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2023年8月 1日 (火)

堅調に推移する6月雇用統計の先行きををどう見るか?

本日は、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも6月統計です。失業率は前月からわずかに改善して2.5%を記録し、有効求人倍率は前月から▲0.01ポイント悪化して1.30倍となっています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

求人倍率1.30倍、求職者増で低下 失業率は2.5%に改善
厚生労働省が1日発表した6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.30倍で、前月から0.01ポイント下がった。物価高騰による家計圧迫などで仕事を探す人が増加した一方、求人数が横ばいだった。2カ月連続で前月を下回った。
総務省が同日発表した6月の完全失業率は2.5%だった。前月から0.1ポイント下がった。労働市場に復帰する人が増加している。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたりの求人数を示す。6月の有効求人数は横ばい、有効求職者数は0.6%増えた。
物価上昇によって家計の負担は高まっている。消費者物価指数は22年9月から3%以上の伸びが続く。職についていなかった人が就職活動を始めたり、兼業先を探したりする動きがある。
新型コロナウイルス感染に対応するため医療職についていた人が足元で飲食業に転職するといった例もあるとされる。
景気の先行指標とされる6月の新規求人数(原数値)は前年同月比で2.1%減少した。新型コロナの5類移行で外出が活発になってきたことを受けて、宿泊・飲食サービス業が1.3%増えた。医療・福祉も0.9%増加した

続いて、雇用統計のグラフは下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

まず、失業率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月からやや改善の2.5%と見込まれ、有効求人倍率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスも、これまた、前月からやや改善の1.32倍と見込まれていました。実績では、失業率はコンセンサス通りながら、有効求人倍率は市場予想からやや下振れしました。ただし、総合的に見て、「こんなもん」という気がします。いずれにせよ、足元の統計はやや鈍い面もあるとはいえ、雇用は底堅いと私は評価しています。季節調整済みのマクロの統計で見て、昨年2022年年末12月から直近の6月統計までの半年間で、人口減少局面に入って久しい中で労働力人口は+28万人増加し、就業者も+29万人増、雇用者にいたっては+56万人増となっていて、逆に、非労働力人口は▲26万人の減少です。完全失業者は+2万人増加していますが、積極的な職探しの結果の増加も含まれているわけですから、すべてがネガな失業者増ではない、と想像しています。また、季節調整していない原系列の統計ながら、休業者数に着目すると、今年2023年に入ってから休業者は前年同月比で5月統計まで減少を続けていて、6月は+6万人とわずかに増加していますが、1~5月の各月の休業者数の減少を合計すると▲130万人を超えていますので、大きく休業者が増加したとは私は考えていません。。マイクロに見て産業別では、雇用の先行指標とみなされている新規求人数について見ると、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染法上の分類変更などを背景に、宿泊業・飲食サービス業では前年同月比で今年2023年に入ってから増加を続けています。
ただし、雇用の先行きに関しては、それほど楽観できるわけではありません。というのも、インフレ抑制を目指した先進各国の金融引締めから世界経済は停滞色を今後強めると考えられますから、輸出への影響から生産が鈍化し、たとえ人口減少下での人手不足が広がっているとはいえ、生産からの派生需要である雇用にも影響が及ぶ可能性は否定できません。エコノミストとしての私の直感ながら、我が国景気は回復ないし拡大局面の後半期に入っている可能性が高い、と考えられるからです。

最後に、そろそろ、今年2023年の「経済財政白書」が公表されるのではないかと期待しています。昨年は2022年7月29日の閣議に配布されています。本日の閣議は10時からのようで、もうすでに公表されているのかもしれませんが、もう少し待ちたいと思います。

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