雇用の過熱感残る6月の米国雇用統計をどう見るか?
日本時間の今夜、米国労働省から6月の米国雇用統計が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、非農業部門雇用者数の前月差は直近の6月統計でも+209千人増となり、失業率は前月からさらに▲0.1%ポイント低下して3.6%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に5パラだけ引用すると以下の通りです。
June jobs report live updates: 209,000 jobs added as unemployment falls to 3.6%
Hiring slowed but remained sturdy in June as U.S. employers added 209,000 jobs despite inflation, high interest rates and nagging recession fears.
The unemployment rate fell from 3.7% to 3.6%, the Labor Department said Friday. That's the highest since October.
Economists had estimated that 225,000 jobs were added last month.
Payroll gains for April and May were revised down by a total of 110,000, depicting somewhat weaker hiring in spring than believed. The May rise in jobs was downgraded to 306,000 from 339,000The report will likely be well received by a Federal Reserve seeking to cool job and wage growth to tamp down inflation. Still, last month’s employment gains were and pay increases picked up, developments that could prompt the Fed to resume its aggressive interest rate hiking campaign in a few weeks after pausing in June.
よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが広がった2020年4月からの雇用統計は、やたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。
ということで、引用した記事の3パラめにあるように、米国非農業部門雇用者の増加について市場の事前コンセンサスでは+225千人増、あるいは、+200千人増を少し上回るくらいとされていただけに、実績の+209千人増はほぼ「こんなもん」もしくはやや下振れ、と受け止められているようです。下振れ説の背景には、5月の統計が速報値の+339千人増から+309千人増に下方修正されている点も考慮されています。ただし、失業率も少し跳ねた前月から低下して3%台半ばのここ50年来の水準を続けているわけですので、米国労働市場の過熱感は継続していると考えるべきです。もちろん、インフレ高進に対応して連邦準備制度理事会(FED)が強力な金融引締めを実施していますが、先月6月の連邦公開市場委員会(FOMC)では1回だけなのかどうか、利上げを見送っています。金融引締めの効果を見極めたいところなのですが、現状ではさらなる引締めが必要という見方が優勢となりそうな気がしています。ただ、雇用に加熱感が残っているのは、引締めが不足しているのか、それとも、ラグが残っているのか、もう少し見極めたいという気がします。
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