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2023年9月 5日 (火)

所得はスキルと働く場所のどちらに依存するのか?

昨日に続いての同じソースで、全米経済協会(NBER)から "Location, Location, Location" と題するワーキングペーパーが明らかにされています。まず、サイテーションは以下の通りです。

次に、NBERのサイトからアブストラクトを引用すると以下の通りです。なお、下線は引用者の私がつけています。

ABSTRACT
We use data from the Longitudinal Employer-Household Dynamics program to study the causal effects of location on earnings. Starting from a model with employer and employee fixed effects, we estimate the average earnings premiums associated with jobs in different commuting zones (CZs) and different CZ-industry pairs. About half of the variation in mean wages across CZs is attributable to differences in worker ability (as measured by their fixed effects); the other half is attributable to place effects. We show that the place effects from a richly specified cross sectional wage model overstate the causal effects of place (due to unobserved worker ability), while those from a model that simply adds person fixed effects understate the causal effects (due to unobserved heterogeneity in the premiums paid by different firms in the same CZ). Local industry agglomerations are associated with higher wages, but overall differences in industry composition and in CZ-specific returns to industries explain only a small fraction of average place effects. Estimating separate place effects for college and non-college workers, we find that the college wage gap is bigger in larger and higher-wage places, but that two-thirds of this variation is attributable to differences in the relative skills of the two groups in different places. Most of the remaining variation reflects the enhanced sorting of more educated workers to higher-paying industries in larger and higher-wage CZs. Finally, we find that local housing costs at least fully offset local pay premiums, implying that workers who move to larger CZs have no higher net-of-housing consumption.

要するに下線部の通りなのですが、"About half of the variation in mean wages across CZs is attributable to differences in worker ability (as measured by their fixed effects); the other half is attributable to place effects" CZ(Comuting Zone=通勤圏)間の平均賃金の変動の約半分は、労働者の能力の違い(固定効果で測定)に起因しています。 残りの半分は配置効果によるもの、ということです。平たくいえば、賃金の地域間格差の半分は労働者のスキルの差から発生し、残り半分は地域そのものから生じている。もちろん、米国のデータによる実証ですが、同じ結論が日本でも当てはまるとすれば、高賃金地域における労働者の高賃金はその地域、たぶん、東京あるいは首都圏、という高賃金通勤圏にいれば自動的にその労働者の賃金が高くなる、という結論を実証しています。小難しい計量経済学的な実証についてはスルーしますが、ビジュアルにワーキングペーパーの p.47 から Figure 1. Mean earnings before and after a change of CZs, by change in CZ mean earnings を引用すると以下の通りです。

photo

通勤圏(CZ)は4分位になっており、No.4がもっとも高賃金です。ですから、少し極端なケースを見れば、黒線で■のマーカーで示された 4 to 1 はもっとも高賃金の通勤圏からもっとも低賃金の通勤圏に引越して転職したケース、水色で+のマーカーで示された 1 to 4 はもっとも低賃金の通勤圏からもっとも高賃金の通勤圏への移動、の2ケースを見ます。労働者が転職で引越しただけですので、その引越した労働者の持つスキルは変化ないと考えてよさそうなのですが、高賃金通勤圏から低賃金通勤圏に移動した労働者の賃金は低下し、逆に、低賃金通勤圏から高賃金通勤圏に移動した労働者の賃金は上昇し、両者はクロスして逆転してしまっています。おそらく、同じ労働者ですからスキルに変化ないので地域特性により賃金が低下したり、上昇したりするわけです。これが、もしも、あくまでもしもですが、日本でも当てはまるのであれば、東京や首都圏に移動するだけで賃金が上昇する可能性があるわけです。それが次のグラフです。

photo

このワーキングペーパーによる推計結果ではないのですが、引用している論文のグラフが上の通りで、p.xiii の Appendix Figure 1. Wage changes for movers in and out of metropolitan areas (Glaeser and Mare, 2000) となります。もっとロコツに、metropolitan areas=首都圏へ入る移動と、逆に、首都圏から出る移動の2ケースをプロットしています。2種類のデータで実証されていて、首都圏に入る移動により賃金が上昇し、逆に、首都圏から出る移動により賃金が低下しています。

最後に、グラフなどは引用しませんが、このワーキングペーパーでは、アブストの2番めの下線部のように、"local housing costs at least fully offset local pay premiums" 各地域の住宅コストが地元の賃金プレミアムを完全に相殺している、と結論していて、高賃金地域に移動して高賃金を享受するとしても住宅コストは賃金プレミアムを相殺する水準、すなわち、ある意味では合理的に、設定されている、ということで、労働者が高賃金をすべて享受できるわけではない、ことを示しています。

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