ポストコロナで商業販売統計は増加が続き、消費者態度指数に見るマインドも持ち直し続く
本日は、経済産業省から5月の商業販売統計が公表されています。統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+5.7%増の13兆1040億円でした。前年同月比上昇率は15か月連続のプラスだそうです。また、季節調整済み指数では前月から+1.3%の増加を記録しています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
小売業販売、5月は前年比+5.7% ドラッグストア好調で15カ月連続増
経済産業省が29日公表した5月の商業動態統計速報によると小売販売額は前年比5.7%増の13兆1040億円となり、15カ月連続でプラスを確保した。プラス幅は4月の5.1%から拡大。ドラッグストアや百貨店の販売増が続いている。ロイター集計の民間予測は同5.4%増だった。
業種別の前年比は、自動車小売業が19.1%増、医薬品・化粧品小売業が10.8%増、その他小売業が7.2%増、飲食料品6.6%増など。
自動車は部品不足の響いた前年の反動で伸びた。飲食料品は価格上昇の影響で8カ月連続でプラスとなった。
業態別の前年比ではドラッグストアが9.0%増、コンビニエンスストアが5.5%増、百貨店が5.3%増だった。
ドラッグストアは飲料品や鶏卵、花粉症関連、紙製品などが、価格上昇の影響もあり伸びた。
一方、家電大型専門店は4.7%減だった。エアコンやテレビの販売不振が続いており、ネット配信などの浸透で、テレビは「構造的に縮小傾向にある」という。
いつものように、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは下の通りです。季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率をプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。なお、統計の基準が2020年に変更され、季節調整指数の遡及統計がまだ利用できず、もう少し待つ必要があるようです。
小売業販売額は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が感染法上の5類に分類変更がなされて、国内でも外出する機会が増えるとともに、中国以外の各国からのインバウンドも順調に伸びており、堅調に推移しています。季節調整済み指数の後方3か月移動平均でかなり機械的に判断している経済産業省のリポートでは、5月までのトレンドで、この3か月後方移動平均の前月比が+0.2%の上昇、繰り返しになりますが、広報移動平均を取らない5月統計の前月比が+1.3%となり、「上昇傾向」としています。加えて、消費者物価指数(CPI)との関係では、今年2023年5月統計では前年同月比で+3%超の上昇率となっていますが、小売業販売額の5月統計の5.7%の増加は軽くインフレ率を超えていて、実質でも小売業販売額は前年同月比でプラスになっている可能性があります。通常は、インフレの高進と同時に消費の停滞も生じるのですが、国内需要ではなく海外からのインバウンドにより小売業販売額の伸びが支えられてい可能性があります。ですから、国内消費の実態よりも過大に評価されている可能性が否定できません。他方で、石油価格が完全に反転したことを受けて、燃料小売業販売額が5月統計の前年同月比では▲1.8%の下落を示しています。おそらく、数量ベースではさらに停滞感が強まっている可能性が強いと私は考えています。
最後に、本日、内閣府から6月の消費者態度指数が公表されています。6月統計では、前月から+0.2ポイント上昇し36.2を記録しています。指数を構成する4指標のうち、2指標が上昇しています。すなわち、「収入の増え方」が+1.0ポイント上昇し38.9、「雇用環境」が+0.3ポイント上昇し43.1、他方で、「耐久消費財の買い時判断」は▲0.4ポイント低下し29.9を記録し、「暮らし向き」が前月から横ばいの32.9となっています。「収入の増え方」も「雇用環境」も改善しているにもかかわらず、「暮らし向き」が横ばいなのは明確に物価上昇が原因です。たぶん、「耐久消費財の買い時判断」についても、いく分なりとも物価上昇の影響が見られると私は考えています。統計作成官庁である内閣府では、消費者マインドの基調判断について、先月から「持ち直している」で据え置いています。
| 固定リンク
コメント