木曜日に公表される昨年2022年10-12月期GDP統計速報2次QEの予想やいかに?
先週の法人企業統計をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、今週木曜日の3月9日に昨年2022年10~12月期GDP統計速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。1次QEは小幅なプラス成長でしたが、大きな改定幅ではないものの、上方改定を予測するシンクタンクが多くなっている印象です。でも、下方改定を予想するシンクタンクもあったりします。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である2022年10~12月期ではなく、足元の今年2023年1~3月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。ただ、2次QEですので法人企業統計の「オマケ」的な扱いのシンクタンクがほとんどです。例外は、みずほリサーチ&テクノロジーズと東京財団政策研究所であり、みずほリサーチ&テクノロジーズについては下のテーブルに引用しただけではなく、実は、もっと長々と足元から先行きの見通しについて言及されています。また、東京財団政策研究所のナウキャスティングについては、もはや、昨年2022年10~12月期からすでに今年2023年1~3月期に視点が移っていたりします。ですので、正確にいえば2次QE予想ではないのですが、一応、テーブルに収録しています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
内閣府1次QE | +0.2% (+0.6%) | n.a. |
日本総研 | +0.2% (+0.9%) | 実質GDP成長率は前期比年率+0.9%(前期比+0.2%)と、1次QE(前期比年率+0.6%、前期比+0.2%)から小幅に上方改定される見込み。 |
大和総研 | ▲0.0% (▲0.0%) | 2次速報では、民間在庫の減少がGDPを下押ししたものの個人消費や輸出は底堅く推移し、実態としては、GDP成長率が示すよりも景気の回復基調は強かったことが改めて示されるだろう。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | +0.4% (+1.5%) | 先行きもサービス消費やインバウンド需要の回復が継続する一方、欧米を中心とした海外経済の減速が逆風になり、回復ペースは緩やかに。1~3月期は年率+1%弱の成長にとどまると予測。 |
ニッセイ基礎研 | +0.3% (+1.0%) | 3/9公表予定の22年10-12月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.3%(前期比年率1.0%)となり、1次速報の前期比0.2%(前期比年率0.6%)から上方修正されるだろう。 |
第一生命経済研 | +0.1% (+0.4%) | 22年10-12月期はプラス成長とはいえ伸びは僅かなものにとどまり、7-9月期の落ち込み分を取り戻せない。景気の持ち直しのペースが鈍いものにとどまっていることが改めて確認される見込みだ。 |
伊藤忠総研 | +0.2% (+0.8%) | 10~12月期の実質GDP成長率(2次速報)は前期比+0.2%(年率+0.8%)と1次速報から小幅上方修正される見通し。個人消費が持ち直しインバウンド需要も回復しているが、財の輸出減と設備投資の停滞で成長ペースが期待されたほど高まっていない姿は変わらず。 |
三菱総研 | +0.1% (+0.2%) | 2022年10-12月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.1%(年率+0.2%)と、1次速報値(同+0.2%(年率+0.6%))から下方修正を予測する。 |
明治安田総研 | +0.3% (+1.0%) | 先行きはエネルギー関連や食品など、生活必需品の価格高騰が個人消費の下押し圧力となる状況が続くとみられる。1月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数、コアCPI)は前年比+4.2%と、前月から+0.2%ポイント上昇幅が拡大し、約41年ぶりの高い伸びとなった。今後は高めの賃上げや、政府の物価高騰対策が個人消費の下支え役になるものの、食品メーカーによる値上げトレンドが予想以上に長期化するリスクがあり、2023年度前半にかけての個人消費はいったん厳しさを増す展開を予想する。 海外経済の動向を見ると、中国は、すでに都市部を中心に感染者数がピークアウトしたとみられるものの、不動産市場の低迷が続くことで、景気回復ペースは緩慢なものにとどまる可能性が高い。米国では、インフレの高止まりに、累積的な利上げの影響の波及が加わることで、今後大方の予想以上に景気が悪化するリスクがある。日本経済の方向性は米国経済の動向に大きく左右される。米国経済が減速度合いを強めるようであれば、日本も年度前半に景気の山を付ける可能性が否定できない。 |
東京財団政策研 | n.a. (n.a.) | モデルは、2023年1-3月期のGDP(実質、季節調整系列前期比)を、0.18%と予測。※年率換算: 0.72% |
上のテーブルの通り、ということで、繰り返しになりますが、私の印象としては法人企業統計からして小幅な上方改定、ということなのですが、下方改定を予測するシンクタンクもあります。ただ、下方改定されるとしても、設備投資と在庫の下方改定が主因と私は見ており、設備投資はともかく在庫調整が進むのであれば、経済の姿としてはそれほど悲観する必要はありません。その意味で、上のテーブルに引用した第一生命経済研究所の見方は、ちょっと見当違いかもしれません。
ということで、成長率については、上方改定にせよ、下方改定にせよ、小幅にとどまるということですので、2次QEから目を転じて、上に引用した各シンクタンクのリポートから、2点だけ興味深いトピックを指摘しておきたいと思います。第1に、みずほリサーチ&テクノロジーズのリポートから、日銀の総裁・副総裁の交代に関連して、金融緩和の方向性は不変としても、今年2023年4~6月期に長期金利目標が撤廃され、来年2024年10~12月期にマイナス金利が解除されると予想しています。第2に、これは上のテーブルに引用しておきましたが、明治安田総研のリポートでは、2023年度前半に景気転換点を迎える可能性について言及されています。要因としては見ての通りで、国内の食料品などの値上がりに伴う消費停滞に加えて、米国経済の減速次第では、「日本も年度前半に景気の山を付ける可能性が否定できない」と結論しています。果たしてどうなのでしょうか?
下のグラフはのリポートから引用しています。
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