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2023年2月13日 (月)

昨年2022年10~12月期GDP統計速報1次QE予想はわずかながらプラス成長か?

先週の鉱工業生産指数や商業販売統計や雇用統計をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、明日の2月14日に昨年2022年10~12月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。2022年7~9月期は一時的なサービス輸入の増加のために小幅ながらマイナス成長を記録しましたが、10~12月期はプラス成長を予測するシンクタンクが多くなっている印象です。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である2022年10~12月期ではなく、足元の2023年1~3月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。三菱系の2機関を除いて、多くのシンクタンクで言及があり、特に、大和総研とみずほリサーチ&テクノロジーズについては長々と引用しています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.7%
(+2.7%)
1~3月期もプラス成長が続く見通し。新型コロナ感染者数の減少を背景に、人流の回復や全国旅行支援の継続に支えられ、サービスを中心に個人消費が増加する見込み。また、インバウンド需要の回復が続くことで、サービス輸出も底堅く推移する見込み。
大和総研+0.4%
(+1.8%)
2023年1-3月期の日本経済は、感染状況が落ち着く中で経済活動の正常化が一段と進み、個人消費や輸出などを中心に回復基調が強まる見込みだ。設備投資や公共投資も増加することで、実質GDPは2四半期連続のプラス成長(前期比年率+4.4%)になると見込んでいる。
個人消費は緩やかな回復基調を辿ろう。感染「第8波」は落ち着きつつあり、サービス消費の回復は加速するだろう。他方、1月以降も食品などの値上げが予定されており、家計の消費マインドが一段と悪化すれば、個人消費の回復が遅れる可能性もある。
なお、自動車生産は1-3月期に一段と増加しよう。トヨタ自動車が2月に見込む国内生産台数は約30万台と、1月(約20万台)から増加した。繰越需要に対応した大幅な挽回生産の発現が期待され、個人消費や設備投資、輸出を後押しするだろう。
住宅投資は緩やかな増加傾向に転じるだろう。引き続き、住宅価格の上昇は住宅投資の重しとなるものの、住宅ローン減税の制度変更に伴う反動減が一巡することで持ち直すとみられる。
設備投資は緩やかながらも増加傾向が続くだろう。機械設備投資に先行する機械受注は均して見ると減少傾向にある。ただし、国内ではサービス消費の回復余地が大きく、今後はとりわけ非製造業で設備投資の回復が見込まれる。他方、グリーン化、デジタル化に関連したソフトウェア投資や研究・開発投資は底堅く推移するとみられ、設備投資全体を下支えしよう。
公共投資は緩やかな回復傾向に転じるだろう。前述した「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の執行が下支えするものの、人手不足や資材価格の高騰が影響することで、回復ペースは緩やかなものとなろう。政府消費は、医療費の増加が下支えするものの、オミクロン株対応ワクチン接種が一服することでしばらくは足踏みするとみられる。
輸出は、中国経済の正常化に沿って増加基調に転じるだろう。サービス輸出に含まれるインバウンド(訪日外客)消費は、堅調に回復するとみられる。また、中国政府は12月に実質的な「ウィズコロナ」政策に転換した。感染状況次第ではあるものの、今後は幅広い財の輸出の増加が見込まれる。他方、米欧における利上げの影響には引き続き注意が必要だ。
みずほリサーチ&テクノロジーズ+0.5%
(+2.0%)
1~3月期以降についても、対人サービスを中心に個人消費の回復継続が見込まれる。物価高が引き続き下押し要因になることで、大幅なリベンジ消費までは期待出来ないものの、政府による全国旅行支援が1月以降も延長されたことがサービス消費の押し上げ要因になろう。みずほリサーチ&テクノロジーズは、全国旅行支援について1~3月期までの延長を想定した上で、経済効果は波及効果を含めて約1兆円(2022年度GDPを+0.2%押し上げ)と試算している。全国旅行支援終了後は一時的に反動減が出ることが想定されるが、感染懸念の後退に伴い、均してみれば回復基調を維持するだろう。
インバウンドの回復が続くことも経済活動の押し上げに寄与するだろう。中国からの訪日客については、当面は日中間の国際便回復が停滞する中で大幅な回復は期待しにくいものの(2022年11月~2023年3月の冬ダイヤ時点で、日中間の国際便数はコロナ前の4%程度にとどまる)、中国で感染影響の収束が見込まれる春以降には、日本側の水際対策(出入国時の検査、日中間の国際便の増便抑制)も緩和されることで回復の本格化が見込まれる。特に関西・中部地方はインバウンド消費に占める中国人観光客への依存度が高く、回復に期待が高まる状況だ。
懸念されるのがサービス業における人手不足であり、宿泊業等の稼働率の抑制要因になるだろう。「売り」となるサービスの明確化等による客単価の引き上げが収益確保の鍵になる。高付加価値型施設(リゾートホテルや高級レストラン等)は国内外の高所得者を中心とした一部のリベンジ消費を取り込むことで客単価を引き上げ、収益を確保できる余地があるとみられる一方、競争力に乏しく客単価を引き上げにくい業態・企業は苦境に立たされる公算が大きい点には留意が必要だ。
一方で、これまでの根強いインフレ圧力を受けた急速な利上げの影響などにより、欧米経済は今後、一段の景気減速が見込まれる(特に米国は足元で財消費や企業の生産活動に弱含みの動きがみられるなど、景気下振れの兆候が出ている)。日本からの輸送用機械、電気・電子、設備機器などの輸出が下振れるほか、製造業の設備投資も下押しされる公算が大きい。足元のグローバル製造業PMIは既に50を割り込んでおり、欧米を中心とした海外経済のさらなる冷え込みが先行きの日本経済の最大の逆風になるだろう(現時点で今後の実質GDP調整幅については、米国が▲1.8%、欧州が▲1.6%と過去の景気後退期の平均並を想定している。なお、中国については一部地域の感染がピークアウトした1月以降に経済活動の底打ちの動きがみられるが、当面はサービス消費が回復の中心になるとみられ、財需要への波及効果は限定的だろう。中国経済が2023年に盛り返したとしても、欧米を中心とした世界経済の低迷をカバーすることは出来ないとみている)。需給軟化に伴う単価下落・調達抑制による出荷数量減少を受けてメモリを中心に世界的な半導体市況の悪化が続くことも、半導体製造装置や電子部品等の生産活動を下押ししよう。
コロナ禍の影響が長引く中、日本はこれまで欧米対比で経済活動の回復が遅れてきたが、その分回復余地が残されている状況だ。前述したとおりサービス分野の回復が下支えすることで、日本経済は景気後退入りを免れるとみているが、それでも海外経済の減速が逆風となることで回復ペースは緩やかにならざるを得ないだろう。現時点で、1~3月期は前期比年率+1%程度の成長に鈍化すると予測している。
ニッセイ基礎研+0.3%
(+1.0%)
2023年1-3月期は、民間消費、設備投資などの国内需要は底堅い動きが続く一方、欧米を中心とした海外経済の減速を主因として輸出が減少に転じることから、現時点では年率ゼロ%台の低成長を予想している。
第一生命経済研
その 2
+0.2%
(+0.7%)
海外経済の悪化に伴う輸出の下振れが23年の景気を下押しする。金融引き締めの実体経済への悪影響が本格化することで、23年の米国経済の下振れ懸念は大きい。中国経済の持ち直しが見込まれることは好材料だが、世界経済は全体として下押し圧力が強まる可能性が高いだろう。コロナ禍からの正常化に向けた回復の動きが続くことから、国内における景気回復の動きが頓挫するとまではみていないが、23年前半の景気は輸出の下振れを主因として減速感が強まると予想している。
PwC Intelligence+0.7%
(+2.7%)
2022年10-12月期は、輸出・消費によりプラス成長となるものの、設備投資は減少に転じる見込みである。2023年以降は、海外経済の減速を受けて設備投資の減少が進展するか、その下方圧力を国内消費およびインバウンド需要の回復がどこまで打ち返せるか、というのが日本経済を見通す上での注目点となろう。また、賃上げがベースアップのみで3%にまで上昇する環境を維持できるかも重要となろう。
伊藤忠総研+0.6%
(+2.3%)
続く2023年1~3月期も、インバウンド需要の増加は期待できそうであるが、物価上昇の加速により個人消費は伸び悩むとみられるため、一定の前期比プラス成長を維持できるかどうかは、財輸出がどの程度落ち込むのか、設備投資の様子見姿勢がいつまで続くのかが重要であり、加えて政府の「総合経済対策」で追加された公共投資がどの程度進捗するかもカギを握るとみられる。なお、当社は現時点では、若干減速するもののプラス成長を維持すると予想している。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.7%
(+3.0%)
2022年10~12月期の実質GDP成長率は、前期比+0.7%(年率換算+3.0%)と2四半期ぶりのプラス成長が見込まれる。感染第7波の影響が一巡したうえ、全国旅行支援など政策支援も追い風に個人消費の増加が続いたほか、欧米向け輸出の増加や水際対策緩和によるインバウンドの回復などを背景とした輸出の増加がプラス成長の要因となったとみられる。
三菱総研+0.5%
(+1.8%)
2022年10-12月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.5%(年率+1.8%)と予測します。
明治安田総研+0.6%
(+2.2%)
2023年前半は、物価高が引き続き個人消費の足を引っ張ると予想される。1月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)は前年比+4.3%と、41年8ヵ月ぶりの高い伸びとなった。食品メーカーは年明け以降も値上げを実施しているほか、「燃料費調整制度」に基づく電気料金が早ければ4月にも引き上げられることから、消費者物価は当面の間、高い伸びとなる可能性が高い。
海外景気の低迷も輸出の下押し要因となる。米国では、これまでの累積的な利上げの効果が発現することもあって、早ければ春先にも景気後退局面に陥る可能性がある。中国景気は、感染者数がこのままピークアウトに向かえば持ち直す展開が期待できるが、不動産市場の低迷が続くことで、回復の勢いは鈍くなると見込まれる。インバウンド需要の回復などが下支え要因となるものの、海外景気の不振が続くようなら、日本景気が回復基調を続けるのは難しい。
東京財団政策研+0.47%
(+1.89%)
2023年1-3月期のGDPについて、モデルは、海外経済の減速等を背景に弱さが見られる今年1月の製造工業生産予測指数(補正値)や景気ウォッチャー調査を反映することにより、引き続き、マイナス成長を予測。ソフトデータに基づく情報ではあるが、足もとで見られる経済の変化が年初のGDPを下振れさせる可能性を示唆している。

ということで、すべてのシンクタンクが昨年2022年10~12月期の成長率はプラスと予想しています。欧米先進各国は2ケタもしくは2ケタ近いインフレの抑制のために金融引締めを継続しおり、かなりの確率で米国や英国は景気後退に陥ると私は考えています。もちろん、市場における価格を資源配分のシグナルとしているわけですので、現在の資本主義経済においてはインフレが高進した場合、景気を犠牲にしてでもインフレを抑制するというのが、いわば、セオリーとなっています。他方で、全国旅行支援やインバウンド、あるいは、3月からマスクの着用が個人判断となり、5月と少し咲きながら新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が季節性インフルエンザと同じ5類にカテゴリー変更されることなどから、「リベンジ消費」とまではいいませんが、消費が一定の回復を見せるかどうか、こういったプラス要因が海外経済のマイナス要因とどちらが大きいか、ということなのだろうと私は考えています。
ただし、先行き景気について注意すべき政策上の要因、国民のマインドにも影響を及ぼしかねない2点を指摘しておきたいと思います。第1に、国政選挙がほぼほぼない、いわゆる「黄金の3年」において、岸田内閣が財政政策を大きく緊縮路線に舵を切ろうとしているように私には見えてなりません。軍事費をGDP比2%に上げるだけでも、私はどうかと考えています。私はアベノミクスをそれなりに評価しているのですが、新規性を打ち出そうとココロがはやる岸田内閣は「逆コース」を志向する可能性なしとはしません。第2に、日銀総裁・副総裁人事と関連して金融政策の方向性です。明日の国会提示と報じられています。新総裁候補とされる植田教授は「金融緩和の継続が必要」と発言したと報じられていますが、それは植田教授の考える「金融緩和」であって、現在のアベノミクスの第1の矢となった金融政策の継続を意味しません。例えば、昨年、日銀がイールド・カーブ・コントロール(YCC)で長期金利の上限を25ベーシスから50ベーシスへと、バンドの拡大という形で修正した際、金融緩和の姿勢に変わりなくバンドの拡大だけ、と指摘するエコノミストもいましたが、市場はハッキリと金融引締めの第1歩と受け止めました。こういった黒田総裁による異次元緩和の事実上の修正が「金融緩和の継続」の名の下に実行される可能性があります。そして、市場はそれを「異次元緩和の終了」とみなす可能性は否定できません。ひいては、国民のマインドも下振れする可能性を指摘しておきたいと思います。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研究所のリポートから引用しています。

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