« 阪神タイガース18年ぶりのセリーグ優勝おめでとう | トップページ | 今週の読書は経済書3冊をはじめとして計8冊 »

2023年9月15日 (金)

公立図書館への投資は何をもたらすのか?

米国経済学会 American Economic Association の発行する American Economic Journal の予告編で "The Returns to Public Library Investment" が取り上げられています。公立図書館への投資は何をもたらすのでしょうか。まず、米国経済学会のサイトから論文のアブストラクトを引用すると以下の通りです。

Abstract
Local governments spend over 12 billion dollars annually funding the operation of 15,427 public libraries in the United States, yet we know little about their effects. We use data describing the near-universe of public libraries to show that public library capital investment increases library visits, children's attendance at library events, and children's circulation by an average of 5-15% in the years following investment. Increases in library use translate into improved test scores in nearby school districts: a $200 or greater per student capital investment in local public libraries increases reading test scores by 0.01-0.04 standard deviations in subsequent years.

下線部は引用者による強調です。要するに、アブストのアブストで、投資後の数年間で図書館訪問者数、図書館イベントへの子供の出席数、および子供に対する貸出しが平均5~15%増加し、地元の公共図書館に生徒1人当たり200ドル以上の資本投資を行うと、その後の読解テストのスコアが標準偏差0.01~0.04上昇する、という結果を導いています。この論文は、ジャーナル掲載バージョンは学会員でなければ閲覧できないようですので、2021年にアップロードされているシカゴ連銀のサイトにあるワーキングペーパーを少し見てみました。

photo

まず、ワーキングペーパーから、Figure 1: Effect of capital expenditure shock on library use を引用すると上の通りです。アブストにあったように、(B)の子供たちへの貸出しと(C)子供たちのイベントへの参加がプラスの影響を受けています。影をつけてあるのは95%の信頼区間であり、ゼロをまたいでいませんから、明らかに統計的にプラスの影響を認めることが出来ます。ついでながら、(D)の図書館訪問者数もプラスの影響を受けています。

photo

続いて、ワーキングペーパーから、Figure 4: Impact of library capital spending shocks on child test scores を引用すると上の通りです。上のパネルの(A)が読解テスト、下の(B)が数学テストのそれぞれスコアの変化を見ています。残念ながら、下のパネルの(B)の数学テストの結果は、平均的にはプラスの結果が出ている年が多いものの、95%の信頼区間がゼロをまたいでいて、統計的に必ず正であるという有意性は認められませんでした。他方で、上の読解テストの方はスコアの上振れは決して大きくはないものの、少なくとも6-7年目には信頼区間がゼロから上にあって、統計的な有意性が認められます。まあ、図書館に対する投資ですので、数学よりも読解テストに効果ある、というのはもっともらしい気がします。

あくまで米国における研究成果であり、日本をはじめとするほかの国で同じ結果が得られるかどうかは不明ですが、とっても示唆に富んだ結果だと私は受け止めています。日本でも公立図書館への投資が増加して、設備や蔵書などが拡充されることを私は強く願っています。最後に、やや関連するところで、9月12日に OECD から Education at a Glance 2023 が公表されています。昨年の2022年版にはあった Total public expenditure on education のグラフが今年の2023年版にはありませんでした。ほかも含めて、ご参考まで。

|

« 阪神タイガース18年ぶりのセリーグ優勝おめでとう | トップページ | 今週の読書は経済書3冊をはじめとして計8冊 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 阪神タイガース18年ぶりのセリーグ優勝おめでとう | トップページ | 今週の読書は経済書3冊をはじめとして計8冊 »