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2023年10月12日 (木)

足踏み続く8月の機械受注と国内物価上昇率が2%まで縮小した9月の企業物価指数(PPI)をどう見るか?

本日、内閣府から8月の機械受注が、また、日銀から9月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。統計のヘッドラインを見ると、民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比▲1.1%減の8449億円となっている一方で、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比で+3.2%上昇したものの、上昇率は8か月連続で鈍化しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから手短に引用すると以下の通りです。

機械受注8月0.5%減、2カ月連続マイナス 金融落ち込み
内閣府が12日発表した8月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」(季節調整済み)は前月比0.5%減の8407億円だった。マイナスは2カ月連続となる。金融業・保険業を中心に非製造業からの発注が3.8%減少した。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は0.3%増だった。内閣府は全体の基調判断を10カ月連続で「足踏みがみられる」とした。
非製造業は3カ月ぶりに減少した。業種別でみると金融業・保険業からの発注が15.8%減って全体を押し下げた。マイナスは2カ月連続となる。大型コンピューターやサーバーなどが含まれる電子計算機などの需要が落ち込んだ。
卸売業・小売業は16.7%増とプラスを確保した。コンベヤーといった運搬機械や電子計算機などの発注が増えた。非製造業ではリース業や通信業も前月から増えた。
製造業は2.2%増と2カ月ぶりにプラスだった。「自動車・同付属品」からの発注が15.0%伸びた。金属加工機械や工作機械の発注増が寄与した。
運搬機械などの発注が増えて「汎用・生産用機械」も4.9%高まった。化学機械などが増えた「化学工業」は前月と比べ約3倍となった。
船舶・電力を除く民需は、単月の振れを除くために算出した6~8月の3カ月移動平均では前期に比べて0.4%増えた。
企業物価、9月2.0%上昇 9カ月連続伸び鈍化
日銀が12日発表した9月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は119.3と、前年同月比で2.0%上昇した。8月(3.3%)から1.3ポイント低下し、上昇率は9カ月連続で鈍化した。飲料や食料品などで価格転嫁の継続がみられたが、ガソリン補助金の拡充などからプラス幅は限定的だった。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。9月の上昇率は民間予測の中央値(2.3%上昇)を0.3ポイント下回った。公表している515品目のうち424品目が値上がりした。
品目別にみると、電力・都市ガス・水道は前年同月比18.0%の下落だった。4~6月の燃料費が遅れて反映される調整単価が低下したことが影響した。日銀の試算によると、政府が2月から実施している電気・ガスの価格抑制策も企業物価指数を前年同月比で約0.6ポイント押し下げたという。
一方、石油・石炭製品は前年同月比3.2%上昇した。ガソリン価格の急騰を抑える政府の補助制度の影響で8月(7.4%上昇)から上昇幅が4.2ポイント縮小した。
輸入物価は円ベースで前年同月比14.0%下落した。原油高が進んでいた22年同時期の反動で6カ月連続でマイナス圏となった。8月(マイナス11.4%)より下落幅が拡大した。

続いて、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事では市場の事前コンセンサスが0.3%増と報じていますが、私が確認した限りでは、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比+0.1%増でした。いずれにせよ、ほぼ横ばい圏内の予想でしたから、実績の▲0.5%減はやや下振れた印象です。もっとも、予想レンジの範囲内ですし、もともとが単月での振れの大きな指標ですので、前月比プラスとマイナスの符号の違いがあるとはいえ、サプライズではなかったと私は考えています。引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いています。10か月連続での基調判断の据え置きだそうです。上のグラフで見ても、太線の移動平均で示されているトレンドとして下向きとなっている可能性が読み取れると思います。ただし、受注水準としてはまだ8,000億円をかなり上回っており決して低くはありません。「足踏み」という基調判断のひとつの根拠は、4~6月期の見通しでは、前期比+4.6%増の2兆7926億円と見込まれていたところ、実績では3.2%減の2兆5855億円にとどまりましたし、加えて、7~9月期の見通しは、製造業・非製造業ともに減少し、コア機械受注で見て▲2.6%減の2兆5,174億円と見込まれている点にあると私は考えています。特に、本日公表された8月統計では、製造業が季節調整済みの前月比で+2.2%増の4157億円であった一方で、船舶・電力を除く非製造業が▲3.8%減の4209億円と明暗が別れました。ソフトランディングが期待される海外経済に支えられて、製造業が牽引役となって回復する可能性がある、と私は考えています。他方で、インフレのダメージが決して無視できない内需に依存する割合の高い非製造業の受注拡大が今後の課題となります。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。引用した記事にあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+2.3%と見込まれていましたので、実績の+2.0%はやや下振れしました。引用した記事には、「上昇率は9カ月連続で鈍化した」となっていますが、特に輸入物価は4月統計から前年同月比でマイナスに転じ、9月統計では輸入物価▲11.8%の下落となっています。私が調べた限りでも、輸入物価のうちの原油については、これも4月統計から前年同月比マイナスに転じており、9月統計では▲14.0%の下落を記録しています。したがって、資源高などに起因する輸入物価の上昇から国内物価への波及がインフレの主役となる局面に入った、と私は考えています。ですので、日米金利差にもとづく円安の是正については、経済政策として取り組む必要はそれほど大きくなくなった、と考えるべきです。消費者物価への反映も進んでいますし、企業間ではある意味で順調に価格転嫁が進んでいるという見方も成り立ちます。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比で少し詳しく見ると、ウッド・ショックとまでいわれた木材・木製品が反転して▲20.4%の大きな下落を記録しており、電力・都市ガス・水道も▲18.0%と下落幅を拡大しています。前年同月比で上昇している品目でも、農林水産物+6.9%、飲食料品+5.4%の上昇のほか、窯業・土石製品+14.5%、パルプ・紙・同製品+13.7%、金属製品+7.3%、非鉄金属+5.7%、鉄鋼+1.1%となっていて、多くの品目でジワジワと上昇率が低下してきています。もちろん、上昇率が鈍化しても、あるいは、マイナスに転じたとしても、価格水準としては高止まりしているわけですし、しばらくは国内での価格転嫁が進むでしょうから、決して物価による国民生活へのダメージを軽視することはできません。特に、農林水産物の価格上昇が続いていて、その影響から飲食料品についても高い上昇率を続けています。生活に不可欠な品目ですので、政策的な対応は必要かと思いますが、エネルギーのように市場価格に直接的に介入するよりは、消費税率の引下げとか、所得の増加などで市場メカニズムを生かすのが望ましい、と私は考えています。

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