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2023年8月17日 (木)

赤字に戻った7月の貿易統計と力強さに欠ける6月の機械受注をどう見るか?

本日、財務省から7月の貿易統計が、また、内閣府から6月の機械受注が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、貿易統計については、季節調整していない原系列で見て、輸出額が▲0.3%減の8兆7249億円に対して、輸入額は▲13.5%減の8兆8036億円、差引き貿易収支は▲787億円の赤字を記録しています。機械受注については、民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+2.7%増の8540億円となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2カ月ぶり貿易赤字 7月、赤字幅は前年比94.5%縮小
財務省が17日発表した7月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は787億円の赤字だった。赤字は2カ月ぶりだが、赤字幅は前年同月に比べて94.5%縮小した。資源価格の高騰が落ち着いて輸入額が減った。半導体製造装置などが不調で輸出額も微減となった。
貿易収支は6月に23カ月ぶりの黒字となったが再び赤字に転落した。中国向け輸出などが減って輸出額は2021年2月以来、29カ月ぶりの減少となった。
輸入は前年同月比で13.5%減の8兆8036億円だった。原粗油は29.7%減の8032億円、液化天然ガス(LNG)は42.3%減の4533億円で輸入額を引き下げた。主にアラブ首長国連邦(UAE)やマレーシアからの輸入が減った。
原粗油はドル建て価格は1バレル当たり80.5ドルと前年同月から30.8%下がった。為替レートは4.6%の円安に振れたが、円建て価格は1キロリットル当たり約7万2000円と27.6%下がった。
世界銀行によると7月のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の月平均価格は1バレル当たり76ドルで、前年同月の99ドルから23%下がっている。
輸入を地域別でみると中国が1兆9205億円と13.9%減少した。電話機や電算機類、医薬品の減少額が大きい。米国は9453億円で11.2%減だった。LNGや半導体等電子部品の輸入が振るわなかった。
輸出は8兆7249億円と0.3%の微減だった。半導体等製造装置の輸出額が26.6%減の2882億円だった。半導体不足の解消で自動車の輸出額は1兆5904億円の28.2%増となったものの、輸出額全体を引き上げるには至らなかった。
輸出を地域別でみると中国向けは13.4%減の1兆5433億円だった。自動車や半導体等電子部品などが減少した。米国向けは1兆7912億円で前年同月比で13.5%増えた。自動車の輸出が34.1%増の5650億円となった。
7月単月の貿易収支を季節調整値でみると5571億円の赤字だった。輸入が前月比2%増の9兆178億円、輸出も2%増の8兆4606億円だった。貿易収支の赤字幅は3.1%拡大した。
機械受注3.2%減 4-6月、2四半期ぶりマイナス
内閣府が17日発表した4~6月期の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力を除く、季節調整済み)は前期比3.2%減の2兆5855億円だった。マイナスは2四半期ぶりで、船舶と電力を除く非製造業からの受注が減少した。
船舶と電力を除く非製造業は前期比8.8%減で、3四半期ぶりのマイナスとなった。製造業は前期比1.1%増と、2四半期連続で拡大した。内閣府は実績を見通しで割った「達成率」を公表しており4~6月期は89.8%だった。
業種別でみると非製造業では建設機械や電子計算機の発注が減った建設業が38.6%減だった。通信機などが減った通信業も30.5%マイナスだった。建設業、通信業ともに大きく伸びた1~3月期の反動で減少した。
製造業ではその他輸送用機械が54.5%増えた。鉄道車両や関係する部品などの発注が増えた。
6月末時点の7~9月期の受注額見通しは前期比2.6%減だった。見込み通りなら2四半期連続のマイナスとなる。
17日に発表した6月の民需(船舶・電力を除く季節調整済み)の受注額は前月比2.7%増の8540億円だった。プラスは2カ月ぶりとなる。船舶と電力を除く非製造業は9.8%増、製造業は1.6%増と、ともにプラスだった。
製造業では化学工業や自動車・同付属品からの受注が増えた。非製造業は金融業・保険業がプラスとなった。全体の基調判断は「足踏みがみられる」で8カ月連続で同じ表現とした。

とてつもなく長くなってしまいましたが、いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、小幅な貿易黒字が見込まれていたのですが、実績の▲800億円近い貿易赤字となり、貿易黒字から赤字への転換とはいえ、予想レンジの下限は▲1300オゥ園でしたから、大きなサプライズない印象です。加えて、引用した記事の最後のパラにもあるように、季節調整済みの系列の統計で見て、まだ7月統計でも貿易赤字は継続しているわけで、赤字幅は縮小したとはいえ▲5000億円を超えています。季節調整していない原系列の統計で見ても、季節調整済みの系列で見ても、グラフから明らかな通り、輸出額はそれほど大きく伸びているわけではなく、輸入が大きく減少したのが貿易収支の赤字縮小の原因です。ただし、円安については足元でまたまた1ドル140円半ばに達して、昨秋の介入水準に近くなっていることは事実です。私の主張は従来から変わりなく、貿易収支が赤字であれ黒字であれ、輸入は国内生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観する必要はない、と考えています。
7月の貿易統計は引用した記事にも少し言及されていますが、品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が大きく減少しています。単価と数量のいずれでも減少していると考えられます。すなわち、原油及び粗油は数量ベースで▲2.9%減に過ぎませんが、金額ベースでは▲29.7%減となっています。LNGも同じで数量ベースでは▲17.4%減であるにかかわらず、金額ベースでは▲42.3%減となっています。価格は国際商品市況で決まる部分が大きく、そこでの価格低下なのですが、少し前までの価格上昇局面でこういったエネルギー価格に応じて省エネが進みましたので、価格と数量の両面から輸入額が減少していると考えるべきです。少しタイムラグを置いて、価格低下に見合った輸入の増加が生じる可能性は否定できません。それが見られるのは食料品であり、穀物類は数量ベースのトン数では+4.7%増となっているにもかかわらず、金額ベースでは▲4.9%減と価格の下落により輸入額が減少しています。輸出に着目すると、輸送用機器の中の自動車は季節調整していない原系列の前年同月比で数量ベースの輸出台数は+30.6%増、金額ベースでは+49.7%増と伸びています。自動車輸出は半導体部品などの供給制約の緩和による生産の回復が寄与して台数ベースの数量で前年同月比+18.1%増、輸出額も+28.2%増と伸びています。ただし、一般機械▲4.5%減、電気機器▲7.3%減と、自動車以外の我が国リーディング・インダストリーの輸出はやや停滞しています。これは、先進各国がインフレ抑制のために金融引締めを継続していて、景気が停滞していることが背景にあります。ただ、輸出額が北米や西欧向けで大きく減少しているわけではありません。むしろ、7月統計を見る限り、ゼロコロナ政策を継続している中国向け輸出額の減少が大きく、前年同月比で▲13.4%減と2ケタ減を記録しています。

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続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比+3.8%増の予想でしたから、実績+2.7%増はやや下振れた印象です。引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いています。8か月連続での基調判断の据え置きだそうです。上のグラフで見ても、トレンドとして下向きとなっている可能性が読み取れると思います。ただし、受注水準としてはまだ8,000億円を超えており決して低くはありません。ただし、4~6月期の見通しでは、前期比+4.6%増の2兆7926億円と見込まれていたところ、実績では3.2%減の2兆5855億円にとどまりました。加えて、7~9月期の見通しは、製造業・非製造業ともに減少し、コア機械受注で見て▲2.6%減の2兆5,174億円と見込まれていますので、景気局面が回復ないし拡大の後半に差しかかっていることも事実ですから、機械受注のような先行指標は下向きに反転したとしてもおかしくないと、私は考えています。また、引用したい記事にもある通り、4~6月期のコア機械受注の達成率が89.8%まで低下しています。エコノミストの経験則として、この達成率が90%ラインを下回れば景気後退局面に入る、というのがあります。日銀が金融緩和を終了し、長期金利の上昇を容認する姿勢を取っていることから、金融政策ですのでかなり長いラグがあるとはいえ、何らかの景気下押し圧力があると考えるべきですから、景気はゆっくりと下降に向かい可能性が強くなっていると私は受け止めています。

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