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2023年10月31日 (火)

パ・リーグの覇者オリックスに甲子園でも歯が立たず連敗

  RHE
オリックス000131000 590
阪  神010000300 4101

パ・リーグの覇者オリックスに連敗です。甲子園でも歯が立ちませんでした。
2回に併殺崩れで先制点を上げたものの、先発伊藤投手が中盤にオリックス打線につかまり、5回を4失点で降板します。後を継いだブルワー投手も失点し、ラッキーセブンには1点差まで詰め寄りましたが、攻撃もここまでで、8-9回はオリックスのリリーフ陣に抑え込まれました。3番森下選手が打ち出すと、5番佐藤輝選手が4タコ3三振に終わりました。10安打を打ちながらもここ一番で抑えられてしまいました。

明日は、
がんばれタイガース!

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一進一退続く鉱工業生産指数(IIP)と前月比でマイナスに転じた商業販売統計と前月から大きな変化ない雇用統計

本日は、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも9月統計です。IIP生産指数は季節調整済みの系列で前月から+0.2%の増産でした。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+5.8%増の13兆3570億円を示した一方で、季節調整済み指数は前月から▲0.1%の低下を記録しています。さらに、失業率は前月から▲0.1%ポイント改善して2.6%を記録し、有効求人倍率は前月から横ばいの1.29倍となっています。まず、日経新聞のサイトなどから各統計を報じる記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、9月は0.2%上昇 3カ月ぶりプラス
経済産業省が31日に発表した9月の鉱工業生産指数(2020年=100、季節調整済み)速報値は103.3となり、前月から0.2%上がった。自動車工業や窯業・土石製品工業がけん引し、3カ月ぶりのプラスになった。
生産の基調判断は「一進一退」として前月から据え置いた。
全15業種のうち9業種で上昇した。普通自動車やシャシー・車体部品などの自動車工業は6.0%伸びた。セメントなどの窯業・土石製品工業は3.5%上がった。
台風やシステム不具合などの影響で一部で工場稼働が停止し、8月の生産が落ち込んでいた自動車工業はその反動もあった。
トヨタ自動車など乗用車メーカー8社が30日に公表した4~9月の世界生産は1247万台となり、前年同期比で7.4%増えた。車載半導体などの部品不足が緩和されて生産が回復した。
残る6業種は低下した。産業用ロボットや金型などの生産用機械工業が3.4%下がった。国内外の受注が大きく減ったことが響いた。
主要企業の生産計画から算出する生産予測指数は10月に前月比3.9%のプラスを見込んだ。11月は2.8%のマイナスとなる見通し。
経産省は中国経済や米国の金利上昇、物価上昇などの動向について注視する必要があると指摘した。
小売業販売額9月は前年比5.8%増、食品・ガソリン値上げ続く
経済産業省が31日に発表した9月の商業動態統計速報によると、小売業販売額(全店ベース)は前年比5.8%増となった。ロイターの事前予測調査では5.9%増と予想されていた。飲食料品など幅広い品目の値上げの影響が大きかった。
業種別ではガソリンスタンドなど燃料が前年比7.5%増、自動車小売と飲食料品がそれぞれ7.0%増、その他小売業が6.6%増、デパートなどの各種商品が5.6%増だった。一方、衣服・身の回り品は気温高で秋物衣料が不調だったため6.1%減だった。
業態別では百貨店が前年比8.1%増、スーパー3.7%増、コンビニ4.0%増、ドラッグストア10.2%増。コンビニは加工食品などが好調、ドラッグストアは医薬品やペット用品など幅広い品目が伸びるなか飲食料品が特に好調だった。
商業動態統計は金額ベースのため値上げによる販売数量の影響は把握できないが、スーパーなどからは「消費者の節約志向を感じる」などの声が出ているという。
9月求人倍率、横ばいの1.29倍 失業率は2.6%に改善
厚生労働省が31日発表した9月の有効求人倍率(季節調整値)は1.29倍で前月から横ばいだった。新型コロナウイルスで落ち込んだ需要が回復している宿泊や飲食・サービス業で求人が増えた。原材料費などの上昇で収益を圧迫された製造業や建設業は求人を抑えた。
総務省が同日発表した9月の完全失業率は2.6%で前月に比べて0.1ポイント下がった。
有効求人倍率は、全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。9月の有効求職者数は2カ月連続で減ったが、減少幅は0.1%と小幅にとどまった。有効求人数も横ばいだった。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月比で3.4%減少した。原材料や光熱費が上がった影響を受け、製造業は12.7%減、建設業は8.1%減となった。宿泊・飲食サービス業は新型コロナからの消費持ち直しを背景に5.2%増えた。
完全失業者数は182万人で前年同月比で2.7%減った。就業者数は6787万人で0.3%伸び、14カ月連続の増加となった。男性は5万人、女性は16万人それぞれ増えた。仕事に就かず職探しもしていない非労働人口は4040万人で31万人減った。

多くの統計を報じた記事ですので、とてつもなく長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は予測中央値で+2.5%、下限でも+0.5%の増産でしたので、実績の前月比+0.2%の増産は、3か月ぶりの増産ながら、コンセンサスよりも大きく下振れしています。上のグラフでも明らかな通り、まさに、生産は横ばい状態が続いていて、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、「生産は一進一退で推移している」と前月から据え置いています。ただ、製造工業生産予測指数を見ると、引用した記事にもある通り、足元の10月は補正なしで+3.9%の増産、上方バイアスを除去した補正後でも+1.1%の増産となっていて、先行きも決して悪くありません。11月については、減産が予想されていますが、現時点ではまだ何ともいえません。経済産業省の解説サイトによれば、9月統計の生産は、「自動車工業を中心に多くの業種が上昇」ということになっています。自動車工業では、普通乗用車の販売が好調であることなどを受けて、普通乗用車やシャシー・車体部品などが上昇しています。ただ、自動車工業については8月下旬のトヨタの工場停止に続いて、NHKの報道に見るように、10月16日に取引先のばねメーカー「中央発條」の工場で生産設備の爆発事故が発生したため部品が調達できなくなり、一部工場の生産ラインで稼働停止が続いていました。10月23日から宮城県や岩手県など4工場の5つの生産ラインで生産再開のようですが、レジリエンスに問題がありそうな気がして、生産への影響がやや懸念されます。こういった我が国リーディング産業であり自動車工業などにおける供給制約に加えて、欧米先進国ではインフレ抑制のために金融引締めを継続していることから、ソフトランディングが視野に入りつつあるとはいえ、海外経済が減速しているのは事実であり、輸出に一定の依存をする生産には無視できない影響があります。なお、ソフトランディングについては、9月26日に明らかにされたピーターソン国際経済研究所(PIIP)の経済見通しでは "PIIE projects global economy poised for soft landing" と見込んでいたりします。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。見れば明らかな通り、小売業販売に示された国内需要は堅調な動きを続けています。季節調整済み指数の後方3か月移動平均により、かなり機械的に判断している経済産業省のリポートでは、直近の9月統計までの3か月後方移動平均の前月比が+0.7%の上昇となっていて、繰り返しになりますが、後方移動平均を取らない9月統計の前月比が▲0.1%と減少していますが、「上昇傾向」で据え置いています。さらに、消費者物価指数(CPI)との関係では、今年2023年9月統計ではヘッドライン上昇率も生鮮食品を除くコア上昇率も、前年同月比で+3%近いインフレを記録していますが、小売業販売額の9月統計の+5.8%の増加は軽くインフレ率を超えていて、実質でも小売業販売額は前年同月比でプラスになっている可能性が十分あります。ただ、インフレの影響は国内では消費の停滞をもたらす可能性が高く、したがって、国内需要ではなく海外からのインバウンドにより小売業販売額の伸びが支えられている可能性がありますので、国内消費の実態よりも過大に評価されている可能性が否定できません。私の直感ながら、引用した記事にもあるように、百貨店やドラッグストアの伸びがスーパーなどよりも高いのが、インバウンドの象徴のような気もします。ただ、記事によれば加工食品や飲食料品が好調、とのことですので、インバウンドではなく国内消費に起因している気もしないでもありません。いずれにせよ、物価上昇率の落ち着きにより名目ベースでの小売業販売額の伸びは鈍化する可能性があります。というか、季節調整済み系列の前月比がマイナスに転じていますので、素手の前月からの比較では伸びの鈍化は始まっているようです。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。失業率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月から改善の2.6%と見込まれ、有効求人倍率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスについても、前月から改善の1.30倍と見込まれていました。実績では、失業率はコンセンサス通りでしたが、有効求人倍率は横ばいでした。しかし、予測レンジの範囲内でしたし、総合的に見て、「こんなもん」という気がします。いずれにせよ、足元の統計は改善がやや鈍い面もあるとはいえ、雇用は底堅いと私は評価しています。季節調整済みのマクロの統計で見て、昨年2022年の年末12月から直近の9月統計までで、人口減少局面に入って久しい中で労働力人口は+32万人増加し、就業者は+30万人増、雇用者にいたっては+63万人増となっていて、逆に、非労働力人口は▲49万人の減少です。完全失業者も+6万人増加していますが、積極的な職探しの結果の増加も含まれているわけですから、すべてがネガな失業者増ではない、と想像しています。就業者の内訳として雇用形態を見ると、正規が+42万人増の一方で、非正規が+11万人の増加にとどまっていますから、質的な雇用も決して悪くないと考えるべきです。ただし、雇用の先行きに関しては、それほど楽観できるわけではありません。というのも、インフレ抑制を目指した先進各国の金融引締めから世界経済は、ソフトランディングの可能性が高まっているとはいえ、いくぶんなりとも停滞色を強めると考えられますから、輸出への影響から生産が鈍化し、たとえ人口減少下での人手不足が広がっているとはいえ、生産からの派生需要である雇用にも影響が及ぶ可能性は否定できません。

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最後に、本日、内閣府から10月の消費者態度指数が公表されています。10月統計では、前月から+0.5ポイント上昇し42.1を記録しています。消費者態度指数を構成する5項目の消費者意識指標のうち、「雇用環境」を除く4項目で前月差で見て上昇しており、「暮らし向き」が+1.4ポイント上昇し33.4、「収入の増え方」が+0.4ポイント低下し39.1、「耐久消費財の買い時判断」も+0.4ポイント上昇し29.4となっています。「雇用環境」だけが▲0.4ポイント低下し40.7となりました。消費者態度指数は、8~9月統計では2か月連続で低下していましたが、10月統計では3か月ぶりの上昇となりました。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「改善に向けた動きに足踏みがみられる」と、先月から据え置いています。

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2023年10月30日 (月)

米国では人工知能(AI)はどのように活用されているか?

米国における人工知能(AI)の活用について、"AI Adoption in America: Who, What, and Where" と題する全米経済研究所(NBER)のワーキングペーパーが明らかにされています。引用情報は以下の通りです。

まず、NBERのサイトからAbstractを引用すると以下の通りです。

Abstract
We study the early adoption and diffusion of five AI-related technologies (automated-guided vehicles, machine learning, machine vision, natural language processing, and voice recognition) as documented in the 2018 Annual Business Survey of 850,000 firms across the United States. We find that fewer than 6% of firms used any of the AI-related technologies we measure, though most very large firms reported at least some AI use. Weighted by employment, average adoption was just over 18%. AI use in production, while varying considerably by industry, nevertheless was found in every sector of the economy and clustered with emerging technologies such as cloud computing and robotics. Among dynamic young firms, AI use was highest alongside more-educated, more-experienced, and younger owners, including owners motivated by bringing new ideas to market or helping the community. AI adoption was also more common alongside indicators of high-growth entrepreneurship, including venture capital funding, recent product and process innovation, and growth-oriented business strategies. Early adoption was far from evenly distributed: a handful of "superstar" cities and emerging hubs led startups' adoption of AI. These patterns of early AI use foreshadow economic and social impacts far beyond this limited initial diffusion, with the possibility of a growing "AI divide" if early patterns persist.

続いて、ワーキングペーパーから Figure 2a: By Firm Size と Figure 2b: By Sector を引用すると以下の通りです。

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当然ながら、規模別には大企業ほどAIが活用されており、産業別にも製造業、情報産業などで活用が進む一方で、建設業や小売業ではまだまだ、といったところです。いずれも、軽く想像できる範囲ですが、このワーキングペーパーのように、フォーマルに統計的に確認することは重要だと思います。

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2023年10月29日 (日)

Happy Halloween!

Trick or Treat!

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今年のハロウィン画像はシーズン2が始まったばかりのSPYxFAMILYです。
我が家は子供たちが小学校を卒業するころまで南青山に住まいしていて、原宿、というか、神宮前のキディランド、ハロウィンに関するイベント発祥の地と目されているキディランドには徒歩圏内でした。港区商店街振興会、だと思うんですが、のハロウィン・イベントは青山通りのエイベックスビルで参加店舗の地図が配布されて、いろんなお店を回って子供たちがお菓子をせしめる、という日本全国でも有数のイベントでした。我が家では特に下の子が熱心に参加していた記憶があります。
今は、関西の中心となる京阪神からも外れて、しかも、県庁所在市でもない地方圏に住まいして、ハロウィンを楽しむ年齢の子供や孫もいない身としては寂しい限りです。

それでも、やっぱり、
Happy Halloween!

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2023年10月28日 (土)

パ・リーグの覇者オリックスを圧倒して日本シリーズ初戦に快勝

  RHE
阪  神000043001 8130
オリックス000000000 021

パ・リーグの覇者オリックスを圧倒して、日本シリーズ初戦に勝利でした。
先発村上投手が完璧なピッチングでオリックス打線を7回2安打無死球無失点で抑え込み、8回を鍛冶屋投手、最終回は岩貞投手がともに三者凡退で抑えて完封リレーの完成です。打線は中盤に爆発し、クリンナップと6番に打点がないものの、下位打線と1-2番がタイムリーを浴びせて大勝でした。それにしても、5回の攻撃でヒットで出た佐藤輝選手がいきなり盗塁を決めて、DHに入った渡邉諒選手がタイムリーと、相変わらずの岡田監督の神采配でした。

明日も、
がんばれタイガース!

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今週の読書は経済書2冊をはじめ計6冊

今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、水野勝之・土居拓務[編]『負効率の経済学』(昭和堂)は、コスパやタイパに代表される効率性の絶対視に対して負の効率である負効率の用途や重要性を説きます。ジョナサン・ハスケル & スティアン・ウェストレイク『無形資産経済 見えてきた5つの壁』(東洋経済)は、現在の停滞を脱して無形資産経済に進む上での重要な方策について何点か指摘しています。エリカ・チェノウェス『市民的抵抗』(白水社)は、非暴力で政治や社会を変革することを目的とする市民的抵抗について膨大なケーススタディの成果を取りまとめています。リチャード・オスマン『木曜殺人クラブ 逸れた銃弾』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)は、シリーズ第3作であり、10年ほど前にテレビの報道番組のサブキャスターが亡くなった事件の解決を木曜殺人クラブの高齢者集団が目指します。山口香『スポーツの価値』(集英社新書)は、筑波大学の研究者であり柔道のオリンピック・メダリストでもある著者が、混迷する日本スポーツ、スポーツ界について辛辣な批評を加えています。最後に、桜井美奈『私が先生を殺した』(小学館文庫)では、全校集会のさなかに校舎屋上から飛び降りた人気ナンバーワン教師の謎を解明します。
ということで、今年の新刊書読書は交通事故前の1~3月に44冊、退院した後、6~9月に104冊を読み、10月に入って先週までに20冊、そして、今週ポストする6冊を合わせて174冊となります。今年残り2月で、どうやら、例年と同じ年間200冊の新刊書読書ができるような気がしてきました。
また、新刊書読書ではあるのでしょうが、マンガということで本日の読書感想文には含めなかった山岸凉子『鬼子母神』と『海の魚鱗宮』、いずれも文春文庫の自薦傑作集の第4集と第5集を読みました。そのうちに、Facebookでシェアしたいと予定しています。

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まず、水野勝之・土居拓務[編]『負効率の経済学』(昭和堂)を読みました。著者は、明治大学と農林水産研究所の研究者です。先日レビューしたジェレミー・リフキン『レジリエンスの時代』の主張にもありましたが、従来の効率を重視する経済社会は、本書でも、どうやら終わりつつあるようで、『レジリエンスの時代』ではレジリエンスの重要性が増していると強調されていますし、本書では「負効率」も考え合わせることが必要という意見です。本書でいう「負効率」は非効率よりもゼロに近い、あるいは、ゼロの効率から、一歩進んで、というか、なんというか、効率がマイナス、すなっわち、効率としては逆であっても、結果として望ましい結末を迎える例がある、という点を強調しています。世間一般では、「コスパ」を重視し、最近ではコストの中でも、万人に等しく配分されている時間を節約する「タイパ」の重視も広がってきていますが、そういった世間一般の傾向に真っ向から対立しているわけです。それを経済学の視点から、マイナスの効率であってもプラスの効用が得られるケースを考えています。章別で論じられているのは、企業経営、経済効果、英語学習、大相撲、プロ野球、歩行、タクシー業界、地方/都会、PTAのそれぞれの負効率を論じています。ただ、「負効率」という目新しい用語を使っているだけで、途中からは伝統的な「急がば廻れ」といいだして、要するに、コスパやタイパを追認しているようにも見えます。すなわち、直線で行くよりも迂遠に見えても別の「効率的」な処理方法がある、というわけですから、結局は、本書の主張も形を変えているだけで、効率至上主義の別の現れであろうと私は考えています。もしも、マイナスをマイナスのままで価値あるものと考える、というのであれば、それは一定の方向性ある主張だと私も思いますが、結局、小手先で別の方法を取れば、マイナスをプラスに転じて、同じ目標をさらに「効率的」に達成できる、という点を強調しているだけに見えます。私の読み方が浅いのかもしれませんが、私の考える「負効率」、すなわち、マイナスをマイナスのままに受け入れる、とは大きく違って、さらに、リフキンのレジリエンスのような効率に対する代替案も提示されていなくて、とってもガッカリしました。読書の候補に上げている向きには、ヤメておいた方がいいとオススメします。

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次に、ジョナサン・ハスケル & スティアン・ウェストレイク『無形資産経済 見えてきた5つの壁』(東洋経済)を読みました。著者は、いずれも英国の研究者であり、インペリアル・カレッジ・ビジネススクールと王立統計協会に所属しています。英語の原題は Restartng the Future であり、2022年の出版です。私は、3年半前の2020年3月に同じ著者2人による『無形資産が経済を支配する』をレビューしています。前著では、無形資産が重要性を増す無形経済になれば、格差の拡大などを招いたり、長期停滞につながったり、経営や政策運営の変更が必要となる可能性を議論しています。本書では、そういった格差拡大などのネガな影響ではなく、そもそも、現状の経済社会について、経済停滞、格差拡大、機能不全の競争、脆弱性、正統性欠如という5つの問題点を指摘し、それが邦訳タイトルになっているわけです。そして、重要なポイントは、現在のこういった問題点は過渡期の問題であると指摘していることです。すなわち、アンドリュー・マカフィー & エリック・ブリニョルフソンによる『セカンド・マシン・エイジ』と同じで、新しい「宝の山」、すなわち、『セカンド・マシン・エイジ』では人工知能(AI)など、本書では無形資産を十分に活かしきれていないことが現在の停滞の原因のひとつである、という認識です。ですので、本書に即していえば、無形資産をさらに積極的に活用するための方策、特に制度面に焦点を当てた方策が取り上げられています。主要には4点あります。第1に、無形資産のスピルオーバーに対する政策的な知的財産権保護の強化あるいは補助金が必要としています。第2に、無形資産は担保として使えないことから負債ファイナンスに向かず、金融的な措置が必要と主張しています。第3に、無形資産のシナジー効果を発揮するには都市が最適であり、ゾーニング規制などの撤廃を求めています。そして、第4に、GAFAのようなテック企業をはじめとして競争政策の緩和から生まれた巨大企業の例を考えれば、無形資産経済では過度の競争政策は無用と強調しています。はい。私も理解できなくもないのですが、特に第4の競争政策なんて、無形資産経済とは何の関係もなく、単に、企業を巨大化させるためだけに主著されているような気がします。大企業の独占力の弊害も決して無視できません。まあ、前著についても、私はそれほど高い評価はしていませんが、本書についてもm,右傾資産経済とは何の関係もない点をシラッと入れ込んでいたりして、疑問に思わない点がないでもありません。ただ、山形浩生さんの邦訳はスムーズで読みやすいのは評価できます。

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次に、エリカ・チェノウェス『市民的抵抗』(白水社)を読みました。著者は、米国ハーバード大学の研究者であり、政治的暴力やテロリズムを研究しており、非暴力で政治・社会を変えることを目指す市民的抵抗に注目していたりします。英語の原題は Civil Resistance であり、2021年の出版です。邦題はほぼほぼ直訳です。本書は、いわゆる「3.5%ルール」を提唱した研究者による学術書であり、膨大なケーススタディから的確な結論を抽出しています。特に重要なポイントは非暴力であり、他の人を傷つける、あるいは、傷つけると威嚇することなく目的を達成する市民的抵抗を論じています。すなわち、非暴力運動は弱々しく見える、あるいは、効果も乏しいように感じられがちですが、実はそうではなく、1900年から2019年の間に非暴力革命は50%以上が成功した一方で、暴力革命はわずか26%の成功にとどまる、といった実証的な根拠を示しています。斎藤幸平+松本卓也[編]『コモンの「自治」論』のレビューでも指摘しましたが、少なくとも、教条的マルクス主義に基づく暴力革命なんてシロモノは、非暴力の市民運動よりも成功の確率低いことは明らかですし、かといって、その昔の統一教会よろしく選挙にすべてを賭けるのも、少し違う気がして、私はコモンの拡大と自治、あるいは、本書で取り上げているような市民的抵抗が、暴力的な運動と選挙一辺倒の間に位置して、それなりに重要性を増している気がしています。市民レベルの暴力的な抵抗は、少なくとも近代的な軍隊の前にはまったく無力でしょうし、同時に、他の市民の批判や反対を招くことになるとしか私には考えられません。ただ、私に不案内だったのは、何をもって市民運動の成功とみなすのか、という点です。本書で指摘しているようにマキシマリスト的に政権交代とか分離独立とかであれば、成功の基準は明らかです。さらに、定性的、質的な制度要求に基づく市民運動、例えば、私が熱烈に支持する市民運動のカテゴリーで、マイナ保険証反対、インボイス制度撤回、などについても、それなりに制度変更が勝ち取れれば成功といえますが、池袋西武百貨店のストライキをどう評価するのか、あるいは、労働組合の賃上げ要求が満額でなかった場合はどうなのか、といった点は私には不案内です。それぞれの市民運動を担ったご本人たちに自己評価を任せると、やや過大評価の方向に流れそうな気もします。その昔に、私の大好きなデモ参加者の数が主催者発表と警察発表でケタ違いだったのを思いまします。それはともかく、現在の日本では民主主義が崩壊の危機に瀕していて、第2次安倍内閣あたりから、権力を握ってしまえば、ウソをついても、不正をしても、やりたい放題という面が垣間見えます。ですので、暴力的な市民運動はNGで、選挙だけに集中するのもいかがなものかと考える私のような市民は、それでも民主主義の根幹をなす選挙を重視しつつ、同時に、車の両輪として、本書に見られるような的確な分析に基づく市民運動にも積極的に参加して、民主主義の危機に対応する必要があると思います。大いに思います。

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次に、リチャード・オスマン『木曜殺人クラブ 逸れた銃弾』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)を読みました。著者は、テレビ司会者、コメディアン、ミステリ作家であり、本書はシリーズ第3作に当たります。私は第1作の『木曜殺人クラブ』、第2作の『木曜殺人クラブ 2度死んだ男』はともに読んでいます。英語の原作は The Bullet That Missed であり、ハードカバー版は2022年、ペーパーバック版は2023年の出版です。以前のシリーズと同じで、舞台は高齢者施設クーパーズ・チェイスであり、そこに住む4人の年金生活者が結成した「木曜殺人クラブ」の活躍を描いています。この作品では、地元の報道番組の女性サブキャスターであったペサニー・ウェイツの殺人事件です。この女性が殺された、というか、死体は見つかっていませんが、失踪した10年ほど前の事件です。死体が見つかっていなのに殺人事件と見なされるのは、彼女の自動車が海岸から転落したからで、死体は発見されていません。その時、この女性サブキャスターはVAT(付加価値税)にまつわる詐欺事件を調査しており、木曜殺人クラブのメンバーはこの報道番組や詐欺事件の関係者などにツテを頼って事情を聞いたりして事件を追求します。しかし、元諜報部員のエリザベスはやや認知症気味の夫スティーヴンとともに拉致され、スパイ時代の因縁浅からぬ旧友である元KGBのヴィクトル大佐を殺すことを強要されたりし、それができないなら、エリザベスの親友ジョイスを殺す、と脅されます。もちろん、最後は謎が解決されて、事件は無事にハッピーエンドの結末を迎えますが、段々とこのシリーズはミステリというよりはエンタメの傾向が強くなっています。相変わらず、物語の展開も登場人物の話し方や作者の描写など、すべてにおいてコミカルです。すでに、第4作が英国では出版されているやに聞き及びますが、シリーズ第3作にして、段々と面白くなっています。ただ、繰り返しになりますが、その逆から見てミステリとしての完成度はやや低下している気もします。最後に、このシリーズは第1作から順を追って読むことを強くオススメします。私自信は順を追って読んでいるのでOKなのだろうと思いますが、たぶん、あくまでたぶんながら、少なくともこの第3作から読み始めると理解が追いつかないと思います。その点は注意が必要です。

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次に、山口香『スポーツの価値』(集英社新書)を読みました。著者は、筑波大学の研究者ですが、おそらく、柔道のオリンピック・メダリストとしての方が名が通っているような気がします。表紙画像の帯に、エッセイストの酒井順子が「ここまで書いてしまっていいの?」という評価を寄せていますが、全般的に、かなり鋭くも辛辣な内容です。ただ、一部には及び腰の部分もあることは確かです。ということで、本書では最近のスポーツ界の諸問題、すなわち、部活動での体罰や、勝利至上主義、もちろん、東京オリンピック組織委員会の森会長の女性蔑視発言とその後の辞任、などなど、なぜか、本書で取り上げられていない日大アメリカンフットボール部の一連の不祥事を除いて、さまざまな日本のスポーツ界に潜む病根を忖度なく指摘していて、スポーツの真の価値を提言しようと試みています。まず、スポーツによって磨かれるのは、論理的かつ戦略的な思考、コミュニケーション能力、そして何より忖度なくフェアにプレーする精神であるとし、その一義的な価値を示しています。まったく、その通りです。私なんぞは自分の健康目的、すなわち、体力面とともにストレス解消などのメンタル面も含めて、自分に利益ある範囲でスポーツを楽しんでいますが、トップレベルのアスリートの行うスポーツは、観客を引き寄せて経済効果あるだけではなく、見る人に感動を与えるわけです。そして、こういったスポーツの価値により社会の分断を乗り越え、スポーツはコミュニティを支える基盤ともなリ得ますし、また、スポーツによって鍛えられる分析力や行動力、戦略性は、学業やビジネスにも役立つと、本書では主張しています。さらに大きく出ると、スポーツには社会を変革する力がある可能性を秘めているという指摘です。まあ、そこまでいかないとしても、スポーツや文化の価値を認めない日本人は少ないと思います。しかし、現在の日本におけるスポーツは勝利至上主義、ジェンダー不平等、そして、何よりも汚職事件に代表されるような東京オリンピックの失敗などにより、こういった価値を、真価を発揮できないでいます。札幌の冬季オリンピック招致断念が象徴的と考える人も少なくないことと思います。ただ、勝利至上主義を批判しつつも、著者個人の経験からオリンピックのメダルの大切さ、というか、ご本人の誇らしさみたいな指摘もあり、しょうがない面もあるものの、その昔の総論賛成各論版たんになぞらえれば、本書は日本のスポーツ、スポーツ界に対して、総論批判各論擁護に議論を展開しているような部分もあります。しかし、私の感想からすれば、発言すべき有識者による思いきった発言であり、すべてのスポーツ愛好家からすれば、読んでおく価値はあると思います。

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次に、桜井美奈『私が先生を殺した』(小学館文庫)を読みました。著者は、ミステリ作家であり、私はこの作者の『殺した夫が帰ってきました』を読んだ記憶があります。ということで、このミステリは、トップ校ではないまでも、そこそこの進学校である才華高校を舞台に、全校生徒が集合する避難訓練中、学校でナンバーワンの好感度を誇る人気教師の奥澤潤が校舎屋上のフェンスを乗り越え飛び降り自殺します。しかし、奥澤が担任を務めるクラスの黒板に「私が先生を殺した」というメッセージがあったことで、自殺ではなく殺人事件の可能性が浮かび上がるわけです。実は、この前段階で、奥澤が校内で女生徒と「淫らな行為」に及んでいる動画がSNSにアップされていて、自殺であれば、その一因とも目されます。そして、この自殺/他殺の謎が解かれるわけです。各章は、何らかの動機があって、奥澤を殺した殺人犯の可能性ある4人の生徒の1人称で語られます。当然ながら、すべて、奥澤の担任クラスの生徒です。まず、授業態度が悪くて、勉強が進まず大学進学を諦めかけている砥部律です。クラスでも孤立気味で、親身になって接してくれる奥澤のことを逆に嫌っています。勉強もせずにSNSにのめり込み、動画を拡散して奥澤を追求します。続いて、勤勉で成績もよい生徒で、特待生として才華高校に通う黒田花音です。しかし、彼女は大学進学に当たって特待生として推薦入学の学校枠が確実といわれながらも、奥澤から推薦候補から外された旨を知らされます。もちろん、奥澤はその理由を明かすことはしません。続いて、素直で明るい性格で、奥澤のことを恋愛感情で見ている百瀬奈緒です。特定されませんでしたが、動画に奥澤と写っているのはこの女生徒です。最後に、進路について病院経営する父親や研究者の母親と意見があわず、奥澤に相談を持ちかける小湊悠斗です。しかし、黒田花音に代わって大学特待生の推薦枠を与えられたのがこの小湊悠斗で、しかも、その事実を黒田花音に知られてしまいます。ストーリーが進むに連れて、徐々に真相が明らかになる私の好きなタイプのミステリだと思って読み進むと、何と、最後の最後に大きなどんでん返しが待っていました。軽く、宮部みゆきの『ソロモンの偽証』の影響を読み取ったのは私だけでしょうか?

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2023年10月27日 (金)

競争促進は価格引下げにつながるか?

今週月曜日の10月23日に、公正取引委員会から「学校制服の取引実態に関する事後検証報告書について」と題するプレスリリースが公表されています。公正取引委員会では2017年に入札やコンペ方式の導入による競争促進を提言していますが、その後の政策効果として、この提言に沿った取組みを実施した学校の制服は2200円安くなった、と結論しています。まず、この報告書について報じた朝日新聞の記事を3パラだけ引用すると以下の通りです。

中学高校の制服、競争働けば2200円安く 公取委が検証結果発表
公正取引委員会は23日、全国の公立中学・高校の学校制服の取引価格についての報告書を発表した。「高価」との指摘が絶えない学校制服について、公取委は2017年に入札やコンペ方式の導入などを提言。この提言通りに取り組んだ学校の制服価格は、そうでない学校より2200円安かったという。
公取委は昨年12月、全国の公立中高計1956校にウェブ上でアンケートし、約8割から回答を得た。17年の提言で、公取委は入札などの導入に加え、価格交渉や新規参入業者への情報開示などを盛り込んだ。これらに取り組んだ学校の制服(ブレザー上下)は、取り組んでいない学校と比べて価格が2200円低いことが確認できたという。
ただ、提言に従った学校は22年度に中学で36%、高校で69%にとどまっており、公取委の担当者は「取り組みを広げる『伸びしろ』はまだある。メーカー間、販売店間の競争を有効に機能させて、保護者の負担を減らす必要がある」と話している。

なかなかに興味深い報告書のようですので、「学校制服の取引実態に関する事後検証報告書 (概要)」からグラフを引用して簡単に見ておきたいと思います。

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上のグラフは、「学校制服の取引実態に関する事後検証報告書 (概要)」から 検証2 提言実施の効果(長期アウトカム) を引用しています。ほかの検証1は報告書提言の実施状況(中期アウトカム)を、検証3はアドボカシー活動を通じて発生した全体的な価格効果(長期アウトカム)を、それぞれ検証しています。長期効果として、グラフは引用していないものの、もうひとつのアドボカシー効果の方を見ると、全国の学校制服価格は2017年報告書の公表から起算して他の服製品の価格と比べ下落傾向、ただし、他の服製品も下落していますので、差の差(DID)分析をしたところ、報告書公表翌年から4年後に▲5.8%の下落効果が認められています。そして、上のグラフに示したように、提言内容を実施した学校の制服価格は、提言内容を実施していない学校の制服価格に比べて下落傾向をしめし、コチラも差の差(DID)分析で▲6.9%の下落効果があったと指摘しています。上のグラフの方は、提言の実施と未実施の間のランダム化比較実験(RCT)をさらに差の差(DID)分析しているわけです。そして、この提言実施効果がブレザー(上下)1着当たり▲2,000円程度の価格低減効果となったわけです。競争促進の経済効果が価格低下に現れているわけです。

実は、私の勤務する大学の生協はかなり強気な価格設定をしていて、おそらく、競争圧力が小さいためであろうと私は考えています。ただ、今週なって研究セミナーを開催した際に、定年まで勤めていた役所の後輩の研究者に来てもらったのですが、その人は学食メニューは東大生協よりも安いといっていました。さすがに、食材が安価な効果なのだろうか、と想像しています。

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2023年10月26日 (木)

ドラフト会議の結果やいかに?

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本日のドラフト会議の結果です。阪神タイガースの公式サイトから引用しています。
私はまったく詳しくないので適切な評価はできませんが、今年の優勝メンバーにはドラ1トリオがクリンナップを打っていますし、今後に期待したいと思います。

明日から始まる日本シリーズも、
がんばれタイガース!

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+2%超の上昇続く9月の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?

本日、日銀から9月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月と同じ+2.1%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIについても前月と同じ+2.3%の上昇を示しています。ヘッドライン上昇率は8月統計から上昇幅が再加速しています。また、31か月連続の前年比プラスを継続しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、9月2.1%上昇 2カ月連続で2%超
日銀が26日発表した9月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は109.5と、前年同月比で2.1%上昇した。上昇幅は8月から横ばいで、2カ月連続で2%台となった。リース・レンタルなどで仕入れ価格や人件費の上昇をサービス価格に反映する動きがみられた。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格変動を表す。指数は31カ月連続で前年同月を上回った。調査対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは96品目、下落は25品目だった。
リース・レンタルは前年同月比で3.5%上昇した。建設現場の資材などの仕入れ価格が上昇した分をサービス価格に転嫁する動きがみられた。情報通信も上昇した。システムエンジニア(SE)の人件費が上昇した分をソフトウエアの価格に反映した。
運輸・郵便は前年同月比0.6%上昇で、前月と横ばいだった。修学旅行など人流回復の影響で国内航空旅客輸送が上がったが、前年にウクライナ侵攻の影響などで運賃が高騰していた反動で、外航貨物輸送の価格が下落した。

コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業物価指数(PPI)の上昇トレンドは2022年中に終了した可能性が高い一方で、企業向けサービス物価指数(SPPI)はまだ上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

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上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率の昨年2022年以降の推移は、2022年9月に上昇率のピークである+2.1%をつけてから、ジワジワと上昇率は低下し今年2023年に入って6月統計で+1.5%まで縮小した後、先月7月統計で+1.7%と上昇幅を拡大し、本日公表された9月統計では前月と同じ+2.1%の上昇率を記録しています。8月統計から再加速したとはいえ、大雑把な流れとしては、+2%ほどの上昇率が継続しているようにも見えます。もちろん、+2%前後の上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性が高い、と私は受け止めています。ただし、インフレ率は高いながら、物価上昇がさらに加速するわけではないんではないか、と私は考えています。ヘッドラインSPPI上昇率にせよ、国際運輸を除いたコアSPPIにせよ、日銀の物価目標とほぼマッチする+2%程度となってい流転は忘れるべきではありません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて9月統計のヘッドライン上昇率+2.1%への寄与度で見ると、宿泊サービスや機械修理や労働者派遣サービスなどの諸サービスが+0.92%ともっとも大きな寄与を示し、ほかに、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスといった情報通信が+0.55%、リース・レンタルが+0.28%、その他の不動産賃貸や不動産仲介・管理や事務所賃貸などの不動産が+0.17%などとなっています。加えて、SPPI上昇率再加速の背景となっている石油価格の影響が大きい道路旅客輸送や国内航空旅客輸送や鉄道旅客輸送などの運輸・郵便が+0.11%のプラス寄与となっています。寄与度ではなく大類別の前年同月比上昇率で見ても、運輸・郵便は9月統計では+0.6%と、先月8月統計から上昇に転じています。

最後に、引用した記事にみられる通り、資材などの仕入れ価格や人件費の上昇分を価格転嫁する動きが広がっている点は、ある意味で、健全な経済活動といえます。少なくとも、下請けの中小企業がコストアップ分の価格引上げを納入先の大企業に拒否されるよりは価格転嫁できる方が経済的には健全である、と私は受け止めています。

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2023年10月25日 (水)

リクルートによる9月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給やいかに?

来週火曜日10月31日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートによる9月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。参照しているリポートは以下の通りです。計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、以下の出典に直接当たって引用するようお願いします。

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いつものグラフは上の通りです。アルバイト・パートの募集時平均時給の方は、前年同月比で見て、今年2023年に入って1月には+2.9%増の伸びを示していましたが、8月+1.9%増に続いて9月も+1.8%増にとどまり、2か月連続で+2%割れとなっています。+3%近い消費者物価指数(CPI)の上昇率には追いついておらず、実質賃金はマイナスと想像されますので、もう一弾の伸びを期待してしまいます。でも、時給の水準を見れば、一昨年2021年年央からコンスタントに1,100円を上回る水準が続いており、かなり堅調な動きを示しています。他方、派遣スタッフ募集時平均時給の方も9月には+1.4%増と8月の+2.4%増から大きく伸びを縮小させています。
まず、三大都市圏全体のアルバイト・パートの平均時給の前年同月比上昇率は、繰り返しになりますが、9月には前年同月より1.8%、前年同月よりも+20円増加の1,161円を記録しています。職種別では、「フード系」(+49円、+4.6%)、「販売・サービス系」(+41円、+3.8%)、「製造・物流・清掃系」(+27円、+2.4%)で上昇を示した一方で、「事務系」(▲3円、▲0.2%)、「専門職系」(▲34円、▲2.5%)、「営業系」(▲85円、▲6.6%)、では減少しています。なお、地域別では関東・東海・関西のすべての三大都市圏で前年同月比プラスとなっています。
続いて、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、9月には前年同月より+1.4%、+23円増加の1,635円になりました。職種別では、「IT・技術系」(+83円、+3.8%)、「製造・物流・清掃系」(+47円、+3.5%)、「営業・販売・サービス系」(+39円、+2.7%)、「オフィスワーク系」(+28円、+1.9%)、「クリエイティブ系」(+17円、+0.9%)、「医療介護・教育系」(+11円、+0.8%)、とすべてプラスとなっています。「製造・物流・清掃系」で過去最高額を更新しており、半導体不足などの供給制約が緩和された自動車などの製造スタッフや、半導体エンジニアなど関連職種のニーズが増加しているようです。なお、地域別でも関東・東海・関西のすべての三大都市圏でプラスとなっています。

アルバイト・パートや派遣スタッフなどの非正規雇用は、従来から、低賃金労働とともに「雇用の調整弁」のような不安定な役回りを演じてきましたが、ジワジワと募集時平均時給の伸びが縮小しています。我が国景気も回復・拡大局面の後半に差しかかり、雇用の今後の動向が気がかりになり始めるタイミングかもしれません。

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2023年10月24日 (火)

10月から始まったインボイスへの対応やいかに?

やや旧聞に属するトピックながら、10月13日付けで帝国データバンクから「インボイス制度に対する企業の対応状況アンケ―ト」の結果が明らかにされています。インボイス制度に順調に対応できている企業はわずかに65%ほどで、逆に、懸念が残る企業が90%を超えるなど、業務負担の増加が重くのしかかっている現状が垣間見えます。まず、リポートからアンケート結果(要旨)を3点引用すると以下の通りです。

アンケート結果(要旨)
  1. インボイス制度に、「順調に対応できている」企業は3社に2社(65.1%)。他方、「対応がやや遅れている」は3割
  2. 制度の導入によって、現在または今後に「懸念事項あり」の企業は9割にのぼる
  3. 懸念事項は、「業務負担の増加」が7割でトップ。 次いで「社内での理解・連携不足」と「仕入先への対応」が続く

私自身は明確にインボイス制度の導入には反対であり、このアンケート調査結果にも大いに注目していますので、グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートから インボイス制度対応状況 のグラフを引用すると上の通りです。このアンケート調査の実施時期は、2023年10月6日~11日であり、すでに実施が開始されているわけですが、「順調に対応できている」との回答はわずかに65.1%しかありません。当然ながら、日本企業の特徴のひとつとして規模別格差があり、、「順調に対応できている」企業の割合は「大企業」が71.5%に対し「中小企業」は64.2%、「対応がやや遅れている」においては「大企業」24.4%に対し「中小企業」29.1%、となっています。企業を対象にしたアンケート調査ですので、おそらく、フリーランスをはじめとする個人は対象に含まれておらず、フリーランスの個人は中小企業と比べてもさらにインボイス対応に苦労しているか、あるいは、インボイス対応を諦めて増税を甘受するか、のどちらかなのではないか、と私は受け止めています。いずれにせよ、税務署がラクをするために納税者に負担を押し付けているとともに、結果的なのかもしれませんが、少なからざる一定部分の企業や個人が実質増税となっているのだろうと想像します。

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続いて、リポートから インボイス制度導入にともなう懸念事項 のグラフを引用すると上の通りです。グラフは引用しませんが、そもそも、「懸念事項あり」が91.0%に達しています。「懸念事項なし」はわずかに6.0%にしか過ぎません。その「懸念事項」の中の最大のポイントは「業務負担の増加」です。あまりにも当然です。加えて、「社内での理解・連携不足」と「仕入先への対応」も50%を超えています。私はほとんどタクシーには乗りませんが、何かの報道で「このタクシーはインボイスに対応していません」という表記のある車を見たことがあります。こういったインボイス未対応のサプライヤーへの対応も無視できないことと思います。繰り返しになりますが、税務当局がラクをするために納税者へ負担を押し付けているとしか見えません。でも、一般の自然人もそうですし、法人である企業にとっても、警察とともに税務署はもっとも「コワモテ」の当局のひとつなのかもしれませんし、反論しにくい可能性が十分あります。

最後に、フリーランスについては、総理大臣官邸に置かれている未来投資会議の構造改革徹底推進会合「フリーランス実態調査結果」が公表されており、2018年から2020年時点で500万人近くがフリーランスとして働いていると公表されています。あたかも、政府のお墨付きの「将来の働き方」とか、あるいはまるで「推奨」するがごとくに取り上げられていると見る向きも少なくありません。しかしながら、かつての「派遣社員」と同じで、政府のオススメっぽかった派遣社員として働くことが、現在の時点で、派遣社員以外の雇用形態も含めて、非正規雇用がどうなっているかを直視すれば、常識ある社会人であれば問題点が理解できると思います。国民は決して政府に騙されてはいけません。最後の最後に、繰り返しになりますが、私は明確にインボイス制度には反対、大反対です。

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2023年10月23日 (月)

日銀「さくらリポート」に見る地域経済やいかに?

先週木曜日の10月19日、日銀から2023年10月の「地域経済報告 (さくらリポート)」が公表されています。まず、日銀のサイトから各地域の景気の総括判断を引用すると以下の通りです。

各地域の景気の総括判断
海外経済の回復ペース鈍化や物価上昇の影響を受けつつも、すべての地域で、景気は持ち直し、ないし、緩やかに回復している。

続いて、各地域の景気の総括判断と前回との比較のテーブルは以下の通りです。

 【2023年7月判断】前回との比較【2023年10月判断】
北海道緩やかに持ち直している持ち直している
東北一部に弱さがみられるものの、基調としては緩やかに持ち直している持ち直している
北陸持ち直している緩やかに回復している
関東甲信越持ち直している緩やかに回復している
東海持ち直している持ち直している
近畿一部に弱めの動きがみられるものの、持ち直している一部に弱めの動きがみられるものの、持ち直している
中国緩やかに持ち直している緩やかに回復している
四国緩やかに持ち直している持ち直している
九州・沖縄緩やかに回復している緩やかに回復している

見ての通りで、「各地域の景気の総括判断」に引用した通り、全国多くの地域で景気の総括判断が引き上げられています。東海と近畿と九州・沖縄の3ブロックは7月から横ばいですが、ほかの6ブロックは景気判断が引き上げられています。内需も外需もそれなりの回復を見せた結果であると私は受け止めています。需要サイドでは、消費については食料品などのインフレの影響は無視できないものの、インバウンド需要の本格化に伴う拡大効果もあり、飲食・宿泊といったサービスを中心に回復を見せています。また、投資は人で不足に加えて、企業の収益回復や脱炭素・DXの機運上昇が追い風となって増加しています。また、供給サイドでは、生産については金融引締めによる海外経済の減速の影響はあるものの、自動車の半導体などの供給制約の緩和などを受けて、横ばい圏内で推移しています。
先行きについては、NHKの報道で見かけたのですが、日銀大阪支店長が「この先どうなるかは、物価の上昇を上回って雇用と所得環境の改善が続くのかに大きく依存してくると思う。」と発言しているようです。私も同感です。

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2023年10月22日 (日)

大学院の留学生といっしょに時代祭に行く

今日は午後からお出かけして、大学院に来ている留学生とともに時代祭を見に行きました。
時代祭は、葵祭、祇園祭と並ぶ「京都三大祭」のひとつで平安神宮の大祭です。平安神宮の創建と平安遷都1100年を奉祝する行事として、1895年明治28年に始まりました。第1回目だけは10月25日に行われましたが、翌年からは、794年延暦13年に桓武天皇により長岡京から平安京に遷都された日を、いわば「京都の誕生日」と見なして、10月22日に行われるようになっているそうです。
行列は正午に京都御所から出発し、堺町御門を出て丸太町通りを西へ進み、烏丸通りを南下して御池通りから東に進み、京都市役所前を通って河原町通りから三条通りをさらに東へ進み、東山通りを越えて神宮道から北上して平安神宮に入ります。我が一行は三条通りの南側、神宮道から少し東山通りに寄ったあたりに陣取ります。せっせと写真や動画を撮っていました。暑い盛りの祇園祭も京都らしくていいのですが、やっぱり、時代祭は行列で歩いている人の服装が一大スペクタクルで、とってもビジュアルに見栄えがよく、留学生諸君には評判がよかった気がします。
でも、いつも感じることながら、こういった伝統的な行事を外国人に説明するのは難しいです。日本人で大学院に進学するくらいの知性であれば、「錦の御旗」といえば何の説明もなく理解できると思いますが、外国人であればそうはいきません。
下の写真は、錦の御旗と太閤さんです。

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2023年10月21日 (土)

今週の読書は今年のノーベル経済学賞を受賞したゴールディン教授の学術書をはじめとして計7冊

今週の読書感想文は以下の通り計7冊です。
まず、クラウディア・ゴールディン『なぜ男女の賃金に格差があるのか』(慶應義塾大学出版会)は、今年2023年のノーベル経済学賞を受賞したエコノミストによる学術書であり、米国における大卒女性の100年間のキャリアと家族の歴史を分析しています。斎藤幸平+松本卓也[編]『コモンの「自治」論』(集英社)は、コモンの再生や拡大とともに、単なる受益者ではなく当事者としての自治を拡大する必要性などを論じています。三浦しをん『墨のゆらめき』(新潮社)は、ともに30代半ばで独身の実直なホテルマンと奔放な書道家の交流を綴っています。牧野百恵『ジェンダー格差』(中公新書)は、マイクロな労働経済学におけるジェンダー格差の分析結果の学術論文をサーベイしています。竹信三恵子『女性不況サバイバル』(岩波新書)は、コロナ禍における女性の経済的な苦境に焦点を当てつつ解決策を模索しています。夕木春央『絞首商會』(講談社文庫)は大正期を舞台にした無政府主義者によると見られた殺人事件の謎を解き明かします。夕木春央『サーカスから来た執達吏』(講談社文庫)は、借金返済のために華族の財宝を探すミステリです。
ということで、今年の新刊書読書は交通事故前の1~3月に44冊、退院した後、6~9月に104冊を読み、10月に入って先週までに13冊、そして、今週ポストする7冊を合わせて168冊となります。今年残り2月余りで、どうやら、例年と同じ年間200冊の新刊書読書ができるような気がしてきました。

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まず、クラウディア・ゴールディン『なぜ男女の賃金に格差があるのか』(慶應義塾大学出版会)を読みました。著者は、米国ハーバード大学の経済学の研究者であり、今年のノーベル経済学賞を受賞しています。英語の原書のタイトルは Career and Family であり、2021年の出版です。本書では、コミュニティ・カレッジのような短大ではなく4年制の大学卒の学士、あるいは、それ以上の上級学位を持つ女性を対象にして p.30 の示してあるように、女性の大学卒業年として1900-2000年の100年間を取り、この期間における女性の職業キャリアと家庭の歴史を振り返りつつ、男女間の賃金格差を論じています。学術的な正確性ではなく、ふたたび大雑把にいって、キャリアは職=ジョブと職=ジョブをつなぐものくらいのイメージです。そして、タイトルにある "Family" は「家族」というよりは「家庭」です。その際、この100年間を大雑把に20年ごとの5期に分割しています。第1期、すなわち、1900年から1920年ころに大学を卒業した女性たちであり、家庭かキャリアか、どちらか一方を選ぶ選択に迫られていました。キャリアを選ぶ大卒女性は結婚して家族を持つことを諦めざるを得ないケースが少なくなかったわけです。そして、第2期の1920年から1945年の大学を卒業したグループは、卒業後にキャリアを始めるものの、日本の寿退社に相当するマリッジ・バーによりキャリアを諦めざるを得ないことになります。第3期の1946年から1965年に大学を卒業した女性たちは、米国人の早婚化に伴って早くに結婚し出産を経て、子供の手がかからなくなった段階でキャリアを積む世界に入りました。第4期の1960年代半ばから1970年代後半に大学を卒業した女性たちは、女性運動が成熟したころに成人し、避妊薬であるピルが利用可能になり、キャリアを積んでから家庭を持ちました。そして、第5期の1980年ころ以降に大学を卒業した女性たちは、キャリアも家庭も持つ一方で、結婚と出産は遅らせています。ここで分析対象になっているのが、大卒ないし上級学位を保持する女性ですので、日本的なサラリーマンとは少し違うキャリアが垣間見えます。職業としては、医師、獣医師、会計士、コンサルタント、薬剤師、弁護士などが取り上げられています。でも、こういった職業キャリアにはだいたい可能性という観点で大きな違いがあり、弁護士業務では弁護士間での代替可能性が低く、例えば、極端な例ながら、裁判の途中で担当弁護士が交代するケースは考えにくいわけです。したがって、長時間労働は時間当たりの賃金単価を引き上げることになります。他方で、薬剤師などは代替可能性が高く、誰が処方しても同じ薬が販売されるわけで、賃金単価は労働時間に影響を受けません。そして、現在までの経済社会におけるジェンダー規範により、男性が長時間労働を引き受け、女性が短時間労働で家庭内の役割を受け持つとすれば、弁護士では男性の賃金単価が女性よりも高くなるわけですし、薬剤師では賃金単価は男女間で変わらないものの、労働時間の長さにより一定期間で受け取る週給とか月給は男性の方が高くなりがちになります。といったような分析が明らかにされています。ただ、私が大きな疑問を感じているのは、「男性は外で長時間働き、女性は家庭内の役割を引き受ける」というジェンダー規範を前提にしている点です。このジェンダー規範を前提にすれば、多少のズレはあっても、ほぼほぼ男女間に賃金格差が生まれそうな気がします。ですので、この根本となるジェンダー規範がいかに形成され、いかに克服されるべきか、を分析し議論しなければならないのではないか、と思うのですが、いかがなものでしょうか。例えば、人種差別が存在するのを前提として白人と黒人の賃金格差を論じるのは適当かどうか、私には疑問です。歴史的な観点で女性のキャリアと家庭を分析する視点は大いに啓発されましたが、ノーベル経済学賞という看板を外すと、マイクロな労働経済学という私の専門外である点を考慮しても、やや物足りない読書でした。

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次に、斎藤幸平+松本卓也[編]『コモンの「自治」論』(集英社)を読みました。編者は、『人新世の「資本論」』で一躍有名になった経済思想家、東大の研究者と精神科医です。本書は7章構成であり、編者を含めて7人が執筆しています。収録順に、第1章 白井聡: 大学における「自治」の危機、第2章 松村圭一郎: 資本主義で「自治」は可能か?、第3章 岸本聡子: <コモン>と<ケア>のミュニシパリズムへ、第4章 木村あや: 武器としての市民科学を、第5章 松本卓也: 精神医療とその周辺から「自治」を考える、第6章 藤原辰史: 食と農から始まる「自治」、第7章 斎藤幸平: 「自治」の力を耕す、となります。バラエティに富んでいて私の専門外の分野も多く、それだけに勉強にもなりますが、レビューに耐える見識に不足する分野もあります。まず、本書のタイトルでカギカッコつきになっている「自治」とは何か、については、第6章で指摘されている定義めいたものを参考に、「受益者」から「当事者」のの側面を持つようになり、それを不断に維持していくプロセス、というふうに私は解釈しています。でも、現在の日本に民主主義下でも投票というプロセスを通じて、統治のシステムに何らかのコミットをしている、という意見もあるかもしれませんから、そのコミットをさらに拡大するプロセス、ということなのだろうと思います。ですから、もっと言葉を代えれば、「統治」を政治的なものだけでなく、より幅広いコンテクストで考えることを前提に、受動な受け身一方の統治される側から何らかの能動的な要素を加え、それを進め拡大するプロセス、ということなのだと思います。その典型が、言葉としても人口に膾炙している地方自治であり、東京都の杉並区長に当選したばかりの岸本区長が担当している第3章によく現れています。ただ、私は大きく専門外なので、例えば、第2章で論じられているようなテーマで、資本主義のもとで自治が可能か、不可能かについては見識を持ちません。判りません。今までは、コモンの拡大がひとつの目標のように見なされてきていた議論が、1ノッチ段階を上げてコモンをいかに自治するか、という議論が始まった点は私は大いに歓迎します。私の専門分野に引き寄せると、18-19世紀のイングランドにおける(第2次)エンクロージャーが私的所有権を確立して、希少性ある資源の効率的活用を通じて産業革命を準備した、という制度学派的な経済史に対して、生産手段の国有化やプロレタリアート独裁といった大昔の教条的マルクス主義から脱して、コモンを量的に拡大するとともに、さらに、その質的な向上のための自治を模索するという点は大いに見込みがある気がします。その理由のひとつは、現在の政治的な運動が余りに選挙に重点を置きすぎていると私が感じているからです。もちろん、これまた大昔の教条的マルクス主義のように暴力革命を目指すのは、明確にバカげていますし、選挙を通じた政権交代よりもさらに実現の確率が低く、結果の期待値が悪いのは判り切っています。それでも、選挙を通じた政権交代だけに望みを託して、その昔の統一教会みたいにせっせと選挙活動に邁進する、というのも、一方のあり方としてそれなりに重要性は理解はするものの、それだけではなく、車の両輪のようにコモンを量的に拡大し、そして同時に質的な向上を目指して自治への参加を促す大衆的な運動、を車の両輪として推進するのが必要と考えます。そして、この政治レベルの車の両輪の基礎にあるのが経済であり、第7章の p.271 にあるように、「<コモン>による経済の民主化が政治の民主化を生む」という点を忘れてはなりません。

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次に、三浦しをん『墨のゆらめき』(新潮社)を読みました。本書はAmazon Audibleでも提供されています。著者は、直木賞作家であり、私の大好きな作家の1人です。本書の登場人物は主要に2人であり、2人とも30代半ばの独身男性で、主人公の続は真面目で実直なホテルマン、規模は小さいながらアットホームな三日月ホテルに勤務しています。もうひとりは役者のようなイケメンで、自由奔放な芸術家の書道家の遠田です。書道教室を開いています。舞台は東京です。主人公の続がホテルのバンケットの招待状などの筆耕を依頼するために、下高井戸にある遠田の家を夏の暑い盛りに訪れるところから物語が始まります。遠田の家は、2階が生活空間で、1階は書道教室にもなっていて、小5男子の三木から手紙の代筆を頼まれ、続が文案を練って遠田が書き起こします。そうこうしてい、続の方はビジネスライクに筆耕のお仕事などを進めようとするのですが、遠田の方は手紙の代筆などで筆耕のお仕事を超えた個人的な付き合いを深める意図があるのか、続が遠田の書道教室を去るたびに「また来いや」と声をかけます。続も遠田のこういった姿勢に引かれてお付合いの度合いが深まるわけです。しかし、ラストには遠田の筆耕のお仕事について三日月ホテルから登録を解除せねばならない、という事態に立ち至ります。遠田が暴力団の解散式の招待状や席札などの筆耕を引き受けたため、反社との交際者はホテルの仕事ができないわけです。どうして、遠田が反社の仕事を引き受けたかは、読んでいただくしかありませんが、この作者は直木賞受賞作品の『まほろ駅前多田便利軒』でも星という若い反社、ないし、半グレを登場させています。この作者らしい明るくコミカルなテンポで物語が進みながら、ある意味で、ラストはとても悲しいストーリーです。しかし、いいお話です。多くの方にオススメできます。ちなみに、私は東京にいたころは書道を習っていました。段位には届きませんでしたが、ジャカルタに海外赴任するまで、それなりに熱心に杉並の大宮八幡近くのお教室に通っていました。私の師匠は、もうとっくに亡くなっていますが、警察官ご出身で「xx捜査本部」とかの木製の看板に揮毫していたりしたそうです。警察官を退官してから、パートタイムで都立高校の書道の教員をしていて、筆耕の典型である卒業証書の宛名を書いていた経験をお聞きしたことがあります。400-500人ほどの卒業生の名前を筆耕するわけですが、60歳を過ぎてなお初めて書く漢字が必ず年に1文字や2文字はあった、ということです。いうまでもなく、筆耕は誰にでも読めなければなりませんから楷書で書く必要があり、その上に、字の美しさが問われます。本書で出てくる範囲では、私は欧陽詢の「九成宮醴泉銘」をお手本に、毎週土曜日の午後にお稽古に励んでいました。なお、私の姉弟子、という言葉があるのかどうかは知りませんが、師匠に先に弟子入りしていた女性が amebloで「筆耕房」というブログを開設しています。筆耕にご興味ある向きはご参考まで。

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次に、牧野百恵『ジェンダー格差』(中公新書)を読みました。著者は、アジア経済研究所の研究者です。本書では、マイクロな労働経済学分野におけるジェンダー格差の学術論文をサーベイしています。当然のように、今年2023年のノーベル経済学賞を受賞したゴールディン教授の研究成果も含まれています。私はマイクロな労働経済学、しかも、ジェンダー格差についてはまったく専門外ですが、一応、マクロの賃金決定について定番のミンサー型の賃金関数で分析した研究成果「ミンサー型賃金関数の推計とBlinder-Oaxaca分解による賃金格差の分析」というタイトルの学術論文は書いていますし、その中で男女間の格差を含めて、いくつかの賃金格差を分析しています。ただ、本書でサーベイしているような精緻なミクロ経済学の実証分析は専門外です。ということで、本書では、例えば、これもノーベル経済学賞を受賞したバーナジー教授とデュフロー教授で有名になったランダム化比較試験(RCT)、自然実験、あるいは、差の差分析(DID)などの手法により分析されたジェンダー格差の研究結果を取りまとめています。本書で指摘しているように、マイクロな実証分析においては、一般的な世間の常識とは大きく異なる結果が出たりすることがあります。マクロ経済学では、そういった突飛な結果は少ない、というかほとんどないのですが、マイクロな実証研究ではいくつか見られます。でも、本書ではそういった意外性ある研究成果はほとんどなく、安定感ある実証結果を取りそろえています。ひとつ注目していいのは、専門外ながら、私でも知っていたことですが、ゴールディン教授の『なぜ男女の賃金に格差があるのか』が経済社会のジェンダー規範を前提に議論を進めていた点を物足りなく感じていたところ、本書では、アレシーナ教授らの鋤仮説をジェンダー規範の起源として提示しています。すなわち、定住しての農耕生活に人類が入った段階で、土地が硬くて鍬では耕せない地域では鋤(plow)を使うわけですが、鋤で深く耕すためには力がいるために男性優位社会になった、という仮説です。ただし、この仮説については、私は疑わしいと考えています。どうしてかというと、この仮説が正しいのであれば、土地の硬い地域ほど男性優位な経済社会の規範が生まれているハズなのですが、おそらく欧州の中でももっとも土地の硬い北欧でジェンダー格差が小さいからです。また、私はマイクロな実証分析は、経済学でいうところの一般均衡的、というか、長期的な結果については不得手である、と感じていたのですが、不勉強にして、そうでもないという点は勉強になりました。例えば、ごく単純に、賃金上昇に伴う女性の労働参加の増加は、むしろ、家庭における家事労働を主婦から女児に移行させ、長期的には女性に対するジェンダー格差是正にはつながらない、などという例です。こういった長期的な効果のほか、もちろん、女性の労働参加が進むとどうなるのか、ステレオタイプな思い込みがジェンダー格差に及ぼす影響、学歴と結婚や出産の関係、避妊薬の普及や妊娠中絶の合法化による女性の性や結婚などに対する決定権の強化が何をもたらすのか、などの分析結果がサーベイされています。最後の方で、日本は産休や育休などの制度は立派に整備されているが、利用が低調でジェンダー格差が大きい、といった議論がなされています。

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次に、竹信三恵子『女性不況サバイバル』(岩波新書)を読みました。著者は、和光大学の名誉教授ですが、朝日新聞記者を経験したジャーナリストと考えた方がいいかもしれません。本書では、女性不況、すなわち、世界的にもshe-cessionと呼ばれた2020年からのコロナ禍の不況を鋭い取材により浮き彫りにしています。そして、コロナ禍の女性の苦境をもたらした要因について、「6つの仕掛け」として、夫セーフティネット、ケアの軽視、自由な働き方、労働移動、世帯主義、強制帰国を第1章から第6章まで、綿密な取材に基づいて詳細な議論を展開しています。この6つの仕掛けはともかく、世界的にもコロナ禍がもたらした経済不況が女性に重くのしかかったということは疑いなく、政府も「男女共同参画白書」令和3年版の冒頭の特集などで認めています。そして、特に日本の場合、世界経済フォーラムで明らかにしているジェンダーギャップ指数で低位に沈んでいることに典型的に現れているように、男女格差が依然として大きいことから、おそらく、先進各国の中でも日本の女性が特に大きなダメージを被ったことに関しては疑いありません。本書でも指摘しているように、日本のジェンダー格差については、高度成長期から女性労働を補助的なものとしてしか見ず、学生アルバイトや高齢者の定年後雇用とともに低賃金で酷使してきました。ですから、主婦パート、学生アルバイト、高齢者の定年後雇用、の3つの雇用形態は景気循環における雇用の調整弁と見なされ、低賃金かつ不安定な雇用を形成し、さらに、1990年代からはこれに派遣労働が加わって、これらの非正規雇用が日本経済停滞の最大の要因のひとつと私は考えています。ただ、本書の優れている点として、単に女性の悲惨な現況という取材結果を並べるだけではなく、第7章などで新しい女性労働運動の可能性が上げられます。加えて、女性労働だけではなく、性搾取に反対するcolaboなどの運動との連帯の可能性も示唆されているのも重要な視点です。コロナ禍の中で家庭に閉じ込められかねず、また、著者の主張する「仕掛け」によって声を上げることがなかなかできずにいる女性たちへの連帯が明らかにされ、実際に行動に立ち上がる必要性も強調されています。ともすれば、選挙では過半数を制する必要があるように見えますが、3.5%ルールで有名なチェノウェス教授の『市民的抵抗』にあるように、決してそれほど多数の動員ができなくても、自覚的な3.5%の人々がいれば非暴力で達成できることは少なくありません。大いに期待し、応援すべき方向だと私は考えています。さいごに、本書のサワリの部分はプレジデント・オンラインの『女性不況サバイバル』でも読むことができます。何ら、ご参考まで。

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次に、夕木春央『絞首商會』(講談社文庫)を読みました。著者は、ミステリ作家なのですが、この作品でメフィスト賞を受賞して作家デビューを果たしています。舞台は大正期の東京です。血液学の研究者であり、東京帝国大学の教授であった村山鼓堂博士が自宅の庭先で刺殺されます。ただ、その前に、同居していた、というか、そもそも、この住宅を建てた文化人類学の学者である村山梶太郎博士が死んでいます。コチラは自然死であり、殺人ではありません。この両博士は遠縁に当たります。亡き村山梶太郎博士は、どうやら、無政府主義者の秘密結社である絞首商会のメンバーであったらしいのですが、逆に、被害者の村山鼓堂博士はこの秘密結社を警察に告発する準備をしていたということが判明します。そして、村山鼓堂博士の殺人に関して、容疑者は4人います。被害者の村山鼓堂博士の遠縁にあたり村山邸に同居していた水上淑子、近所に住んでいて亡き村山梶太郎博士と懇意にしていた白城宗矩と生島泰治、そして、これも近所に住んでいて被害者の村山鼓堂博士と懇意にしていた、というか、村山鼓堂博士の妹と結婚している宇津木英夫、となります。しかし、これら容疑者の態度が殺人事件に巻き込まれているにしては、とっても不自然なものでした。すなわち、殺人事件の容疑者としては信じられないくらい、事件の解決に熱心な態度で、その上、自らが犯人であると匂わせるような怪しい振る舞いを示す者までいたりします。そのため、というか、何というか、容疑者の1人ながら被害者の親戚に連なる水上淑子が、探偵として事件を解決するべく、蓮野に依頼をします。蓮野が探偵役で、画家の井口が主人公として主としてワトスン役を務める、ということになりますが、実は、蓮野は秘密結社メンバーと想定されている村山梶太郎博士がご存命のころに、この村山邸に泥棒をするために侵入したりしています。蓮野が事件解明に向けて活動を開始しますが、村山鼓堂博士の死体を発見した村山邸の書生が殺されたりします。あらすじの紹介は、ミステリですのでネタバレなしで概要だけで終わります。2点だけ指摘しておきたいのは、『リボルバー・リリー』と同じでタイトルと本文中の表記が異なります。本文中は「商会」なのですが、タイトルだけが「商會」としています。まあ、表紙に明らかに見えるタイトルはキャッチーなものの方がいい、という判断なのだろうと思います。もうひとつは、私の読み方が浅いのかもしれませんが、探偵役の蓮野のキャラが、単なる厭世家というだけで、イマイチ明確ではありません。ワトソンの井口に対するホームズの役回りなのですから、もう少し気の利いたキャラに仕上げて欲しかった気がします。でも、デビュー作ですから、ということで終わっておきます。

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次に、夕木春央『サーカスから来た執達吏』(講談社文庫)を読みました。著者は、ミステリ作家であり、前作の『絞首商會』でメフィスト賞を受賞して作家デビューを果たしています。最近では、『方舟』なんかの話題作もモノにしています。この作品では、前作でキャラがイマイチ不明確と私が評価した蓮野ではなく、タイトル通りにサーカスにいたユリ子が謎解きの探偵役を務めます。やっぱ、作者の方でキャラを作りかねているかの影響があったりするんでしょうか。それはともかく、本書は明治末期の出来事を冒頭に配した後、基本的に、大正末期、関東大震災から2年後の東京を舞台にしています。物語は冒頭明治末年の出来事を別にして、震災によって多額の借金をこさえて破産寸前の華族の樺谷子爵家に、サーカスから逃げ出したユリ子が、これまた、タイトル通りに借金の取立てに訪れるところから始まります。かつよという名の馬に乗ってユリ子は現れます。ユリ子を送り出したのは晴海商事の晴海社長です。もちろん、華族ながら樺谷子爵に借金を返済できる当てもなく、ユリ子は別の華族の絹川子爵家の財宝を探して借金返済に当てることを提案します。絹川子爵家が関東大震災で一家が死に絶えていえるのです。しかし、この宝探しに協力し、さらに、担保にするために、樺谷子爵家の令嬢である三女の鞠子を担保としてあずかるといって連れ去ります。実は、ユリ子は読み書きができないので、鞠子の助けが宝探しに必要だったりするわけです。そして、鞠子とユリ子による絹川子爵家の財宝を探すことになります。絹川子爵が残したといわれる謎解きの暗号を入手して、暗号解読に挑戦したりします。別に、絹川子爵家の財宝を探している華族の長谷部子爵家や簑島伯爵家との確執・対立があり、鞠子が簑島伯爵家の別荘に監禁されたり、ユリ子と鞠子が人気女優の家にかくまってもらったり、といった事件がサスペンスフルに起こります。最後は、大時代的に名探偵役のユリ子が関係者を一同に集めて謎解きを披露して終わります。ミステリですので、あらすじはこのあたりまでで、私の感想は、『絞首商會』の探偵役である蓮野より、この作品のユリ子の方が大いにキャラが明確に立っているのはいいと思います。ただ、ミステリの醍醐味としては、謎解きそのものに加えて、その謎解きに至った経緯があり、私の読み方が浅かったのかもしれませんが、ユリ子が謎解きに至った経緯が私には十分に理解できませんでした。ホームズの有名な消去法があり、「すべての不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙な事実であっても、それが真実となる」といった趣旨だったと思いますが、こういった真実に至る道筋が不明確です。ひょっとしたら、作者もその点を理解している可能性があり、樺谷子爵家にユリ子を送り出した晴海社長が無条件でユリ子を信頼していたり、あるいは、人気女優と昵懇の仲だったりして、ユリ子の「有能さ」を無理やりに演出しているような気がします。

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2023年10月20日 (金)

広島に3連勝して日本シリーズ進出を決める

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広  島000110000 2100
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これぞ横綱相撲を広島に見せつけて、3連勝で日本シリーズ進出決定でした。
まあ、いろんな見方があるんでしょうし、確かに、CSファイナル3試合とも白熱した好試合でしたが、まあ、広島には悪いのですが、結果は試合をするまでもなく明らかでした。今年のようにセパ両リーグとも優勝チームがブッチギリで優勝した年のクライマックスシリーズは疑問が大きいです。阪神のように優勝チームが2位チームを圧倒すれば、クライマックスシリーズ不要論が出ますし、2位3位のチームが日本シリーズに勝ち上がれば、リーグ優勝の意味が問われます。私は1985年の阪神優勝・日本一の年がそうだったのですが、リーグ優勝チームに直接対戦で勝ち越したチームがあれば、リーグ優勝チームとその勝越しチームとで日本シリーズ進出決定シリーズをやるというシステムはどうなのでしょうか?

日本シリーズも、
がんばれタイガース!

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ほぼ1年ぶりに+3%を下回った9月統計の消費者物価指数(CPI)の動向をどう見るか?

本日、総務省統計局から9月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.8%を記録しています。前年比プラスの上昇は25か月連続ですが、+3%のインフレ率からは上昇幅を縮小させています。+3%を下回るのは1年余りの13か月ぶりだそうですが、日銀のインフレ目標である+2%をを大きく上回る高い上昇率での推移が続いています。ヘッドライン上昇率も+3.0%に達している一方で、エネルギーや食料品の価格高騰からの波及が進んで、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+4.2%で高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価指数、9月2.8%上昇  13カ月ぶり3%下回る
総務省が20日発表した9月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が105.7となり、前年同月比で2.8%上昇した。上昇率が3%を下回ったのは22年8月以来13カ月ぶり。政府による料金抑制策が続く電気・ガス代の低下が全体を押し下げた。
伸び率は8月の3.1%から縮小した。QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は2.7%の上昇だった。前年同月比での上昇は25カ月連続で、日銀の物価目標である2%を上回る水準での推移が続く。
生鮮食品だけでなくエネルギーも除いた総合指数は4.2%上がった。6カ月連続で4%台と高い伸びが続く。生鮮以外の食料の価格上昇が一服し、伸び率は3カ月ぶりに縮小した。
生鮮食品もエネルギーも含めた総合指数は3.0%上昇だった。2カ月連続で伸びが鈍化した。
総務省は電気・ガスの料金抑制策がなければ、生鮮食品を除く総合指数の上昇率は3.8%だったとの試算も示した。政策効果で伸びは1.0ポイント抑えられたとみる。
品目別では電気代が前年同月比で24.6%低下した。比較可能な1971年1月以降で最大のマイナス幅となった。燃料価格が下落していたことから、8月の20.9%から下げ幅が拡大した。都市ガス代も17.5%下がった。
政府が石油元売りなどへの補助を段階的に縮小していたことを受け、ガソリン代は8.7%上昇と8月の7.5%から伸びが加速した。
前年同月に大きく上昇していた反動で、生鮮食品を除く食料の伸びは8月の9.2%から8.8%に縮小した。鶏卵の上昇率は8月の35.2%から31.2%に、冷凍調理コロッケは37.2%から19.1%に縮んだ。ただ、原材料費や物流費の上昇の影響は残る。
新型コロナウイルスの大流行が収まって観光需要が回復したことで宿泊料は17.9%上昇した。一部の通信事業者が料金プランを改定した携帯電話の通信料は10.2%伸びた。

何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.7%の予想でしたので、実績の+2.8%の上昇率と大きな違いは感じられません。まず、エネルギー価格については、2月統計から前年同月比マイナスに転じていて、本日発表された9月統計では前年同月比で▲11.7%に達し、ヘッドライン上昇率に対する寄与度も▲1.00%の大きさを示しています。したがって、9月統計でコアCPI上昇率が8月統計から▲0.2%ポイント縮小した背景はエネルギー価格にあります。すなわち、8月統計ではエネルギーの寄与度が▲0.84%あったのですが、9月統計では▲1.00%へと▲0.17%ポイントの寄与度差となっています。たぶん、四捨五入の関係で寄与度差は寄与度の引き算と合致しません。悪しからず。特に、そのエネルギー価格の中でもマイナス寄与が大きいのが電気代です。エネルギーのウェイト712の中で電気代は341と半分近くを占め、8月統計では電気代の寄与度が▲0.85%あったのですが、9月統計では▲1.01%へと▲0.16%ポイントの寄与度差を示しています。統計局の試算によれば、政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の影響を寄与度でみると、▲0.98%に達しており、この政府対策がほぼほぼダイレクトに寄与しているという結果です。他方で、政府のガソリン補助金が縮減された影響で、6月統計で前年同月比▲1.6%だったガソリン価格は7月統計で+1.1%の上昇に転じた後、8月+7.5%、直近の9月統計では+8.7%と、ふたたび上昇幅を拡大しています。この背景は国際商品市況における石油価格の上昇があります。中東のガザ地区の武力衝突が、今後、どのように推移するかについても予断を許しませんし、食料とともにエネルギーがふたたびインフレの主役となる可能性も否定できません。エネルギーだけではなく、食料についても細かい内訳をヘッドライン上昇率に対する寄与度で見ると、調理カレーなどの調理食品が+0.33%、まだ真夏の暑さに近かった9月の統計ですのでアイスクリームなどの菓子類が+0.29%、メディアでの注目度も高い鶏卵などの乳卵類が+0.26%、トマトなどの生鮮野菜が+0.25%、外食ハンバーガーなどの外食が+0.23%、などなどとなっています。

何度も書きましたが、この物価上昇率は長続きしません。ESPフォーキャストによるエコノミストの予想でもそうです。ですから、石油元売とか電力会社などの大企業の補助金を出すのではなく、消費税減税・消費税率引下げ、あるいは、賃上げを促す政策が必要です。

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2023年10月19日 (木)

黒字を計上した9月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から9月の貿易統計が公表されています。統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見て、輸出額が前年同月比+4.3%増の9兆1981億円に対して、輸入額は▲16.3%減の9兆1357億円、差引き貿易収支は+624億円の黒字を記録しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

4-9月の貿易赤字2.7兆円、75%縮小 輸出が半期で最高
財務省が19日発表した2023年度上期(4~9月)の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆7183億円の赤字だった。赤字幅は前年同期から75.1%縮小した。自動車の輸出が好調で輸出額が半期で過去最高となり、資源高が一服して輸入額が減少した。
22年度上期の貿易収支は10兆9074億円の赤字だった。資源高と円安で、比較可能な1979年度以降で半期では過去最大の赤字となっていた。
23年度上期の輸出額は50兆2418億円で前年同期と比べて1.4%増えた。半期で初めて50兆円を超えた。半導体不足の解消で自動車の輸出額が半期で過去最高の8兆7406億円と37.9%増えた。
地域別で見ると、米国向けは10.6%増の10兆753億円となった。自動車輸出が43.1%増と全体を押し上げた。中国向けは8.2%減の8兆9073億円。このうち食料品の輸出額は1110億円で17.2%減った。日本産水産物の輸入停止措置が影響したとみられる。
輸入額は52兆9602億円で前年同期と比べて12.4%減った。原粗油が28.1%減、液化天然ガス(LNG)が37.9%減となり、輸入額を押し下げた。サウジアラビアやオーストラリアからの輸入減が目立つ。
同じ期間の原粗油はドル建ての平均価格が1バレルあたり83.5ドルと25.4%下がった。為替レートは5.6%円安に振れたが、円建て価格は1キロリットルあたり7万3000円程度で2割下がった。
23年9月単月の貿易収支は624億円の黒字だった。黒字は3か月ぶり。中国向けの食料品の輸出額は98億円と前年同月比で58%減少している。

4~9月の年度半期の記事がほとんどを占めたために、やたらと長くなってしまいましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、▲4000億円の貿易赤字が見込まれていたのですが、大きな額ではないとはいえ、実績の+600億円超の貿易黒字は、予測レンジの上限を超えて少し驚きでした。ただし、季節調整済みの系列の統計で見て、まだ9月統計でも貿易赤字は継続しているわけで、赤字幅は縮小したとはいえ▲4000億円を超えています。季節調整していない原系列の統計で見ても、季節調整済みの系列で見ても、グラフから明らかな通り、輸出額の伸びではなく輸入の大きな減少が貿易赤字縮小の原因です。ただし、注意すべきは為替水準であり、円安については足元でまたまた1ドル150円近くに達しています。ただ、これも、米国の政策金利が次の連邦公開市場委員会(FOMC)で、ひょっとしたら、利上げ見送りの可能性も市場でウワサされていて、さらなる円安方向に大きく動くとも思えません。いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、貿易収支が赤字であれ黒字であれ、輸入は国内生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観する必要はない、と考えています。
9月の貿易統計について、季節調整していない系列の前年同月比により品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が大きく減少しています。すなわち、原油及び粗油は数量ベースで▲16.7%減、金額ベースで▲32.0%減となっています。LNGは原油からの代替が進んだのか、数量ベースでは+3.8%増ながら、金額ベースでは▲44.8%減となっています。価格は国際商品市況で決まる部分が大きく、そこでの価格低下なのですが、少し前までの価格上昇局面でこういったエネルギー価格に応じて省エネが進みましたので、原油からの代替が進んだ可能性のあるLNGは別としても、価格と数量の両面から輸入額が減少していると考えるべきです。ただ、少しタイムラグを置いて、価格低下に見合って逆方向の輸入の増加が先行き生じる可能性は否定できません。エネルギーよりも注目されている食料について、穀物類は数量ベースのトン数では▲4.0%減にとどまっている一方で、金額ベースでは▲16.4%減と数量の減少を超えて輸入額が減少しています。輸出に目を転ずると、輸送用機器の中の自動車は季節調整していない原系列の前年同月比で数量ベースの輸出台数は+19.0%増、金額ベースでは+30.4%増と大きく伸びています。半導体部品などの供給制約の緩和による生産の回復が寄与していますが、日経新聞のニュースによれば、車用ばねを手掛ける取引先の中央発条で発生した爆発事故の影響により今月10月18~20日の間、8工場・計13ラインを止める予定と報じられています。半導体とは別の供給制約が発生しているようです。ジェレミー・リフキン『レジリエンスの時代』で指摘されていたように、効率一辺倒の経営にほころびが出始めている可能性がありますが、エコノミストには予測の難しい経済外要因による生産への影響であると私は受け止めています。自動車や輸送機械を別にすれば、一般機械▲1.4%減、電気機器▲4.0%減と、自動車以外の我が国リーディング・インダストリーの輸出はやや停滞しています。ただし、こういった我が国の一般機械や電気機械の輸出の停滞はソフトランディングに向かっている米国をはじめとする先進各国に起因するものではなく、むしろ、9月統計を見る限り、中国向け輸出額の減少が大きく、前年同月比で▲6.2%減を記録しています。国際通貨基金(IMF)の「地域経済見通し アジア太平洋編」でも指摘しているように、中国の不動産セクターの動向が気にかかるところです。

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2023年10月18日 (水)

ノーベル経済学賞を受賞したゴルディン教授の最新論文やいかに?

ノーベル経済学賞を受賞したゴルディン教授の最新論文が全米経済研究所(NBER)から明らかにされています。引用情報は以下の通りです。

まず、NBERのサイトからAbstractを引用すると以下の通りです。

Abstract
How, when, and why did women in the US obtain legal rights equal to men's regarding the workplace, marriage, family, Social Security, criminal justice, credit markets, and other parts of the economy and society, decades after they gained the right to vote? The story begins with the civil rights movement and the somewhat fortuitous nature of the early and key women's rights legislation. The women's movement formed and pressed for further rights. Of the 155 critical moments in women's rights history I've compiled from 1905 to 2023, 45% occurred between 1963 and 1973. The greatly increased employment of women, the formation of women's rights associations, the belief that women's votes mattered, and the unstinting efforts of various members of Congress were behind the advances. But women soon became splintered by marital status, employment, region, and religion far more than men. A substantial group of women emerged in the 1970s to oppose various rights for women, just as they did during the suffrage movement. They remain a potent force today.

興味深いのは、1905年から2023年までを取りまとめた女性の権利の歴史における155の重大な出来事のうち、45%は1963年から1973年の間に起きている "Of the 155 critical moments in women's rights history I've compiled from 1905 to 2023, 45% occurred between 1963 and 1973." という指摘です。論文 p.48 から Figure 2: Chronology of Critical Moments in US Women's Rights History: 1908 to 2023 を引用すると以下の通りです。

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この時期に多くの画期的な成果が上げられた点については、論文を詳しく読むべきなのでしょうが、私の専門外でマイクロな労働経済学や政治学の分野ですので、この論文でも指摘されている重要な法律の成果を上げておきたいと思います。すなわち、1963年の同一賃金法 Equal Pay Act (EPA)、そしてもうひとつは、1964年の公民権法第7編 Title VII of the Civil Rights Act なのですが、はい、申し訳ありませんが、私には判りません。ということで、ノーベル経済学賞に関連して、ややミーハーに取り上げておきます。

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2023年10月17日 (火)

国際通貨基金(IMF)の地域見通しアジア編やいかに?

先週10月10日にマラケッシュで国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し」が公表されていますが、その後、地域経済見通しも順次明らかにされています。10月13日にはそのアジア編が IMF Blog で出版物に先駆けて明らかにされています。出版物のプレスリリースは10月18日のようです。タイトルは Asia Continues to Fuel Global Growth, but Economic Momentum is Slowing となっています。出版物がまだですが、地域見通しですので日本についても詳しく言及されていますし、IMF Blog のサイトから図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、IMF Blog のサイトから経済成長率見通しの総括表 Economic Forecasts: Asia and the Pacific を引用すると上の通りです。国際通貨基金(IMF)による最新の World Economic Outlook では、世界経済の成長率は2022年実績の+3.5%から、今年2023年+3.0%、来年2024年+2.9%と鈍化すると見込まれていますが、アジア太平洋地域では逆に2022年の+3.9%から、今年2023年には+4.6%に成長が加速すると予想されています。来年2024年には+4.2%とやや鈍化するものの、それでも、2022年実績を上回ると見込まれています。一言でいうと、中国の経済活動再開後の回復と、日本とインドの今年2023年上半期の予想を上回る成長によって説明されます "This is largely explained by the post-reopening recovery in China and stronger-than-expected growth in the first half of the year in Japan and India." ということになります。そして、来年2024年の成長率が鈍化し、さらに、4月時点の見通しよりも引き下げられたのは、東南アジアや日本などにおける世界経済の減速に伴う外需の停滞と、中国での不動産投資の低迷を一部反映している "reflecting weaker external demand as the global economy slows, such as in Southeast Asia and Japan, and faltering real estate investment in China." という理由によります。

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続いて、IMF Blog のサイトから Prices back on track のグラフを引用すると上の通りです。明らかに、アジア太平洋地域におけるインフレは世界的に見て安定しているといえ、中央銀行の物価目標から大きく乖離することはありませんでした。特に、中国のインフレ率は目標を下回っており、不動産セクターからのストレスが深刻化する中で需要が低迷しているためである "inflation in China is below target and-with demand sluggish amid deepening stress emanating from the property sector" と指摘しています。

すでに公表されている「世界経済見通し」の地域版のサブセットなものですから、サラッと読んでしまっていますが、やっぱり、アジア太平洋地域では中国の不動産セクターの動向が気にかかる、というのは多くのビジネスパーソンやエコノミストの感じているところではないでしょうか。

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2023年10月16日 (月)

プロ野球の阪神グッズはアイテムが多い上に安価で買える?

この土日の週末でCSファイナルの対戦相手も広島カープと決まり、ポストシーズン試合の応援に熱が入り始めるところですが、10月10日付けの東洋経済オンラインで「『プロ野球グッズ』安い球団、高い球団の意外な差」という記事を見かけました。我が阪神タイガースの応援グッズはアイテム数が多い上に、やや価格もお安くなっている、という結果が示されています。
記事から引用すると、「そもそも阪神のオフィシャルグッズのアイテム数はハンパなく多い。王道のレプリカユニフォームやタオルのほか、カー用品、ペット用品、浴衣にアウトドアグッズ、はたまた酒やらそうめんやら、なんにでもタイガースのロゴや虎印がついている。さすが球界一の商売上手だ。」ということで、価格もレプリカユニフォームと選手名入りタオルと応援用バットの3点セットの合計でセ・リーグの6球団は以下の通りです。やっぱり、最安値は阪神のようです。

1 阪神タイガース
9800円
2 広島東洋カープ
1万0250円
3 東京ヤクルトスワローズ
1万1300円
4 中日ドラゴンズ
1万2450円
5 横浜DeNAベイスターズ
1万2500円
6 読売ジャイアンツ
1万9990円

これら3点セットに加えて、「応援グッズではないが、球場に行くならチケットホルダーも揃えたい。こちらはやはり阪神が最安で1080円、他は1200~1600円ほど。」というのも紹介されています。ただ、3点セットに戻って、ユニフォームはホームとビジターで違っていますし、イベント向けのユニもあり、それなりに出費がかさむ可能性も同時に指摘されています。したがって、というわけでもありませんが、私はユニはまったく持っていなくて、応援用バットだけです。この応援グッズでCSファイナルから、たぶん、日本シリーズまでのポストシーズン試合の応援に励みたいと思います。一応、経済評論のブログに分類しておきます。

CSファイナルも、日本シリーズも、
がんばれタイガース!

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2023年10月15日 (日)

Osaka Jazz Channel による Cheese Cake を聞く

お気に入りの Osaka Jazz Channel にアップされている Cheese Cake です。食べる方ではなくジャズの曲名です。たぶん、デクスター・ゴードンの作曲なのだと思います。というのも、有名なのは1962年に録音されたアルバム GO の冒頭のデクスター・ゴードンによる演奏だからです。私もこのアルバムは持っています。なお、 GO のピアノはソニー・クラークが弾いていて、まあ、何と申しましょうかで、テナー・サックスも、ピアノも、なかなか、この Osaka Jazz Channel の演奏と比較するのは難しい気がします。でも、この曲も、明らかに昼間に陽の高いうちに聞くべきかと思うと疑問で、やっぱり、深夜の遅い時間によく似合う曲なんだろうという気がします。
最後に、この演奏のパーソネルは以下の通りです。

Tenor Sax
里村稔 Minoru Satomura
Piano
祖田修 Osamu Soda
Bass
光岡尚紀 Naoki Mitsuoka
Drums
久家貴志 Takashi Kuge

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2023年10月14日 (土)

今週の読書は経済史の学術書2冊をはじめとして計6冊

今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、マーク・コヤマ & ジャレド・ルービン『「経済成長」の起源』(草思社)では、先進国だけとしても、世界の多くの国が豊かになった歴史をひも解き、まだ豊かになっていない国の分析を展開しています。玉木俊明『戦争と財政の世界史』(東洋経済)は、戦費を調達しては平和を取り戻して公的債務を返済するという財政と戦争の繰り返しの歴史を議論しています。笹尾俊明『循環経済入門』(岩波新書)は、単なる廃棄物処理ではなく、循環型経済への転換について経済学的な分析を加えています。村上靖彦『客観性の落とし穴』(ちくまプリマー新書)では、客観的あるいは数値的なエビデンスを求める姿勢が困窮者への支援の抑止につながりかねないリスクを考察しています。小川和也『人類滅亡2つのシナリオ』(朝日新書)は、AIと遺伝子編集というホモサピエンス滅亡につながるリスクを論じています。潮谷験『スイッチ』(講談社文庫)では、「純粋の悪」が存在するかどうかを検証しようとするマリスマ心理コンサルタントの実証実験を取り上げたミステリあるいはホラー小説です。
ということで、今年の新刊書読書は交通事故前の1~3月に44冊、その後、6~9月に104冊を読み、10月に入って先週の7冊と今週ポストする6冊を合わせて161冊となります。今年残り10週間で、ひょっとしたら、例年と同じ年間200冊の新刊書読書ができるかもしれません。

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まず、マーク・コヤマ & ジャレド・ルービン『「経済成長」の起源』(草思社)を読みました。著者たちは、いずれも米国にあるジョージ・メイソン大学とチャップマン大学の研究者です。専門は経済史や経済発展史です。本書は世界経済がテイクオフを経て、どのように豊かになったのか、また、現在でも豊かな国や地域とそうでない国や地域があるのはどうしてか、さらに、持続的な経済成長を達成した諸条件について、かなり制度学派的な発想から解き明かそうと試みています。もちろん、制度学派に偏っているわけではなく、かなり幅広い経済史を概観しています。その意味では、産業革命前後の経済史をサーベイしているわけです。私は専門外なもので、現時点まで西洋、というか、欧米が経済的な覇権を握っていたのは、イングランドで産業革命が始まり、それが欧米諸国で広まったからであって、どうしてイングランドで産業革命が始まったのかについての決定的な議論はまだ確定していない、と考えていましたが、本書を読んで新たな視点を得られた気がします。すなわち、従来は、欧米と中国やインド、という視点だったのですが、14世紀くらいから欧州の中での覇権の動きに本書は注目しています。まあ、何と申しましょうかで、経済史のご専門の研究者では当然のことだったのかもしれませんが、私は中国やインドで産業革命が始まらず、どうして欧州で始まったのか、について考えるあまり、イングランドの前に欧州で覇権を握っていたポルトガル、スペイン、オランダ、特にオランダで製造業の産業革命が起こらず、イングランドで始まった、という点はそれほど重視していませんでした。でも、本書でそういった視座も手に入れた気がします。ただ、相変わらず、産業革命については極めて複雑な要因が絡み合ってイングランドで始まった、というだけで、制度学派的に所有権が明確であるがためにエンクロージャーがイングランドで実行された、という以上の根拠は見い出せませんでした。少なくとも、ウェーバー的な「プロテスタンティズムの倫理」が資本主義における欧州の興隆を支えたわけではなく、識字率に代表される教育とかの成果である、という点は確立された議論のようです。そして、本書の特徴のひとつは、単に経済史をさかのぼって眺めるだけではなく、現在まで欧米の経済水準にキャッチアップしていない国や地域について、かつての制度や文化だけではなく、人口増加の抑制が効かなかったのか、植民地時代の収奪に起因するのか、といった視点で現代経済を捉え直そうとしている点であり、これは評価できます。少なくとも、現在の先進国から途上国への国際協力や援助が、それほど経済発展を有効にサポートしていないように見えるだけに、いろんな複雑な要素要因を考える必要があるのだと実感します。とてもボリューム豊かな本で、400ページを大きく超えますが、とても読みやすくて読了するのにそれほど時間はかかりません。邦訳もいいのだろうと思います。

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次に、玉木俊明『戦争と財政の世界史』(東洋経済)を読みました。著者は、京都産業大学の研究者であり、ご専門は経済史です。本書では、序章のタイトルを「国の借金はなぜ減らないのか」として、アイケングリーンほかの『国家の債務を擁護する』を意識しているのか、と思わせつつも、中身はあくまで歴史であって財政プロパーについては重視されていない印象です。ということで、先ほどの本書の序章のタイトルの問いに対する回答は早々に示されており、その昔の欧州などでは戦争のために国が借金をして、イングランド銀行などの画期的な財政金融イノベーションによって、戦時に公債を発行して資金調達する一方で、戦争が終われば償還する、という古典派経済学が対象にした夜警国家の財政運営であったのが、現在の福祉国家では戦費ではなく社会福祉に財源をつぎ込んでいますから、on-going で続く福祉が終わってから国債を償還するという段取りにはならないわけです。そして、コヤマほかの『「経済成長」の起源』から続いて本書を読むと、現在のオランダに当たるネーデルランドが州ごとに公債を発行して戦費を調達していたのに対して、イングランドではイングランド銀行を設立して国債でもって資金調達していた点が、両国でビミョーに異なるという主張があります。ひょっとしたら、オランダで産業革命が始まらず、イングランドで始まったのと何か関係があるかもしれません。ないかもしれません。本書は終章で、ウォーラーステインのいうような近代的な世界システムがフロンティアの消滅により終焉する可能性を示唆しています。ただ、私自身の直感、そうです、あくまで直感としては、フロンティアが消滅すれば、主権の及ぶ範囲としての国境内で税を取り立てる余地が狭まるだけであって、中世的な低成長の時代にあってはフロンティアの獲得は死活問題であったでしょうが、技術革新で成長が期待できる近代社会では領土的な拡大は成長には不要だと考えています。むしろ、近代社会を支える持続的な成長に成約となるのは、その技術革新の停滞、あるいは、経済外要因、すなわち、気候変動や地球温暖化の進行、はたまた、武力衝突といった要因ではなかろうかと私は考えています。

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次に、笹尾俊明『循環経済入門』(岩波新書)を読みました。著者は、立命館大学経済学部の研究者、すなわち、私の同僚です。研究室も同じフロアで近かったりします。本書では、従来の廃棄物処理対応の延長線上で循環型経済社会を考える日本式の政策ではなく、欧州的なサーキュラー・エコノミーを展望し、持続可能な経済社会のための方向を明らかにしようと試みています。ただ、意図的なものかもしれませんが、SDGsという用語はほとんど出てきませんでした。ということで、SDGsについてはついつい2050年カーボンニュートラルに目が行くのですが、私はこの目標は、控えめにいっても、極めて達成が難しいと考えています。ハッキリいえば、ムリです。ムリとまでいわないまでも、少なくとも現時点で2050年カーボンニュートラル達成のトラックには乗っていません。まあ、2050年といえば、私がもしも生きているとしても90歳を超えていますので、たぶん、カーボンニュートラルの目標達成を見届けることができません。ですので、ついつい、SDGsやサステイナビリティに関しては別の目標を見てしまいます。毎年1本しか書かない今夏の論文のテーマは財政のサステイナビリティでした。そして、この本はサステイナビリティの中でも廃棄物ないし循環型経済社会をテーマにしています。第4章では、経済的インセンティブに焦点が当てられていて、私も常々の主張とも整合的に、意識や気持ちでは限界がある点を強調した後、ごみ処理有料化やビン・カンなどのデポジット制度が経済学的な理論を使って、実に見事に説明されています。私の不得意な分野ですので、このあたりのグラフは授業にも使わせていただこうと考えていたりします。そして、本書後半では、循環経済の重点分野として、第7章でフードロス、第8章でプラスチックの2点がクローズアップされています。どちらも注目されている論点であり、後者のプラスチックについては、2020年7月からスーパーやコンビニのレジ袋が有料化されて、大学生でも何らかの体験を持っています。今さら、「入門」とタイトルにあるの岩波新書を研究費で買うのもためらわれたのですが、専門外の私にも判りやすい良書です。とってもオススメです。

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次に、村上靖彦『客観性の落とし穴』(ちくまプリマー新書)を読みました。著者は、大阪大学の研究者であり、専門は現象学的な質的研究となっています。これだけでは私には理解不能です。本書の視点はかなり明確で、客観性とか数値的なエビデンスを求める姿勢は、かなりの程度に、困窮者に対する差別的な姿勢と共通するのではないか、という疑問を出発点にしています。私はこの視点はかなり的を得ていて客観的で明確なエビデンスを、まあ、ハッキリいえば、ムリやりに求めて、困窮者への支援の妥当性に疑問を投げかける、という方向に進む可能性があるからです。ただ、もしもそうであるならば、タイトルはミスリーディングです。客観性に対応する概念が主観性であるというのは、たぶん、気の利いた小学生なら理解しています。でも、本書の議論はそうではありません。その上に、やや若年者向けの本であることを承知しているつもりながら、かなり上から目線で「君たちは間違っている。私が教えてやる。」という雰囲気が濃厚です。もちろん、第3章のタイトル「数字が支配する世界」とか、第4章の「社会の役に立つことを強制される」とかは、経済社会的な何らかの病理のようなものであるという主張は十分理解しますが、客観性とは違うのではないかという疑問は生じます。本書の著者が主張したい社会的な病理のようなものは、客観性や明確なエビデンスを求める姿勢ではなく、何らかの原因に基づいて困窮する人たちへの共感を欠く態度、そして、その一環として、困窮する人たちへの支援の根拠を過剰に求める態度ではなかろうか、と私は想像します。タイトルや表紙の帯などで、売上を伸ばすためのやや軽度のフェイクがあるような気がしてなりません。

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次に、小川和也『人類滅亡2つのシナリオ』(朝日新書)を読みました。著者は、グランドデザイン株式会社という会社のCEOであり、人工知能を用いた社会システムデザインを業務としているようです。本書では、表紙画像に見えるように、AIと遺伝子操作を人類滅亡のリスクと考えています。まったくもって同感です。ただ、本書の著者がよく考えている点は、人類=ホモサピエンスであって、滅亡とは人類が死に絶えることだけではなく、新たな段階に生物学的に進化することも「滅亡」とされています。直感的には、ホモサピエンスによってネアンデルタール人が滅亡したとかいった場合、もちろん、ネアンデルタール人は死に絶えたのでしょうが、遺伝子的にはホモサピエンスにかなりの程度残っていますし、まあ、それをいいだせば、チンパンジーだってホモサピエンスの遺伝子と大部分は共通するわけですから、少し「滅亡」を違う意味で捉える向きもありそうな危惧は持ちます。私は新たな段階に進化するのも滅亡でいいと考えていますので、申し添えます。繰り返しになりますが、表紙には「悪用」という文字がありますが、これは正確ではありません。特に、AIについてはホモサピエンスの誰か、マッドサイエンティストのような人物が悪用する、というよりは、AI自らが、ホモサピエンスから見て「暴走」する、ということなのだろうと思います。でも、ホモサピエンスから見た「暴走」はAIから見ればまったくもって当然の合理的行動なのだろうという点は忘れるべきではありません。私は基本的に本書の議論に同意します。すなわち、ホモサピエンスはそれほど遠くない将来、たぶん、数世代のうちに滅亡する可能性が十分あります。ただ、今夏の気候などを考慮すると、本書で取り上げるリスクが現実化する前に、気候変動というか、地球温暖化で滅亡するほうが早いかもしれません。また、ロシアのウクライナ侵略を見ていると、何らかの武力衝突もありえます。ということで、覚えている人は覚えていると思いますが、その昔に英国オックスフォード大学のグループだったか、誰かだったかが、12 Risks That Threaten Human Civilization という小冊子を出しています。ネット上でどこかにpdfファイルがアップロードされていると思います。これを、最後の最後にリストアップしておくと、以下の通りです。世に出たのは2015年だったと記憶していますが、コロナのずっと前にパンデミックとかが上げられています。もちろん、AIも含まれています。何ら、ご参考まで。

  1. Extreme Climate Change
  2. Nuclear War
  3. Global Pandemic
  4. Ecological Catastrophe
  5. Global System Collapse
  6. Major Asteroid Impact
  7. Super-volcano
  8. Synthetic Biology
  9. Nanotechnology
  10. Artificial Intelligence
  11. Future Bad Global Governance

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最後に、潮谷験『スイッチ』(講談社文庫)を読みました。著者は、京都ご出身のミステリ作家であり、この作品でメフィスト賞を受賞してデビューしています。表紙画像に見えるように、副題が「悪意の実験」とされています。ということで、どう考えても、龍谷大学としか思えない大学が舞台となっていて、大学出身のカリスマ心理コンサルタントの実験にアルバイトとして加わる女子大生が主人公です。このカリスマ心理コンサルタントは、「カリスマ」だけあって資金が豊富なもので、中書島にあるパン屋に援助していますが、6人のアルバイト大学生を集めて、意味なくスイッチを押すと、そのパン屋への援助を打ち切って、パン屋の経営が成り立たなくなる、という仕組みで、スイッチを押す人がいるのか、いないのか、また、押すとすればいつ押すのか、といった観点から心理実験をするわけです。心理コンサルタントはこれを「純粋な悪」と呼んでいたように思います。アルバイトは大学生6人で、期間1か月で、アルバイトには毎日1万円が支払われ、実験終了後に毎日の1万円に加えて100万円が支払われます。誰かがスイッチを押したとしても、実験は中断されることなく継続され、報酬は全員に全期間分、すなわち満額130万円ほどが支払われます。そして、重要なポイントは、誰がスイッチを押したかは雇い主の心理コンサルタントにしかわからない、ということになります。少し趣向は違いますが、タイトルといい、山田悠介の『スイッチを押すとき』を思い出させます。結果は、アルバイト期間最終日にスイッチが押されます。しかし、そのスイッチは主人公が目を話したスキに誰かに押されてしまったので、実際に誰が押したのかは不明です。スイッチを以下に押すかというハウダニットを軽く済ませた上で、誰がスイッチを押したのかのフーダニット、もちろん、もっとも重要なポイントで、どうしてスイッチを押したのかのホワイダニットの2点が主要に解明されるべきポイントとなります。そして、見事に論理的にこれらの謎が解明されます。しかし、バックグラウンドに新興宗教、カルトではなさそうなのですが、とにかく、新興宗教があって、やや不気味さを漂わせます。新興宗教は私の苦手な展開です。ややホラーがかっているものの、謎解きミステリとしては一級品だと思います。でも、大学生なのに僧侶、とか、飲んだくれて留年を繰り返している女性とか、作者としてはキャラを極端なまでに書き分けているつもりなのでしょうが、どうもすんなりと頭に入りません。まあ、私の頭が悪いだけかもしれません。その上、カリスマ心理コンサルタントの会話がかなり軽いです。ですから、アルバイトの大学生と変わりない「水平的」な会話が交わされてしまいます。もう少しメリハリをつけるのも一案か、という気がします。でも、繰り返しになりますが、謎解きミステリとしては一級品だと思います。世間で話題になっていることもありますから、読んでおいてソンはないと思います。

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2023年10月13日 (金)

不平等は景気循環の振幅を大きくする?

先月9月に全米経済研究所(NBER)から 不平等と景気循環に関するInequality and Business Cycles と題するワーキングペーパーが明らかにされています。サイテーションは以下の通りです。

まず、NBERのサイトから論文のAbstractを引用すると以下の通りです。なお、下線は引用者が付け加えています。

Abstract
We quantify the connection between inequality and business cycles in a medium-scale New Keynesian model with tractable household heterogeneity, estimated with aggregate and cross-sectional data. We find that inequality substantially amplifies cyclical fluctuations. The primary source of this amplification is cyclical precautionary saving behavior. Savers reduce their consumption to insure themselves against the idiosyncratic risk of large income drops, which rises in recessions.

家計の異質性を捕捉できるようなニューケインジアン・モデルを用いて、不平等と景気循環を分析しています。その結果、不平等が景気循環の振幅を増幅するというファクトファインディングがあった、ことが明らかにされています。論文から Figure 8: No-inequality counterfactual: GDP growth and de-trended hours を引用すると以下の通りです。

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青い折れ線グラフが実績の景気循環 actual なのですが、仮想現実 no-inequality counterfactual の赤い折れ線は、明らかに実績から山も谷も振幅が小さくなっているのが見て取れます。この増幅の大きな要因として、景気循環に応じた予備的貯蓄行動 precautionary saving behavior が上げられています。すなわち、不平等のレベルが高いと、経済的困難に見舞われた不運な世帯の潜在的な損失が拡大し、景気後退期に大幅な収入と消費の低下というリスクがが深刻になり、リスクの影響を軽減するために、流動性制約のない家計は景気循環の間に予防貯蓄を増加させ、逆に、この予備的貯蓄行動が景気循環の振幅を増幅させる、というメカニズムです。

ニューケインジアン・モデルにより不平等が景気循環の振幅を拡大させる点が実証された事実は重要だと私は考えています。マクロ経済政策の重要な目標のひとつは景気循環の平準化であり、そのためには格差や不平等を是正する政策が必要、ということになり、その実証的な根拠が得られたといえます。

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2023年10月12日 (木)

足踏み続く8月の機械受注と国内物価上昇率が2%まで縮小した9月の企業物価指数(PPI)をどう見るか?

本日、内閣府から8月の機械受注が、また、日銀から9月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。統計のヘッドラインを見ると、民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比▲1.1%減の8449億円となっている一方で、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比で+3.2%上昇したものの、上昇率は8か月連続で鈍化しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから手短に引用すると以下の通りです。

機械受注8月0.5%減、2カ月連続マイナス 金融落ち込み
内閣府が12日発表した8月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」(季節調整済み)は前月比0.5%減の8407億円だった。マイナスは2カ月連続となる。金融業・保険業を中心に非製造業からの発注が3.8%減少した。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は0.3%増だった。内閣府は全体の基調判断を10カ月連続で「足踏みがみられる」とした。
非製造業は3カ月ぶりに減少した。業種別でみると金融業・保険業からの発注が15.8%減って全体を押し下げた。マイナスは2カ月連続となる。大型コンピューターやサーバーなどが含まれる電子計算機などの需要が落ち込んだ。
卸売業・小売業は16.7%増とプラスを確保した。コンベヤーといった運搬機械や電子計算機などの発注が増えた。非製造業ではリース業や通信業も前月から増えた。
製造業は2.2%増と2カ月ぶりにプラスだった。「自動車・同付属品」からの発注が15.0%伸びた。金属加工機械や工作機械の発注増が寄与した。
運搬機械などの発注が増えて「汎用・生産用機械」も4.9%高まった。化学機械などが増えた「化学工業」は前月と比べ約3倍となった。
船舶・電力を除く民需は、単月の振れを除くために算出した6~8月の3カ月移動平均では前期に比べて0.4%増えた。
企業物価、9月2.0%上昇 9カ月連続伸び鈍化
日銀が12日発表した9月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は119.3と、前年同月比で2.0%上昇した。8月(3.3%)から1.3ポイント低下し、上昇率は9カ月連続で鈍化した。飲料や食料品などで価格転嫁の継続がみられたが、ガソリン補助金の拡充などからプラス幅は限定的だった。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。9月の上昇率は民間予測の中央値(2.3%上昇)を0.3ポイント下回った。公表している515品目のうち424品目が値上がりした。
品目別にみると、電力・都市ガス・水道は前年同月比18.0%の下落だった。4~6月の燃料費が遅れて反映される調整単価が低下したことが影響した。日銀の試算によると、政府が2月から実施している電気・ガスの価格抑制策も企業物価指数を前年同月比で約0.6ポイント押し下げたという。
一方、石油・石炭製品は前年同月比3.2%上昇した。ガソリン価格の急騰を抑える政府の補助制度の影響で8月(7.4%上昇)から上昇幅が4.2ポイント縮小した。
輸入物価は円ベースで前年同月比14.0%下落した。原油高が進んでいた22年同時期の反動で6カ月連続でマイナス圏となった。8月(マイナス11.4%)より下落幅が拡大した。

続いて、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事では市場の事前コンセンサスが0.3%増と報じていますが、私が確認した限りでは、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比+0.1%増でした。いずれにせよ、ほぼ横ばい圏内の予想でしたから、実績の▲0.5%減はやや下振れた印象です。もっとも、予想レンジの範囲内ですし、もともとが単月での振れの大きな指標ですので、前月比プラスとマイナスの符号の違いがあるとはいえ、サプライズではなかったと私は考えています。引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いています。10か月連続での基調判断の据え置きだそうです。上のグラフで見ても、太線の移動平均で示されているトレンドとして下向きとなっている可能性が読み取れると思います。ただし、受注水準としてはまだ8,000億円をかなり上回っており決して低くはありません。「足踏み」という基調判断のひとつの根拠は、4~6月期の見通しでは、前期比+4.6%増の2兆7926億円と見込まれていたところ、実績では3.2%減の2兆5855億円にとどまりましたし、加えて、7~9月期の見通しは、製造業・非製造業ともに減少し、コア機械受注で見て▲2.6%減の2兆5,174億円と見込まれている点にあると私は考えています。特に、本日公表された8月統計では、製造業が季節調整済みの前月比で+2.2%増の4157億円であった一方で、船舶・電力を除く非製造業が▲3.8%減の4209億円と明暗が別れました。ソフトランディングが期待される海外経済に支えられて、製造業が牽引役となって回復する可能性がある、と私は考えています。他方で、インフレのダメージが決して無視できない内需に依存する割合の高い非製造業の受注拡大が今後の課題となります。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。引用した記事にあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+2.3%と見込まれていましたので、実績の+2.0%はやや下振れしました。引用した記事には、「上昇率は9カ月連続で鈍化した」となっていますが、特に輸入物価は4月統計から前年同月比でマイナスに転じ、9月統計では輸入物価▲11.8%の下落となっています。私が調べた限りでも、輸入物価のうちの原油については、これも4月統計から前年同月比マイナスに転じており、9月統計では▲14.0%の下落を記録しています。したがって、資源高などに起因する輸入物価の上昇から国内物価への波及がインフレの主役となる局面に入った、と私は考えています。ですので、日米金利差にもとづく円安の是正については、経済政策として取り組む必要はそれほど大きくなくなった、と考えるべきです。消費者物価への反映も進んでいますし、企業間ではある意味で順調に価格転嫁が進んでいるという見方も成り立ちます。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比で少し詳しく見ると、ウッド・ショックとまでいわれた木材・木製品が反転して▲20.4%の大きな下落を記録しており、電力・都市ガス・水道も▲18.0%と下落幅を拡大しています。前年同月比で上昇している品目でも、農林水産物+6.9%、飲食料品+5.4%の上昇のほか、窯業・土石製品+14.5%、パルプ・紙・同製品+13.7%、金属製品+7.3%、非鉄金属+5.7%、鉄鋼+1.1%となっていて、多くの品目でジワジワと上昇率が低下してきています。もちろん、上昇率が鈍化しても、あるいは、マイナスに転じたとしても、価格水準としては高止まりしているわけですし、しばらくは国内での価格転嫁が進むでしょうから、決して物価による国民生活へのダメージを軽視することはできません。特に、農林水産物の価格上昇が続いていて、その影響から飲食料品についても高い上昇率を続けています。生活に不可欠な品目ですので、政策的な対応は必要かと思いますが、エネルギーのように市場価格に直接的に介入するよりは、消費税率の引下げとか、所得の増加などで市場メカニズムを生かすのが望ましい、と私は考えています。

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2023年10月11日 (水)

国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し」World Economic Outlook やいかに?

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日本時間の昨日、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し」World Economic Outlook が公表されています。ヘッドラインとなる世界経済成長率は、上のINFOGRAPHの通り、今年2023年+3.0%、来年2024年+2.9%と、2021年実績+6.0%、2022年実績+3.5%から減速すると見込んでいます。INFOGRAPHはIMFのツイッタのサイトから引用しています。なお、上の画像をクリックすると各国別の成長率などの2ページだけのpdfファイルが別タブで開きます。これはpdfの全文リポートの Table 1.1. Overview of the World Economic Outlook Projections のテーブルから抽出しています。ということで、まず、IMF Blog のサイトから最初のパラを引用すると以下の通りです。

Resilient Global Economy Still Limping Along, With Growing Divergences
The global economy continues to recover from the pandemic, Russia’s invasion of Ukraine and the cost-of-living crisis. In retrospect, the resilience has been remarkable. Despite war-disrupted energy and food markets and unprecedented monetary tightening to combat decades-high inflation, economic activity has slowed but not stalled. Even so, growth remains slow and uneven, with widening divergences.

最後のセンテンスとその前のセンテンスのどちらに重点があるのか、興味あるところではないでしょうか。すなわち、最後から2番めのセンテンスは "economic activity has slowed but not stalled" 経済活動は減速しているものの、失速はしていない、というkとですし、最後のセンテンスは "growth remains slow and uneven, with widening divergences" 成長率は依然として低く、不均一であり、格差は広がっている、ということになります。どちらに重点があるかは、アップロードされているpdfの全文リポートをしっかりと読みこなす必要があります。でも、200ページ近い英語のリポートであり、IMF Blog のサイトから簡単にグラフを引用しつつ着目しておきたいと思います。

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まず、上のグラフはIMF Blog のサイトから Growth and inflation を引用しています。見れば明らかな通り、左のパネルが成長率、右がインフレ率のグラフです。繰り返しになりますが、今回の「世界経済見通し」では、ヘッドラインtなる世界経済の成長率が2023年+3.0%と、前回の7月時点での見通しから変更ないものの、2024年+2.9%は前回見通しから▲0.1%ポイント引き下げられています。しかし、"As a result, projections are increasingly consistent with a soft landing scenario" とソフトランディングのシナリオが現実味を帯びている点を強調しています。その根拠のひとつが物価上昇圧力が弱まっているという事実であり、ヘッドラインのインフレ率は引き続き減速し、2022年+9.2%から今年2023年+5.9%、そして、来年2024年+4.8%と落ち着きを取り戻す方向にあると見込んでいます。ただし、物価目標は我が国を含めて+2%の国が多く、2025年までこの物価目標には戻らない、という予想も同時に明らかにしています。

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続いて、上のグラフはIMF Blog のサイトから China risk を引用しています。ソフトランディングが実現可能との見通しではあっても、当然ながら、リスクはまだまだ残っており、しかも、"the balance remains tilted to the downside" リスクバランスは下振れ方向に厚くなっています。その中で最大のリスクのひとつが中国リスクです。主として、中国の不動産リスクです。しかも厄介なことに、ジレンマが生じる恐れを指摘しています。すなわち、中国の不動産価格が急激に下落すると、家計や銀行などのバランスシートが悪化し、金融面での波及効果が深刻となります。一方、何らかの政策手段によって、不動産価格が恣意的に押し上げられると、家計や銀行などのバランスシートは一時的に安定するものの、他の投資機会が阻害されて新規建設が減り、土地や不動産などの売上げ減少を通じて地方政府の歳入に悪影響が及ぶ可能性がある、との指摘です。不動産バブルの崩壊は深刻な結果をもたらす一方で、政策的なサポートは非効率と地方政府の財政悪化をもたらしかねない、とのジレンマです。

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続いて、上のグラフはIMF Blog のサイトから More out of step を引用しています。気候変動の激化やロシアのウクライナ侵略をはじめとする地政学的なショックに伴って、石油などの一次産品価格のボラティリティが高まる可能性が強まっています。上のグラフでは、石油、石炭、リチウム、小麦、リン酸について、地域ごとの最大と最小の価格差を最小価格を基準にしてプロットしています。

最後に、グラフは引用しませんが、5年後の中期的な経済見通しは先進国でも新興国・途上国でも悪化しており、少し長い目で見た政策の方向としては構造改革を強調しています。すなわち、"With lower growth, higher interest rates and reduced fiscal space, structural reforms become key." 成長率が低下し、金利が上昇し、財政余地が縮小した結果、構造改革が鍵となる、というわけです。その中身はというと、"a careful sequencing of reforms, starting with those focused on governance, business regulation and the external sector" ガバナンス、ビジネス規制、対外セクターから始めて、十分配慮した順序に従って進める必要がある、としています。

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2023年10月10日 (火)

物価高で大きく低下した9月の景気ウォッチャーと黒字に回帰した経常収支

本日、内閣府から9月の景気ウォッチャーが、また、財務省から8月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲3.7ポイント低下の49.9となった一方で、先行き判断DIも▲1.9ポイント低下の49.5を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+2兆2797億円の黒字を計上しています。まず、ロイターのサイトから景気ウォッチャーの記事を、日経新聞のサイトから経常収支の記事を、それぞれ引用すると以下の通りです。

街角景気9月は3.7ポイント低下、物価高が重し 判断やや下方修正
内閣府が10日発表した9月の景気ウオッチャー調査では、現状判断DIが49.9と前月から3.7ポイント低下した。季節商品の需要喚起といった8月までの猛暑のプラス面が剥落。物価高も景況感の押し下げ要因となった。景気判断の表現は「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」とし、前回の「緩やかに回復している」からやや下方修正した。
現状判断DIは2カ月連続低下し、今年1月(48.5)以来の低水準となった。構成項目では家計動向関連DIは4.5ポイント低下の49.5、企業動向関連DIが1.2ポイント低下の50.5、雇用動向関連DIが3.2ポイント低下の51.5だった。
回答者からは「物価高騰が収まらないなか、おにぎりや弁当などの主食商品を客が価格を気にしながら購入している」(北海道=コンビニ)、「宿泊客に関しては新型コロナウイルス明けの特需から少し落ち着いたような感じ」(甲信越=都市型ホテル)といった声が出ていた。
内閣府の担当者によると、景気の現状判断DIは長期の数字を平均すると45-46程度であり、「50を下回ったからといってかなり悪いわけではない」と説明した。
先行き判断DIは前月から1.9ポイント低下し49.5となった。2カ月連続低下。内閣府は先行きについて「価格上昇の影響などを懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている」とした。
8月の経常収支、7カ月連続で黒字 2.2兆円
財務省が10日発表した8月の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引状況を示す経常収支は2兆2797億円の黒字となった。黒字は7カ月連続で、前年同月のおよそ3倍になった。資源高の一服で輸入額が減少し、貿易赤字の縮小が経常黒字を下支えした。
経常収支は輸出から輸入を差し引く貿易収支や、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支、旅行収支を含むサービス収支などで構成する。
8月は原油高などが落ち着いていたことから貿易収支が改善した。インバウンド(訪日外国人)の増加で旅行収支が2582億円の黒字と比較可能な1996年以降で同月としては最大だった。
貿易収支は7495億円の赤字で、赤字幅は前年同月から1兆7113億円縮んだ。輸入額が18.2%減の8兆6430億円、輸出額が2.6%減の7兆8935億円だった。
輸入額の減少はエネルギー価格の低下が要因で、商品別に見ると石炭が48.6%減、液化天然ガス(LNG)が43%減、原油を含む原粗油が24.2%減だった。8月の原油の輸入価格はドルベースで1バレルあたり82ドル8セントと27%下落していた。
第1次所得収支は3兆6387億円の黒字で8%減少した。サービス収支が3029億円の赤字だった。
季節調整値で見た経常収支は1兆6349億円の黒字で前月比40.9%減だった。貿易赤字は4360億円で前月から拡大した。

とても長くなりましたが、よく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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現状判断DIは、今年2023年に入ってから、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のための行動制限が徐々にフェイドアウトするとともに、ウクライナ戦争に伴う資源高もほぼ昨年2022年10~12月期にピークを過ぎたことから、高い水準を続けていて、2月以降は50を超えていました。しかし、直近の9月統計で50を割って49.9まで低下しています。もっとも、引用した記事にある内閣府の担当者のいうように、長期的に平均すれば大きく50を下回っているのも事実です。前月から▲4.5ポイント低下した家計動向関連の中でも、小売関連が▲6.1ポイント低下ともっとも大きくなっていて、明らかに物価上昇の影響であると私は受け止めています。ただし、このインフレはそれほど長続きしません。したがって、統計作成官庁である内閣府もよく似た見方なのか、基調判断は8月統計の「緩やかに回復している」から、わずかに半ノッチ下方修正され、「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」とされています。内閣府のリポートの中の近畿の景気判断理由の概要を見ると、家計動向関連では「値上げの影響か、見切り品や特売品価格に対する意識が強まっている。遅い時間に来店し、見切り品を購入する客が増えている(スーパー)。」とか、企業動向関連では「日常的な物価の上昇に、収入が追い付いていない(一般機械器具製造業)。」とかに私は目が止まってしまいました。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは経常黒字+3兆909億円でしたので、実績の+2兆2797億円はやや下振れした印象です。2011年3月の東日本大震災と福島第一原発の影響を脱したと考えられる2015年以降で経常赤字を記録したのは、季節調整済みの系列で見て、昨年2022年10月統計▲3419億円だけです。もちろん、ウクライナ戦争後の資源価格の上昇が大きな要因です。ですから、経常黒字の水準はウクライナ戦争の前の状態に戻っていますし、たとえ赤字であっても経常収支についてもなんら悲観する必要はなく、資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。ただ、逆に、今年2023年4~6月期には経常黒字の名目GDP比が+4%を超える水準にまで達しています。日本の経済的なプレゼンスが大きかった時代であれば、経常収支の黒字減らしが国際的に必要であったかもしれません。でも、現在の日本の国際的なポジションからして、この程度の経常黒字は何ら注目を受けないようです。

IMF・世銀総会を控えて、日本時間今夜に、「世界経済見通し」World Economic Outlook の見通し編が公表される予定です。また、日を改めて取り上げたいと予定しています。

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クラウディア・ゴールディン『なぜ男女の賃金に格差があるのか』を注文する

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昨夜のノーベル経済学賞の結果を受けて、クラウディア・ゴールディン『なぜ男女の賃金に格差があるのか』(慶應義塾大学出版会)を注文してしまいました。私の専門外ですし、やや等閑視していたのですが、まあ、何と申しましょうかでミーハーにも注文したわけです。
出版社には在庫あるものの、取次店では在庫ないそうで、有り体にいって、取り合っているのだろうと思います。輸送コストがかかって、しかも、10%値引きという安値販売をしている地方大学の生協への出荷は優先されないのだろうと思いつつ待つことにしました。
どうでもいいことながら、昨夜の報道などでは「ゴルディン教授」と伸ばさない日本語表記を多く見かけましたが、ご著書の方は「ゴールディン教授」と伸ばすみたいです。どうでもいいことでした。

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2023年10月 9日 (月)

ノーベル経済学賞はハーバード大学ゴルディン教授に授与

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今年2023年のノーベル経済学賞は米国ハーバード大学クラウディア・ゴルディン教授に授与されました。受賞理由をノーベル財団のサイトから引用すると以下の通りです。

She uncovered key drivers of gender differences in the labour market
This year’s Laureate in the Economic Sciences, Claudia Goldin, provided the first comprehensive account of women’s earnings and labour market participation through the centuries. Her research reveals the causes of change, as well as the main sources of the remaining gender gap.

さすがに、まったく専門外の私でも名前は聞いたことがあります。確かに、事前の予想に上がっていました。でも、まさかホントに受賞するとは思ってもみませんでした。今年から来年にかけてのアカデミック・イヤーにはジェンダーギャップの経済学が流行するかもしれません。

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ジェンダーギャップが縮小すれば成長は加速する?

やや旧聞に属するトピックなのですが、国際通貨基金(IMF)によるIMF Blogのうちの9月27日付けのChart of the Weekで取り上げられたテーマが Countries That Close Gender Gaps See Substantial Growth Returns となっています。基となるIMF Working Paperのサイテーションは以下の通りです。

IMF Blogのサイトから In search of new growth sources と題するグラフを引用すると以下の通りです。赤の棒グラフが新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックによる損失、青の部分が女性の労働参加率を+5.9%ポイント上昇させた場合のGDPの増分です。特に、新興国や低所得途上国では女性の労働参加の拡大が大きな成長へのリソースとなることが理解できます。

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このIMF Blogのサイトの最後のパラグラフでは、「各国は、教育、健康、資産、金融、土地、法的権利、介護サービスへのアクセスの制限など、女性の労働市場への参加に対する障壁を打ち破る努力を強化する必要がある。」 Countries must step up efforts to break down barriers to women's participation in the labor market-such as limited access to education, health, assets, finance, land, legal rights, and care services. と締めくくっています。これは、ジェンダーギャップにおいては途上国もいいところである我が日本にも大いに当てはまる、と考えるべきです。

今日は世間一般では「スポーツの日」の祝日ですが、私の勤務校は祝日授業日となっています。ハッピーマンデーでお休みの日がいくつかあって、私のように月曜日に3子コマの授業を抱えていると補講ばかりになってしまいますので、祝日も授業があります。お仕事日でしたので経済評論のブログをポストしておきます。

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2023年10月 8日 (日)

やっぱり自転車が便利

東京を離れて地方圏に住まいしながらも、長らく自動車に乗らないので、やっぱり、自転車が便利です。
ということで、昨日から自転車に乗り始めました。3月に大学からの帰路で自動車と正面衝突した交通事故から、ほぼほぼ7か月ぶりの自転車でした。事故を起こしたロードバイクではなく、もう1台のクロスバイクの方をいつもの自転車屋に持って行って整備してもらいます。すなわち、ハンドルなどをチェックした上で、ブレーキとタイヤチューブを交換して、チェーンなども注油してもらって乗り始めました。
1キロあまり離れた図書館とか、さらに離れたファストフード店とか、夏の暑い間は徒歩で往復していたのですが、やっぱり自転車だと快適です。そのうちに、大学への自転車通勤も再開したいと予定しています。

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明日は世間一般はスポーツの日でお休みですが、私は祝日授業日ですので出勤です。

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2023年10月 7日 (土)

今週の読書は幅広く経済をとらえる本から時代小説やエッセイまで計7冊

今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、ヘイミシュ・マクレイ『2050年の世界』(日本経済新聞出版)は、経済などの指標を用いて2050年の世界像を明らかにしようと試みています。ジェレミー・リフキン『レジリエンスの時代』(集英社)では、効率を尊ぶ進歩の時代から、自然界と共存するレジリエンスの時代への変化を説きます。石井暁『自衛隊の闇組織』(講談社現代新書)では、謎の自衛隊のスパイ組織に迫るジャーナリストの取材結果が明らかにされています。大村大次郎『日本の絶望 ランキング集』(中公新書ラクレ)は、日本の世界におけるランキングを統計的に明らかにしてグローバルな地位低下を示しています。酒井順子『処女の道程』(新潮文庫)は、性体験のない処女が時代とともにどのように異なった扱いを受けてきたのかに何するエッセイです。青山文平『江戸染まぬ』(文春文庫)は、江戸期の侍を中心にした義理人情の時代小説の短編7話を収録しています。最後に、津村記久子『サキの忘れ物』(新潮文庫)はアルバイト先に忘れられていたサキの小説を読んで人生が変わっていく高校中退の女性を主人公にする短編ほか計9話を収録しています。また、新刊書読書ではないので、この読書感想文のブログには含めていませんが、瀬尾まいこ『戸村飯店 青春100連発』(文春文庫)も読んで、軽くFacebookでシェアしていたりします。
ということで、今年の新刊書読書は交通事故前の1~3月に44冊、その後、6~9月に104冊を読み、今週ポストする7冊を合わせて155冊となります。

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まず、ヘイミシュ・マクレイ『2050年の世界』(日本経済新聞出版)を読みました。著者は、英国『インディペンデント』紙経済コメンテーターなどを務めていますので、ジャーナリストなのだろうと思います。30年ほど前には本書でも何度か言及されている『2020年 地球規模経済の時代』を出版しています。英語の原題は The World in 2050 であり、2022年の出版です。ネタバレはしたくないのですが、アマゾンのサイトに「2050年の世界の10の展望」として明記されていますので、それを引用しておくと以下の通りです。すなわち、(1) 世界人口の約⅔が中間層と富裕層になる、(2) アメリカの先行きは明るい、(3) アングロ圏が台頭する、(4) 中国が攻撃から協調に転じる、(5) EUは中核国と周辺国に分かれる、(6) インド亜大陸の勢力が強まり、世界の未来を形成する、(7) アフリカの重要性が高まり、若い人材の宝庫となる、(8) グローバル化は<モノ>から<アイデアと資金>にシフトする、(9) テクノロジーが社会課題を解決する、(10) 人類と地球の調和が増す、ということになります。(8)なんてのは、論じるまでもなく当然ではないか、という気もします。本書でも引用していたかと思いますが、GDPで計測した経済規模だけで考えれば、ゴールドマン・サックス証券のリポート The Path to 2075にもあるように、我が日本は2022年には米中に次ぐ3番めの大きさでしたが、2050年には6位、2075年には12位までランクを落とします。それでも十分な経済大国だと私は考えていますが、本書のスコープである2050年には、私は命長らえていても90歳を超えますし、2075年ということになれば軽く100歳を超えます。ですので、私よりも15歳も年長である本書の著者のスコープに感激しつつ、なかなか責任ある見通しを語る残り寿命も、見識も私にはなかったりします。ただ、本書については、やや人口動態に重点を置き過ぎているのではないか、という気がしてなりません。中国が一度経済規模で世界のトップに躍り出ながら、そのトップは短命でインドに追い抜かれる、というのは、ほぼほぼ人口動態だけを根拠にしているように見えます。高等教育という観点で、世界トップクラスの大学がそろっている米国が量的な人口動態以外の質的な人材面で、まだまだトップクラスの影響力を持ち続ける、という点に関しては私も同意見です。本書の特徴のひとつはボリュームとなっていて、決して枚数をいとわないようで、通常であれば、欧米を中心にアジアでは中国とインドと日本くらいに焦点を当てる気がするのですが、アフリカにも目が行き届いており、私が3年間外交官として暮らして愛着あるラテン・アメリカも忘れてはいません。そういった広い視野で、まさに、世界を対象にしてボリューム豊かに議論を展開しています。ただ、人口動態に重きを置き、しかも、ほぼほぼ現状からの静学的な予想に徹している気がします。すなわち、「このまま歴史が進めばこうなる」というに尽きます。その意味で、意外性はありません。まったくありません。最後に、別の読書の影響もあって、2045年にシンギュラリティを迎えるというカーツワイル説もありますところ、ひょっとしたら、2050年には現在の人類は滅亡している可能性もゼロではありません。まあ、ゼロに近いとは思いますが…

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次に、ジェレミー・リフキン『レジリエンスの時代』(集英社)を読みました。著者は、経済社会理論家と本書で紹介されていますが、まあ、私から追加すべき情報はないと思います。英語の原題は The Age of Resilience であり、2022年の出版です。なお、本書は集英社から「シリーズ・コモン」の一環として出版されており、シリーズ2冊めとなります。1冊目は『人新世の「資本論」』で有名な斉藤幸平・松本拓也[編]『コモンの「自治」』だったりします。ということで、本書で示される著者のモットーは、地球を人類に適応させる「進歩の時代」から、人類が地球に適応し自然界と共存する「レジリエンスの時代」へ、という方向転換です。しかし、本書では「レジリエンス」という言葉を、通常の「ショックからの回復」という意味ではなく、変化への適応という意味で使っています。ですから、今までの進歩の時代は効率を重視し、ムダを省くことに重点が置かれていたのに対し、レジリエンスの時代には適応力が重視されます。20世紀的に効率を重視した経済活動は、本書でも指摘されているようにテイラー主義による工程管理などです。しかし、ムダを省き過ぎれば適応力が低下することは容易に想像されるところであり、トヨタのジャストインタイムの在庫システムなどは本書の用語でいえばレジリエンスが十分ではい、という可能性があります。そして、経済学でいえば制度学派的に所有権を重視し、エンクロージャーによる囲い込みでエネルギーをはじめとする資源を収奪すれば、当然に資本以外の労働者や自然界は疲弊し貧困化します。あるいは、マルクス主義が正しいのかもしれませんし、はたまた、マルクス主義的なイデオロギーとは無関係に事実としてそうなっているのかもしれません。本書では、こういった方向転換の4つの要素を第4部で上げています。すなわち、インフラ、バイオリージョンに基づく統治、代議制民主主義から分散型ピア政治への転換、そして、生命愛=バイオフィリア意識の高まり、となります。それぞれの詳細については本書を読んでいただくのがベストと考えますが、エコノミストとしては経済面の将来像にやや物足りなさを感じます。統治論や政治学的なパースペクティブはとても重要であり、先ほどの第4部の4要素でかなりイイセン行っている気がしますが、マクロの経済政策として何が重要なのかが浮かび上がってきません。生命愛=バイオフィリア意識の高まりという要素については、いつも私が繰り返し主張しているように、「意識」でもって経済を動かすにはムリがあります。もっとも、私の認識や読み方が浅いだけなのかもしれませんが…

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次に、石井暁『自衛隊の闇組織』(講談社現代新書)を読みました。著者は、共同通信のジャーナリストです。ついつい、興味本位で「VIVANT」に影響されて読み始めてしまいました。本書は、陸上自衛隊の非公然秘密情報部隊「別班」の実体に迫ろうと試みています。このスパイ組織は、文民統制=シビリアン・コントロールのまったく埒外にあって、総理大臣や防衛大臣ですら存在を秘匿していて、例えば、p.73では共産党が政権を取ったら、「躊躇なくクーデターを起こします」と関係者が言い放っていたりします。身分を偽装した自衛官に海外でスパイ活動をさせ、ロシア、中国、韓国、東欧などにダミーの民間会社を作り、民間人として送り込ん自衛隊員がヒューミントを実行している、と本書では指摘しています。おそらく、どんな組織でも何らかの情報収集活動はしていて、エコノミストも新聞やテレビやインターネットから経済情報を得ています。ヒューミントをしているエコノミストも少なくないものと想像します。そして、エコノミストの中には、それらの情報を基に何らかのアクションを取る人もいると思います。シンクタンクでリポートを取りまとめたり、所属する企業の金融市場での行動にアドバイスして、例えば、国債や株式の売買に影響を及ぼすことはありえます。でも、本書で指摘しているスパイ組織については、情報収集だけではなく、いわゆる謀略活動をしているわけです。その昔、旧関東軍では張作霖爆殺事件や柳条湖事件を独断で実行したわけですが、そこまで大規模な軍事活動ではないとしても、文民統制の利かない場面で謀略活動をしているわけです。本書では、まず、文民統制が利いていない点を問題に上げています。すなわち、外国の中でも米国の国防情報局(DIA)のように、ヒューミントの情報収集や、あるいは、実働部隊の軍事的行動を含む謀略活動を行う場合があっても、シビリアン・コントロール下にあるわけで、自衛隊のこのスパイ組織は独断専行している点に怖さがあります。ただ、私はホントの実態を知らないので何ともいえませんが、共産党政権を倒すべくクーデターを起こすまでの実効性ある行動を取れるかどうか、というのは疑問に思わないでもありません。このスパイ組織は、どこまで影響力があるのでしょうか。首相や防衛大臣にも知らされていないわけですし、おそらく、自衛隊の大部分も知らないこういった部隊が自衛隊の大きな部分を動かせるとはとても思えない、ましてや、政権に対するクーデターを起こすだけの実力があるかどうかは疑わしい、と私は考えています。もしも、私の見方が正しいとすれば、自衛隊内での単なる自己満足である可能性すらあります。実態に謎が多いだけに、私も詳細には判りかねます。悪しからず。


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次に、大村大次郎『日本の絶望 ランキング集』(中公新書ラクレ)を読みました。著者は、国税局に10年間、主に法人税担当調査官として勤務し退職後、ビジネス関連を中心にフリーライターをしています。本書では、6章に渡って日本が世界で占めるランキング、というか、ポジションを明らかにしています。6章は、インフラ、病院と医療、経済、格差、対外債権、少子化対策や教育、となっています。従来から指摘されていて、それなりに人口に膾炙している事実も少なくないですし、国民が誤解しているためにびっくりするような新事実があるかといわれると、決してそうではありませんが、いろんなところから実際のデータを集めて実証的に統計で明らかにしている点は好感が持てますし、ある意味で、実用的でもあります。従来から広く知られている事実としては、無電柱化率が低いとか、人口あたり医師数や集中治療室の数が少ないとか、格差が大きいとか、非正規雇用比率が高い、なんてのはひょっとしたら、意識の高い高校生なら知っている可能性もあると思います。ただ、生産性が低いというのはエコノミストとしては誤解があるという気もします。最終章の少子化の進行やそのバックグラウンドとなった諸要因については、よく取りまとめられています。日本の合計特殊出生率が低い、したがって、少子高齢化や人口減少が進行している、という点については広く認識がされている一方で、教育政策が極めて低レベルにある点はそれほど意識されていないような気がします。特に、大学などの高等教育の学費がものすごく高い点は見逃されている気がします。本書ではお気づきでないようですが、高い教育費のバックグラウンドは年功賃金にあります。よく知られているように、日本の長期雇用における生産性と賃金の関係を見ると、働き始めたばかりの比較的若い時期には生産性に比べて賃金が低く抑えられている一方で、中年くらいから後の時期になると賃金が大きく引き上げられて生産性を超える水準となります。これは生活給として必要、すなっわち、教育費などのライフステージに合わせてお給料が支払われているためであり、逆に、政府が手厚い政策で教育費を抑制しなくても、企業の方がお給料を弾んでくれる、ということです。ですから、これだけ国民負担率が高い先進国であるにもかかわらず、教育費がここまで高いのはめずらしいといえます。しかし、非正規雇用で昇進カーブがフラットな労働者が増えると、こういった教育費負担が大きく感じられます。今後の大きな課題と考えるべきです。

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次に、酒井順子『処女の道程』(新潮文庫)を読みました。著者は、エッセイストです。なかなかお行儀のいいエッセイをいくつか出版していますし、性に関するエッセイも少なくありません。ということで、本書は、性に開放的だった古典古代のころから説き起こして、儒教の貞操観念が浸透した封建社会、明治維新から純潔が尊ばれた始める大正期、そして、子供を産む機械みたいに出産を国に推奨された戦時下、さらにさらにで、「やらはた」のような性的な経験不足ないし未経験が恥ずかしかったくらいの1980年代を経て、芥川賞作家の村田沙耶香の生殖と恋愛を切り離す『消滅世界』を引きつつ、性交渉しない自由を得た令和へと、古今の文献から日本の性意識をあぶり出す画期的な性に関するエッセイです。私自身は、10歳も違いませんが著者より少し年長で、1970年代に中学生・高校生から大学生でした。でしたので、著者のいう「やらはた」に近い感想を持っていたりしました。特に、高校の雰囲気に大きく影響されますが、男子単学ながら制服のない高校に私は通っていて、質実剛健・バンカラというよりはチャラついた派手めの高校でしたので、そういった性体験は周囲も含めて早かった気がしないでもありません。ですので、性体験ナシという意味での「処女」を重視するような文化とは無縁です。さらに、20代半ば後半からバブルの時代に入りましたので、チャラついた派手めの性行動が増進された気すらします。しかし、他方で、「処女」とか、男性の「童貞」も含めた「純血」を重視していた時代背景も理解できなくもありません。おそらく、本書でも指摘されているように、処女や純血の推奨は男性のサイドの勝手な要求だろうと思います。すなわち、よほどのことがない限り、生まれてきた子供の母親は同定できるのに対して、父親の方は推定されるだけであり、妻女に貞操や純潔を求めないと遺伝子の伝達が確実ではない、と男性の側が考えて権力や暴力に任せて女性に押し付けたモラルなのではないか、という気もします。もちろん、男女間のパワーバランスも大いに反映されています。ただ、完全否定するには難しい考えであることも確かで、少なくとも排除すべき思考とも思えません。まあ、要するに、時代による流行り廃りはあるとしても個人の自由の範疇であろうと思いますので、逆に、こういった行き届いたエッセイで歴史を振り返るのも有益ではなかろうか、と考える読後感です。

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次に、青山文平『江戸染まぬ』(文春文庫)を読みました。著者は、時代小説作家であり、『つまをめとらば』で直木賞を受賞しています。謎解きを含んで、少しミステリのような味付けをした時代小説作品も少なくありません。私は直木賞受賞の『つまをめとらば』とともに、ミステリっぽい『半席』を読んでいたりします。ということで、本書は江戸期を舞台とする時代小説短編を7話収録しています。収録順に、「つぎつぎ小袖」、「町になかったもの」、「剣士」、「いたずら書き」、表題作の「江戸染まぬ」、「日和山」、「台」の各短編となります。「つぎつぎ小袖」では、娘の肌を守るため疱瘡除けのつぎつぎ小袖を親類7家に依頼する母親を主人公に、いつも快く引き受けてくれる「仏様」の家からの借金の無心を断ったことなど、江戸期の下級武家の慎ましい暮らしぶり、母親の娘を思う気持ちなどが垣間見えます。「町になかったもの」では、月に6回も市が立つ六斎市を源にしている大きな町の上問屋の晋平が町年寄の願いで御番所への訴えで江戸に出他経験を基に、故郷の町になかった書肆を帰郷して開きます。「剣士」では、部屋住みの厄介叔父として年齢を重ねた主人公が、同じ境遇の幼馴染と川釣りで出会って、お家の口減らしのために立会いに及びます。「いたずら書き」では、藩主側近の1人である御小姓頭取の主人公に、藩主が内容を知る必要はないといわれた書状を評定所前箱に投函するよう命じられたものの、藩主のためにどうすればいいかを考え続けます。「江戸染まぬ」では、主人公は1年限りの武家奉公の主人公が、隠居した前藩主のお手がついて子をなした女中の宿下がりに付き添い、下女のために資金調達を志してスキャンダルを売ろうとします。「日和山」では、婿入り先が見つかったばかりの旗本家の次男が、戯作の書写で重追放となった父親や嫡男と別れて、太刀を打って中間奉公しながら、伊豆の賭場の用心棒に収まり、新しい時代の到来を見ます。「台」では、これも武家の次男が主人公となり、嫡男が惚れているのではないかと疑った下女をモノにすべく家に戻って学問に励みますが、その下女が祖父の子をなしてしまい、学問に励んだ挙げ句、優秀な成績で取立てられてしまいます。表題作の「江戸染まぬ」を基に長編『底惚れ』ができたらしく、中央公論文芸賞と柴田錬三郎賞をダブル受賞しています。ただ、私は不勉強にして『底惚れ』は未読です。本書に収録された短編は謎解きやミステリめいたところはそれほどなく、むしろ、時代小説の純文学、というところがあって、それほど明確な落ちのある短編は少なかった気がします。でも、時代小説の黄金期である江戸の徳川期を舞台に、侍を主人公に据えた短編も多く、私好みといえます。

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次に、津村記久子『サキの忘れ物』(新潮文庫)を読みました。著者は、『ポストスライムの船』で芥川賞を受賞した純文学の小説家です。不勉強な私でも『ポストスライムの船』は読んでいたりします。本書は9話の短編が収録された短編集です。収録作品は順に、表題作の「サキの忘れ物」、「王国」、「ペチュニアフォールを知る20の名所」、「喫茶店の周波数」、「Sさんの再訪」、「行列」、「河川敷のガゼル」、「真夜中をさまようゲームブック」、「隣のビル」となります。短編小説のご紹介が続いて、少し疲れてきたのですべての短編ではなく、印象的だったのをいくつか取り上げます。まず、表題作の「サキの忘れ物」では、高校を中退して病院内の喫茶店でアルバイトをする主人公が、喫茶店の常連客の女性が忘れていった「サキ」の作品を読むことにより人生が変化してゆきます。「王国」を飛ばして、「ペチュニアフォールを知る20の名所」では、旅行先を探す主人公に対して、旅行代理店のガイドが観光名所案内の形式をとりつつ、穏当を欠くペチュニアフォールの歴史を展開して、最後の落ちがお見事です。「Sさんの再訪」では、大学時代には「S」のイニシャルの友人がおおく、しかも、日記をイニシャルでつけていたために混乱する主人公のコミカルな思い出と現実が交錯します。「行列」では、美術館らしいが、実のところ何を目的にしている行列なのかが明確でない中で、主人公と同じ行列に並ぶ人びとのあいだに起こる不協和音のような出来事を綴っています。とってもシュールです。「河川敷のガゼル」では、小さな町の河川敷に迷い込んだガゼルを見守る警備員のアルバイトをしている休学中の大学生を主人公が、ガゼルや自然保護のために何が必要かを考えます。「隣のビル」では、トイレ休憩の長さにまで文句をいいだす常務のパワハラに悩まされている主人公が、ある日、隣のビルは実は手を伸ばせば届きそうに近いという事実に気づいて、パアハラ常務のいる職場の日常から一歩踏み出すことを考えます。たぶん、真っ当な読者であれば、冒頭に収録されている表題作の「サキの忘れ物」とか、最後の「隣のビル」が一番印象的なのでしょうが、私のようなひねくれた読者は、「ペチュニアフォールを知る20の名所」や「行列」といった不自然極まりない不穏当な作品も大好きだったりします。

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2023年10月 6日 (金)

またまた大きな雇用増を記録した9月の米国雇用統計をどう見るか?

日本時間の今夜、米国労働省から9月の米国雇用統計が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、非農業部門雇用者数の前月差は本日公表の9月統計では+336千人増となり、失業率は前月から横ばいの3.8%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を最初の4パラ引用すると以下の通りです。

Jobs report shows payrolls grew by 336K jobs in September while unemployment held at 3.8%
U.S. employers stepped up hiring sharply in September, adding a booming 336,000 jobs despite high interest rates and inflation.
The unemployment rate held steady at 3.8%, the Labor Department said Friday.
Economists had estimated that 170,000 jobs were added last month, according to a Bloomberg survey.
Job gains for July and August were revised up by a combined 119,000, pushing the advances for each month over 200,000 and painting a more robust picture of summer hiring than previously thought.

よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが広がった2020年4月からの雇用統計は、やたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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ということで、引用した記事の3パラめにあるように、米国非農業部門雇用者の増加についてBloombergでは市場の事前コンセンサスを+170千人増くらいと見込んでいただけに、実績の+336千人増は大きく上振れした印象です。ひとつの節目と見られている+200千人増を上回っていますし、直前の7~8月の雇用者数が+236千人増と+227千人増に、それぞれ上方修正されています。特に、3%台の失業率は歴史的に低い水準を続けているわけですので、米国労働市場の過熱感は継続している、と考えるべきです。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)により労働市場から退出した一定部分がまだ戻っていないという背景はありますし、インフレ高進に対応して連邦準備制度理事会(FED)が強力な金融引締めを継続しているのも事実です。また、労働市場の加熱感を背景にしたストライキの動向にも注意が必要です。現在もまだGMとフォードの工場で続いている全米自動車労組(UAW)のストライキにバイデン大統領も支持を表明したりしています。このストは21州43カ所の約2万5,000人のデトロイト3のUAW組合員が参加していますが、今月の統計には算入されていないと米国労働省は明らかにしていえるようです。
最後に、米国の時間あたり賃金の伸びと消費者物価(CPI)上昇率をプロットしたグラフは以下の通りです。

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改善の基調判断続く8月の景気動向指数をどう見るか?

本日、内閣府から8月の景気動向指数公表されています。統計のヘッドラインを見ると、CI先行指数が前月から+1.3ポイント上昇の109.5を示し、CI一致指数も+0.1ポイント上昇の114.3を記録しています。CI一致指数の上昇は2か月ぶりとなっています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。

景気動向一致指数、8月は2カ月ぶり改善 判断据え置き=内閣府
内閣府が6日公表した8月の景気動向指数速報(2020年=100)は、指標とされる一致指数が前月比0.1ポイント上昇の114.3で、2カ月ぶりのプラスとなった。輸出数量指数が悪化したものの、普通車や軽乗用車などの出荷増で耐久消費財出荷指数が改善した。
半導体など電子部品・デバイスの出荷が増え、鉱工業用生産財出荷指数も上向いた。
先行指数は同1.3ポイント上昇の109.5で3か月ぶりにプラス。鉱工業用生産財在庫率指数などが寄与した。電子部品・デバイスなどの出荷改善で、在庫が減少した。新規求人数もプラスで、サービス・飲食関連の求人などが増えた。
一致指数から機械的に決める基調判断は「改善を示している」とし、前月から据え置いた。

とてもシンプルに取りまとめられている印象です。続いて、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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8月統計のCI一致指数については、2か月ぶりの上昇となりましたが、その前は半年ほど連続で上昇していましたし、3か月後方移動平均は2か月連続の下降、7か月後方移動平均では4か月連続の上昇となっています。統計作成官庁である内閣府が基調判断を「改善」で据え置いています。もっとも、CI一致指数やCI先行指数を見る限り、このブログで何度も繰り返しますが、我が国の景気回復・拡大は局面の後半に入っていると考えるべきです。ただし、すでに景気後退局面に入っているわけではなさそうで、さらに、一昨日取り上げたピーターソン国際経済研究所(PIIP)の「2023年秋季世界経済見通し」のように、米国経済がソフトランディングに成功するとすれば、そう急には景気後退入はしない可能性が高い、と私は考えています。CI一致指数を構成する系列を詳しく見ると、プラスの寄与が大きい順に、耐久消費財出荷指数+0.34ポイント、鉱工業用生産財出荷指数+0.15ポイント、投資財出荷指数(除輸送機械)+0.06ポイント、などとなっており、逆に、マイナス寄与が大きい系列は、輸出数量指数▲0.57ポイント、労働投入量指数(調査産業計)▲0.02ポイントなどとなっています。
景気の先行きについては、国内のインフレや円安の景気への影響などの国内要因はについては中立的、少なくとも、大きなマイナス要因とは考えていませんが、海外要因については、インバウンドを別にすれば、たとえ米国をはじめとする先進諸国がソフトランディングに成功して景気後退を免れるとしても、インフレ対応のために金融政策が引締めを継続しているわけですから、小幅なりともマイナスであろう、と考えていています。

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2023年10月 5日 (木)

国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し分析編」World Economic Outlook Analytical Chapters やいかに?

10月3日、国際通貨基金(IMF)からIMF・世銀総会に向けて「世界経済見通し」World Economic Outlook の分析編 Analytical Chapters が明らかにされています。昨日のエントリーの繰り返しになりますが、各章のタイトルは以下の通りです。

Chapter 2
Managing Expectations: Inflation and Monetary Policy
Chapter 3
Fragmentation and Commodity Markets: Vulnerabilities and Risks

ただし、公表されたのが第3章が先で10月3日、第2章が後で10月4日、となっています。国際機関のこういったリポートに着目してメディアの報道といった2時資料ではなく1時資料に当たるのが私のこのブログの特徴のひとつですので、リポートからグラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポート第2章から Figure 2.3. Cross-Economy Distribution of Mean Inflation Expectations over Time を引用すると上の通りです。上の2つのパネルは先進国と新興国・途上国のそれぞれの12か月先の短期インフレ期待、下は5年先の長期インフレ期待です。短期インフレ期待は2021年から2022年にかけて大きく上昇しましたが、すでに反転してピークを打った可能性もあります。長期インフレ期待もジワジワと上昇し始めていますが、少なくとも中央銀行のインフレ目標にはアンカーされているのが読み取れます。

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続いて、同じくリポート第2章から Figure 2.8. Contributors to Recent Inflation Dynamics を引用すると上の通りです。インフレへの寄与について先進国と新興国に分けて分析しています。先進国ではフォワード・ルッキングな短期期待の寄与が大きく、新興国ではバックワード・ルッキングというか、静学的な期待による寄与が大きい、とかなりクッキリと差を生じているのが判ります。先進国では中央銀行から金融市場や国民へののコミュニケーションが的確に作用している、ということができます。

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さらに、リポート第3章から Figure 3.2. Commodities: Key Characteristics を引用すると上の通りです。石油や食料などの商品についてはいくつかの特徴がありますが、産出できる国が限定されており、IMFのいうように「分断」fragmentation というよりは、「集中」concentration あるいは「独占」monopoly に近い産品が少なくありません。その観点から、産出の多い上位3か国の生産集中度を見ています。3か国といわずとも、鉱物資源、特に、グリーン経済への移行に必要な非鉄金属についてはトップ生産国のシェアが大きいのが見て取れます。

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続いて、同じくリポート第3章から Figure 3.4. Signs of Fragmentation を引用すると上の通りです。ロシアによるウクライナ侵攻により、エネルギーや食料といった1次産品の地経学的な分断が深刻化しています。特に、グラフに示されているように2022年にはその分断化をさらに悪化させるような貿易制限が急増しているのが見て取れます。日本のように、エネルギーも食料も十分な国内生産のない資源小国では深刻な経済安全保障上の問題が生じる可能性も否定できません。

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続いて、同じくリポート第3章から Figure 3.9. Impact of Fragmentation on Real GDP and Inflation を引用すると上の通りです。こういった生産分断が、GDP、すなわち、成長へ及ぼす影響とインフレへの影響を経済モデルにより試算しています。1次産品7品目の分断によりGDPは▲0.3%の損失を受ける "Trade fragmentation of all seven commodities would be associated with a global GDP loss of about 0.3 percent." と指摘しています。

最後に、「世界経済見通し」の見通し編は来週の10月10日に公表される予定となっています。

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2023年10月 4日 (水)

ピーターソン国際経済研究所(PIIP)による「2023年秋季世界経済見通し」やいかに?

先月9月26日に、米国のシンクタンクであるピーターソン国際経済研究所(PIIP)から「2023年秋季世界経済見通し」Fall 2023 Global Economic Prospects が明らかにされています。サブタイトルは A soft landing beckons but is not assured であり、成長率は減速するものの、景気後退を回避してソフトランディングに落ち着く可能性が示唆されています。まず、プレゼン資料から成長率見通しの総括表 Summary of the outlook for large economies を引用すると以下の通りです。

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このテーブルには現れませんが、2020年の世界経済は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で大きく落ち込み、逆に、その反動で2021年はプラス成長を記録した後、世界経済の成長率はジワジワと減速しています。その上、昨年2022年2月末にはロシアによるウクライナ侵攻が始まり、資源高に伴うインフレが生じて、物価抑制のために先進各国が金融引締めを開始し、成長率はさらに下振れしています。そして、PIIPでは今年2023年の世界経済の成長率を+3.0%、また、来年2024年は+2.8%と見込んでいます。今年2023年7月の国際通貨基金(IMF)による「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update では、世界経済の成長率が2023年+3.0%、来年2024年も+3.0%と見込まれていましたので、ほぼ同じラインに乗っている気がします。また、日本については、2023年+1.8%、2024年1.3%の見通しとなっており、IMF見通しの2023年+1.4%、2024年+1.0%より高い成長率が見込まれています。これはコロナ禍からの正常化が遅れた反動による部分が大きい Japan is seeing demand pick up after deleyed reopening と考えられているようです。

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続いて、ヘッドラインとなる成長率見通しの次に注目度の高いインフレ率の見通しは上のグラフの通りです。IMF「世界経済見通し改定」では、世界のインフレ率は2023年+6.8%、2024年+5.2%、うち、先進国2023年+4.7%、2024年+2.8%に対して、新興国・途上国では2023年+8.3%、2024年+6.8%でしたので、PIIPの見通しはさらにいっそうの物価の落ち着きを見込んでいるといえそうです。

なお、日本時間で昨日10月3日の夜に国際通貨基金(IMF)から10月のIMF世銀総会に向けた「世界経済見通し」World Economic Outlook の分析編 Analytical Chapters が明らかにされ始めています。各章ののタイトルは以下の通りです。昨日に第3章が記者発表されており、そして、日本時間本日夕刻に第2章がローンチされます。また、日を改めて取り上げたいと思います。

Chapter 2
Managing Expectations: Inflation and Monetary Policy
Chapter 3
Fragmentation and Commodity Markets: Vulnerabilities and Risks

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2023年10月 3日 (火)

東京商工リサーチ「国内製造拠点の閉鎖、2021年をピークに鈍化が鮮明」のリポートやいかに?

やや旧聞に属するトピックながら、9月22日に東京商工リサーチから「国内製造拠点の閉鎖、2021年をピークに鈍化が鮮明」と題するリポートが明らかにされています。昨日公表された日銀短観でも、先行き製造業の業況判断DIが改善するのは、非製造業と違って、円安の効果が見られるからである、と指摘したところですが、このリポートでは本格的に製造業の国内回帰の動きを報告しています。まず、東京商工リサーチのサイトから 製造拠点の「閉鎖・縮小」開示数推移 のグラフを引用すると以下の通りです。

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こういった調査ですので、上場メーカーに限定されるのですが、国内工場や製造拠点の閉鎖や縮小に関する開示は、コロナ禍前の2019年は17社・22拠点でした。しかし、コロナ禍による急激な市場縮小により、2020年27社・37拠点、2021年40社・45拠点に急増しています。その後、コロナ禍の影響が次第に落ち着くとともに、円安の影響をはじめとして、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う海外サプライチェーンに関するリスク認識の高まりなどもあって、2022年は28社・37拠点と製造拠点の海外移転に歯止めがかかりつつあります。さらに、今年2023年は8月末までながら昨年2022年の半分ほどにとどまっています。
もちろん、この空洞化の動きが鈍化している経済的な背景は、円安による価格効果だけではないことは当然です。繰り返しになりますが、地政学的な海外サプライチェーンのリスク認識も高まっています。ただ、経済的には中国をはじめとするコスト面での海外展開の有利性が低下していることも事実です。私はこの夏休みの紀要論文で財政赤字を一方的にコストだけで考えるのではなく、財政赤字がもたらすメリットも含めてコスト・ベネフィットを考える必要があると結論しました。円安もまったく同じで、インフレへの影響というコスト面だけで考えるのではなく、産業空洞化の動きをわずかなりとも防止するメリットも考え合わせる必要がある、と指摘しておきたいと思います。

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2023年10月 2日 (月)

予想を上回る業況判断の改善を見せた日銀短観9月調査の結果をどう見るか?

本日、日銀から9月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは36月調査から+4ポイント改善して+9、また、大企業非製造業も+4ポイント改善の+27となりました。大企業製造業では2四半期連続の改善です。また、本年度2023年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+13.0%の大きな増加が見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業の景況感、2期連続で改善 9月日銀短観
日銀が2日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回の6月調査(プラス5)から4ポイント改善してプラス9だった。2期連続で改善した。自動車生産が回復し、非製造業も新型コロナウイルスの影響が和らいで幅広い業種で改善が続いた。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値。9月調査の回答期間は8月29日~9月29日。回答率は99.4%だった。
大企業製造業の業況判断DIはプラス9と、QUICKが集計した民間予想の中心値(プラス6)を3ポイント上回った。供給制約の緩和で生産の回復が進む自動車が10ポイント改善しプラス15、石油・石炭製品は20ポイント改善しプラス14となった。紙・パルプや化学など幅広い業種で価格転嫁の進展も聞かれたという。
一方、海外経済の減速による需要の低迷が響いた業種もあった。はん用機械は7ポイント悪化しプラス11、生産用機械も6ポイント悪化のプラス14だった。半導体関連の需要が弱く、電気機械は4ポイント悪化した。
非製造業はコロナ禍からの経済再開やインバウンド(訪日外国人)の増加で景況感の改善が続く。大企業非製造業の業況判断DIは4ポイント改善しプラス27と市場予想(プラス24)を3ポイント上回った。6期連続で改善し、1991年11月調査以来の高水準となった。
先行きの見通しは大企業製造業は1ポイント改善しプラス10、大企業非製造業は6ポイント悪化しプラス21を見込む。製造業では自動車生産の回復が他の業種にも波及する期待がある一方、非製造業では足元の円安・原油高などを受けて原材料コスト高の懸念がくすぶる。
企業が原材料などのコストを販売価格に転嫁する動きは鈍化してきた。販売価格が「上昇」との回答から「下落」の割合を引いた販売価格判断DIは大企業製造業で2ポイント悪化しプラス32だった。仕入れ価格判断DIも大企業製造業で4ポイント悪化のプラス48と落ち着きを見せる。
企業の消費者物価見通しはなお高水準だ。全規模全産業の1年後の見通し平均は前年比2.5%上昇だった。3年後見通しは2.2%、5年後見通しは2.1%となった。いずれも6月調査からほぼ横ばいで、政府・日銀が目標としている2%の水準を上回る。
企業の事業計画の前提となる2023年度の想定為替レートは全規模全産業で1ドル=135円75銭と、6月調査の132円43銭から円安方向に傾く。足元の円相場は1ドル=149円台で推移する。

いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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先週月曜日の9月25日のエントリーで日銀短観予想を取りまとめた際にも書いたように、業況判断DIに関しては横ばい圏内ないしは小幅ながら2四半期連続の改善との予想であり、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、大企業製造業が前回6月調査から+1ポイント改善の+6、非製造業も同じく+1ポイント改善の+24、となっています。実績としては、短観のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIが6月調査から+4ポイント改善、また、大企業非製造業でも+4ポイントの改善となりました。レンジの上限が、大企業製造業で+9、大企業非製造業で+26でしたので、この上限ギリギリか、あるいは、少し超えた、ということですので、足元についてはやや上振れした印象なのです。ただし、先行きの景況感については、製造業については大企業・中堅企業・中小企業のすべての規模で、改善の方向が示唆されている一方で、非製造業では逆に大企業・中堅企業・中小企業のすべての規模で悪化が見込まれています。業種別に先行き景況感の方向性のバラツキが大きく、明暗が分かれた印象、と私は受け止めています。大企業の先行き業況判断DIを詳しく見ると、まず製造業では、はん用機械、生産用機械、電気機械などが先行き景況感の改善を見込んでいる一方で、自動車、業務用機械、食料品が悪化となっています。特に、食料品は物価上昇による消費へのダメージが意識されているものと私は想像しています。また、非製造業でも卸売や小売が悪化を見込んでおり、インフレによる消費の停滞といった懸念が大きいのではないか、と私は考えています。別の角度から見て、製造業で先行きの景況感が改善するには、足元の円安効果が反映されていると考えるべきです。2023年度の事業計画の前提としている想定為替レートは、6月調査時点では132.43\/$だったのですが、9月調査ではジワリと135.75\/$に修正されています。輸入インフレを招くとメディアで評判の悪い円安ですが、いく分なりとも輸出に依存する製造業にとってはマインド改善のひとつの要因でもあります。

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続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。経済学的な生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としては過剰感の払拭と不足感の拡大が見られます。特に、雇用人員については足元から目先では不足感が強まっている、ということになります。ただし、何度もこのブログで指摘しているように、賃金が上昇するという段階までの雇用人員の不足は生じていない、という点には注意が必要です。すなわち、不足しているのは低賃金労働者であって、賃金や待遇のいい decent job においてはそれほど人手不足が広がっているわけではないのではないか、と私は想像しています。加えて、我が国人口がすでに減少過程にあるという事実が、かなり印象として強めに企業マインドに反映されている可能性があります。ですから、マインドだけに不足感があって、経済実態として decent job も含めた意味で、どこまでホントに人手が不足しているのかは、私には謎です。賃金がサッパリ上がらないからそう思えて仕方がありません。特に、雇用については不足感が拡大する一方で、設備については不足感にまで突入していません。要するに、低賃金労働者が不足しているだけであって、低賃金労働の供給があれば、生産要素感で代替可能な設備はそれほど必要性高くない、ということの現れと考えられます。私も授業向けにデータをチェックしましたが、Penn World Table のデータでは、就業者当たりの資本ストックで見て日本はG5で最低水準にあり、しかも、ここ10年ほどで減少していることは明らかです。これは、平口良司『入門・日本の経済成長』(日本経済新聞出版)p.74図4-4に触発されて調べてみたので確実です。日本では低賃金と投資不足が負のスパイラルに陥っているわけです。賃金が低水準にあるので資本ストックではなく低賃金労働者で代替し、投資が進まないので資本装備率が高まらず、したがって、労働生産性も上がらない、という悪循環です。

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日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。設備投資計画に関しては、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、大企業全産業で+13.7%増となっています。実績は大企業全産業の設備投資計画は+13.6%でしたので少し下振れました。規模別に見ると、繰り返しになりますが、大企業が+13.6%増、そして、中堅企業が+15.9%増、中小企業が+8.0%増と見込んでいます。大企業よりも中堅企業の方が設備投資のより大きな増加を見込んでいるわけです。雇用と資本の生産要素間の代替関係が垣間見えます。大企業は雇用者を増加しやすいのに対して、ch空拳企業では雇用者の応募が少ないリスクが有り、資本で代替するのかもしれません。いずれにせよ、日銀短観の設備投資計画のクセとして、年度始まりの前の3月時点ではまだ年度計画を決めている企業が少ないためか、3月調査ではマイナスか小さい伸び率で始まった後、6月調査で大きく上方修正され、景気がよければ、9月調査ではさらに上方修正され、さらに12月調査でも上方修正された後、その後は実績にかけて下方修正される、というのがあります。その意味で、まあ、通常の動きの範囲ではなかろうか、と私は受け止めています。現時点では最後の着地点がどうなるか、これまた、先進国の金融引締めと景気動向を考え合わせると不透明です。

最後に、引用した記事の最後から2パラ目にあるように、依然として物価予想が高止まりしています。全規模全産業で見て、1年後の消費者物価上昇率は前年比+2.5%上昇3年後+2.2%、5年後+2.1%となっています。ただ、自社の販売価格については、現在の価格と比較して、1年後+2.8%、3年後+3.8%、5年後+4.4%ですから、少なくとも足元の1年間は、自社製品の販売価格の値上げの方が平均的な物価上昇よりも高い、と見込んでいるようです。

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2023年10月 1日 (日)

近江鉄道バスの敬老パス「小判手形」を買い求める

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先月9月に私は65歳の誕生日を迎えています。東京であれば、70歳以上にはシルバーパスが利用できますし、京都であれば71歳以上で敬老乗車証が取得できます。東京の制度はもはや興味ないんですが、京都の制度については給与所得で年収約900万円未満が対象だそうで、私は今年については多分対象外です。しかしながら、近江鉄道バスにはさらに強力な敬老パスがあり、「小判手形」と呼ばれていて、6か月券で9,300円を払えばどこまで乗っても100円でバスが利用できる制度があります。
我が家の近くのバス停から勤務校までバス代は320円します。ですから、通勤で片道220円オトクなわけです。9,300を220で割って、6か月のうちに40回少々通勤で使えばペイするわけで、往復で20回少々ですから、ちゃんと通勤すれば、という前提ではありますが、ひと月ほどで元が取れる勘定です。秋学期に入って、明日からこれで大学まで通います。

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