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2023年11月 6日 (月)

岸田内閣の減税案で物価対策は十分か?

「デフレ完全脱却のための総合経済対策」が11月2日に閣議決定されています。総合経済対策の柱と財政支出を内閣府のサイトにある「『デフレ完全脱却のための総合経済対策』の経済効果」から引用すると以下の通りです。

Ⅰ. 物価高から国民生活を守る
6.3兆円程度
Ⅱ. 地方・中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と
地方の成長を実現する
3.0兆円程度
Ⅲ. 成長力の強化・高度化に資する国内投資を促進する
 
4.7兆円程度
Ⅳ. 人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革を
起動・推進する
1.6兆円程度
Ⅴ. 国土強靱化、防災・減災など国民の安全・安心を確保する
 
6.1兆円程度

そして、同じ内閣府のサイトから、総合経済対策による経済押上げ効果を画像で引用すると以下の通りです。

photo

しかし、先週、第一生命経済研究所から2本のリポートが明らかにされ、この総合経済対策について検証しています。まず、「所得減税と消費減税の効果の違い」では、今回の総合経済対策に盛り込まれているような給付金や所得減税であれば、それらの一部は貯蓄に回ることから、一般的に、所得減税よりも消費減税の乗数の方が高く、実証的には、内閣府の短期日本経済マクロ計量モデル(2022年版)の乗数をもとに、消費減税の経済効果となる乗数は1年目では所得減税の2倍以上になる、と指摘しています。以下のグラフはリポートから引用しています。

photo

加えて、別の第一生命経済研究所のリポート「所得税減税にある歪み」では、1人当たり4万円の所得税減税の恩恵に偏りがあり、2人以上世帯であれば物価上昇分をカバーできる一方で、単身世帯では3%の物価の負担増を4万円の減税ではカバーできない、と指摘しています。特に、年収169万円以上の単身世帯では3%に及ぶ物価上昇の負担増をカバーできず、これは単身世帯のうち94.3%に上る、との試算結果が示されています。試算結果を示した下のテーブルは、リポートから引用しています。

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2本目のリポートはそれほどでもないのですが、1本目の「所得減税と消費減税の効果の違い」は重要な論点を含んでいます。私は、2020年の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの初期から消費税率引下げを選択肢として考えるべきと主張してきました。加えて、2022年のウクライナ戦争からインフレ高進が始まり、景気の下支えと物価対策の両面から消費税率の引下げが大きな効果を発揮すると考えています。政府の政策選択肢に入っていないのは私には理解が及びません。

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