関係数0.87と強い正の相関を示した一方で、大企業では▲0.49と負の相関を示した、との結果が示されています。
もちろん、賃上げを決定する要因は価格転嫁だけではありませんから、ここまで単純化した短回帰分析にどれだけの意味があるかは疑問なしとしませんが、資本金1億円で区分した中小企業と大企業とで規模別に対象的な結果が出たことは、エコノミストとしては興味あるところです。
渡辺努『世界インフレの謎』(講談社現代新書)でも指摘されていたように、賃上げと物価のスパイラルは、企業が製品価格引上げ⇒生計費上昇分の賃上げ要求⇒賃金引上げ⇒コストアップ分の価格転嫁⇒製品価格引上げ、のサイクルで進みます。鶏と卵の関係ですが、製品価格引上げ=物価上昇と賃上げとは両建てで進みますが、中小企業ではこれが成立する一方で、大企業ではそうでないわけです。まあ、、単純に考えれば、中小企業の製品、というか、サービスも含めて、コストに占める人件費の比率が高い一方で、大企業の製品・サービスでは人件費比率が低い、ということなのでしょう。大企業の製品・サービスには人件費以外の付加価値が多く含まれている、ということです。
経済学的な含意としては、下請けの比率が高いであろう中小企業からの部品供給に対して、大企業が価格転嫁に対して不寛容であるからデフレ脱却が進みにくい、といういかにも日本的な企業慣行がバックグラウンドになっている気がします。
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