再加速した10月の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?
本日、日銀から10月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月から加速して+2.3%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIについても上昇幅が拡大し+2.4%の上昇を示しています。ヘッドライン上昇率は8月統計から上昇幅が再加速しています。また、32か月連続の前年比プラスを継続しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業向けサービス価格10月2.3%上昇 3年9カ月ぶり上げ幅
日銀が27日発表した10月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は110.0と、前年同月比2.3%上昇した。上昇率は9月(2.0%)より拡大し、20年1月以来3年9カ月ぶりの大きさとなった。広告で企業の出稿意欲が改善したほか、サービス分野などで人件費上昇を転嫁した値上げが見られた。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格変動を表す。調査対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは100品目、下落は27品目だった。
広告が前年同月比2.9%上昇した。スポーツイベントで単価が押し上げられ、9月は下落だったテレビ広告が上昇に転じた。運輸・郵便は1.3%上昇だった。中東情勢の悪化でタンカー市況が上昇し、宅配便の一部などで燃料費や人件費を転嫁した値上げも聞かれた。
2.7%上昇だった諸サービスは機械修理や労働者派遣サービスなどで人件費の上昇が影響した。宿泊サービスはインバウンド(訪日外国人)を含めた人流の回復で49.9%と大きく上昇した。
コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業物価指数(PPI)の上昇トレンドは2022年中に終了した可能性が高い一方で、企業向けサービス物価指数(SPPI)はまだ上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、景気後退期を示しています。
上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率の昨年2022年以降の推移は、2022年9月に上昇率のピークである+2.1%をつけてから、ジワジワと上昇率は低下し今年2023年に入って6月統計で+1.5%まで縮小した後、7月統計から再加速が始まり、7月+1.7%、8月+2.1%、9月+2.0%の後、本日公表された10月統計では前月からさらに加速して+2.3%の上昇率を記録しています。ただ今年2023年年央から上昇率が再加速したとはいえ、大雑把な流れとしては、+2%前後の上昇率が継続しているようにも見えます。もちろん、+2%前後の上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性が高いながら、日銀の物価目標、これは生鮮食品を除く消費者物価上昇率ですが、物価目標の+2%近傍であることも確かです。加えて、下のパネルにプロットしたように、モノの物価である企業物価指数のうちの国内物価のグラフを見ても理解できるように、インフレ率は高いながら、物価上昇がさらに加速するわけではないんではないか、と私は考えています。繰り返しになりますが、ヘッドラインSPPI上昇率にせよ、国際運輸を除いたコアSPPIにせよ、日銀の物価目標とほぼマッチする+2%程度となっている点は忘れるべきではありません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて10月統計のヘッドライン上昇率+2.3%への寄与度で見ると、宿泊サービスや機械修理や労働者派遣サービスなどの諸サービスが+0.96%ともっとも大きな寄与を示しています。引用した記事にもある通り、特に、宿泊サービスは前月比で+31.7%、前年同月比で+49.9%と大きな上昇となっています。ほかに、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスといった情報通信が+0.58%、リース・レンタルが+0.23%、加えて、SPPI上昇率再加速の背景となっている石油価格の影響が大きい道路旅客輸送や国内航空旅客輸送や鉄道旅客輸送などの運輸・郵便が+0.22%のプラス寄与となっています。
最後に、「宅配便の一部などで燃料費や人件費を転嫁した値上げ」などの引用した記事にみられる通り、資材などの仕入れ価格や人件費の上昇分を価格転嫁する動きが広がっている点は、ある意味で、健全な経済活動といえます。少なくとも、下請けの中小企業がコストアップ分の価格引上げを納入先の大企業に拒否されるよりは価格転嫁できる方が経済的には健全である、と私は受け止めています。
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