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2023年7月28日 (金)

日銀はとうとう大規模金融緩和を終了し引締めに方向転換

本日、日銀で開催されていた金融政策決定会合が終了し、「展望リポート」が公表されています。政策委員の大勢見通しのテーブルは上の通りです。前回4月の「展望リポート」から生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI上昇率の欄が一番右に見えます。ということで、もっとも注目された物価見通しは、生鮮食品を除くコアCPIで本年度2023年度には+2.5%と物価目標の+2%を超えるという結果が示されています。

     
  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
(参考)
消費者物価指数
(除く生鮮食品・エネルギー)
 2023年度+1.2 ~ +1.5
<+1.3>
+2.4 ~ +2.7
< +2.5>
+3.1 ~ +3.3
< +3.2>
 4月時点の見通し+1.1 ~ +1.5
<+1.4>
+1.7 ~ +2.0
< +1.8>
+2.5 ~ +2.7
< +2.5>
 2024年度+1.0 ~ +1.3
<+1.2>
+1.8 ~ +2.2
<+1.9>
+1.5 ~ +2.0
<+1.7>
 4月時点の見通し+1.0 ~ +1.3
<+1.2>
+1.8 ~ +2.1
<+2.0>
+1.5 ~ +1.8
<+1.7>
 2025年度+1.0 ~ +1.2
<+1.0>
+1.6 ~ +2.0
<+1.6>
+1.8 ~ +2.2
<+1.8>
 4月時点の見通し+1.0 ~ +1.1
<+1.0>
+1.6 ~ +1.9
<+1.6>
+1.8 ~ +2.0
<+1.8>

この物価見通しを前提に、金融政策は大規模な異次元緩和から引締めに方向転換の判断が示されています。8-1の投票結果で、中村委員だけが反対票を投じたのですが、法人企業統計を確認した後での政策変更という意見らしく、時期の問題だけの反対票であり金融政策変更そのものは反対ではなさそうです。
すなわち、アベノミクスの第1の矢はとうとう地に落ちてしまいました。もちろん、物価上昇率の見通しがインフレ目標の+2%を超えている、というのが主眼なんでしょうが、広く報じられている通り、米国では連邦準備制度理事会(FED)が、また、英国でもイングランド銀行(BOE)が、さらに欧州中央銀行(ECB)も、それぞれ、すでに金利引上げを再開ないし継続しています。にもかかわらず、為替は1ドル140円ほどで持ちこたえていたのですが、黒田総裁家での異次元緩和に幕を引くべく就任した植田総裁ですので、早くも金融政策の方向転換がなされたわけです。なお、実際の金融政策変更は、イールドカーブ・コントロールにおいて長期金利の変動幅の上限を+0.5%に据え置くものの、実際には柔軟化を図り、指値オペを従来の上限+0.5%から+1.0%に引き上げる、というものです。日銀資料からその政策変更を示す概念図を引用すると下の通りです。

photo

この「柔軟化」によって、10年もの国債のイールドは実際には+1%に張り付くことになります。金利上昇圧力が強まるのは目に見えています。私は、物価上昇は一時的であって、先に示した日銀審議委員の大勢見通しにも示されているように、来年度2024年度には生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)上昇率は+2%を下回る可能性が十分あり、さ来年度の2025年度には確実に下回る、と考えています。そのころには、また大規模緩和に戻るのでしょうか。金融政策はかなりラグが長い点は考慮されているとしても、日銀のお手並み拝見です。金融政策の次の段階が政府と日銀のアコードに示されている物価目標の撤廃でないことを願っています。

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