金利上昇で消費はどういった影響を受けるか?
今年2023年7月末に「展望リポート」が明らかにされた金融政策決定会合において、金融政策は大規模な異次元緩和から引締めに方向転換されたと私は受け止めています。すなわち、7月28日に「当面の金融政策運営について」が公表され、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)では「長期金利の変動幅は『±0.5%程度』を目途とし、長短金利操作について、より柔軟に運用する。10年物国債金利について1.0%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。」と決定され、この「イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用の柔軟化」により、「10年もの国債のイールドは実際には+1%に張り付くことになります。」と私は7月28日付けのブログに書いています。
そして、実際に8月に入って日本円OISレートなどがジワジワと上昇し始めており、特に、住宅ローンの変動金利上昇により消費減少効果が20年前の2.4倍、2%の金利上昇で消費を▲0.5%下押しすると日本総研のリポート「住宅ローンの変動金利上昇、消費減少効果は20年前の2.4倍」で試算されています。以下のグラフの通りです。
こういった金利変動が住宅ローンを通じて消費に大きな影響を及ぼす背景には、変動金利型住宅ローンの普及があります。特に、変動金利型住宅ローン残高は130兆円と20年前の2.6倍に増加して降り、その影響が大きくなっている点をリポートでは指摘しています。現在の日銀は黒田総裁の時代から大きく様変わりして旧来の姿勢に戻っていて、異次元緩和への反動として無批判的に金融引締めを志向しているように私には見えていて、さらに、物価上昇への対抗措置としての円高誘導を支持するメディアの姿勢も相まって、金利引上げに前のめりになっている姿が浮き彫りになっています。しかし、従来から指摘しているように、経済は部分均衡で考えるのではなく、すべての経済要因が同時に決まる一般均衡的な思考が必要とされます。金利が引き上げられれば、リポートで分析されているように家計の消費がマイナスの影響を受けますし、当然ながら、企業の設備投資はもっと金利に敏感に反応して減少する可能性が高いと考えるべきです。その意味で、金利が引き上げられると何が起こるのか、物価対策だけでなくマクロ経済や景気にどういった影響が生じるのか、しっかりと考えておく必要があります。
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