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2023年7月21日 (金)

上昇率がやや加速した6月の消費者物価指数(CPI)をどう見るか?

本日、総務省統計局から6月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+3.3%を記録しています。前年比プラスは22か月連続で、日銀のインフレ目標を大きく上回る高い上昇率での推移が続いています。ヘッドライン上昇率も+3.3%に達している一方で、エネルギー価格の高騰が一巡したことから、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+4.2%に達しています。コアCPIはもちろん、エネルギーと生鮮食品を除くコアコアCPIでも日銀のインフレ目標である+2%を超えています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価指数、6月3.3%上昇 2ヵ月ぶり伸び率拡大
総務省が21日発表した6月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が105.0となり、前年同月比で3.3%上昇した。伸び率は2カ月ぶりに拡大した。電気代の値上げが押し上げ、食品高も続いている。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値の3.3%と同じだった。プラスは22カ月連続。日銀の物価目標である2%を上回る状況が続く。
生鮮食品を含む総合指数は3.3%上昇した。米国の6月の総合指数は3.0%プラスで、上昇率は日米で逆転した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は4.2%上がった。伸び率は5月から0.1ポイント縮小した。指数の伸びが前月を下回ったのは22年1月以来17カ月ぶりとなる。
総務省は政府の電気・ガス料金の抑制策と観光支援策「全国旅行支援」がともになければ、生鮮食品を除く総合が4.4%上昇だったと試算した。単純計算すると、政策効果で伸びは1.1ポイント抑えられた。
品目別で見ると、エネルギーは前年同月比で6.6%低下した。5月から下落幅が1.6ポイント縮んだ。電気代は12.4%の低下で、5月は17.1%マイナスだった。大手電力7社が6月に家庭向けの電気料金を引き上げたことが影響した。政府の電気・ガス料金の抑制策により、水準としてはマイナスで推移する。
生鮮食品を除く食料は9.2%上昇した。伸び率は5月から横ばいで、1975年10月の9.9%以来となる高水準にある。
鳥インフルエンザや飼料高の影響があった鶏卵は35.7%上昇した。原材料や資材の価格上昇で炭酸飲料は17.4%上がった。
日用品でも洗濯用洗剤が18.4%上昇している。新型コロナウイルス禍からの経済活動の正常化で宿泊料は5.5%伸びた。

何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長くなりましたが、いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+3.3%の予想でしたので、実績の3.3%の上昇率はジャストミートでした。まず、エネルギー価格については、2月統計から前年比マイナスに転じていて、今日発表された6月統計では前年同月比で▲6.6%に達し、ヘッドライン上昇率に対する寄与度も▲0.56%の大きさを示しています。ただし、6月統計でインフレ率が5月統計から+0.1%ポイント拡大した背景はエネルギー価格にあります。すなわち、5月統計ではエネルギーの寄与度が▲0.69%あったのですが、6月統計では▲0.56%へと+0.13%ポイントの寄与度差となっています。先月のCPI統計公表時に指摘した通り、6月からは電力各社の値上げが実施されたり、また、政府のガソリン補助金が縮減された影響です。他方で、食料がインフレの主役となった感があり、変動の大きな生鮮食品を除く食料は5月統計でも6月統計でも前年同月比で+9.2%と、2ケタに迫る上昇率を示し、ヘッドライン上昇率に対する寄与度も+2.07%に達しています。さらに細かく食料の内訳を寄与度で見ると、からあげなどの調理食品が+0.36%、外食ハンバーガーなどの外食が+0.28%、アイスクリームなどの菓子類が+0.26%、そしてメディアでの注目度も高い鶏卵などの乳卵類が+0.22%、国産豚肉などの肉類も+0.19%、などなどとなっています。

最後に、従来から主張しているように、現在のインフレ目標+2%を超える物価上昇率はそれほど長続きしません。日本だけでなく、世界的なコンテクストにおいてインフレが長引くことなない、と私は考えています。日本国内のインフレについては、日本経済研究センター(JCER)によるEPSフォーキャストでは今年2023年7~9月期には+2.76%と+3%を下回り、その後、緩やかに上昇率を低下させ、ほぼ1年後の来年2024年4~6月期には+2.10%と日銀の物価目標である+2%近傍まで低下し、その後、+2%を下回る、と予想されています。繰り返しになりますが、6月統計で消費者物価上昇率が5月統計から加速したのは、電力各社の値上げが実施されたり、また、政府のガソリン補助金が縮減された影響です。ですので、足元で上昇率が高まったからといって、インフレが再加速する可能性はほとんどないと考えるべきです。

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