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2023年11月29日 (水)

国際決済銀行(BIS) による BIS Paper "Inflation and labour markets" やいかに?

先週11月24日に国際決済銀行(BIS)から BIS Paper "Inflation and labour markets" が公表されています。もちろん、pdfによる全文リポートもアップロードされています。公表はつい最近なのですが、このリポートの内容は今年2023年3月16-17日に開催された新興国中央銀行副総裁による国際会議 "Inflation and labour markets in the wake of the pandemic" の結果を取りまとめたものです。新興国の中央銀行副総裁による会議ですから我が国における注目は決して高くなかった上に、ロシアによるウクライナ侵攻という要素が薄かったもの注目度を上げなかった要因だろうという気がしますが、せんしんこくにくらべてた新興国のインフレにつてい、今回のコロナ禍における特徴をよく取りまとめているという気がします。まず、BISのサイトからペーパーの概要を引用すると以下の通りです。

Inflation shot up in both emerging market economies (EMEs) and advanced economies (AEs) in the wake of the Covid-19 pandemic. While labour market developments were not a key source of the surge, they could become important for the persistence of inflation and, thus, the path of disinflation. Despite this, there is comparatively little work on how labour market developments affect inflation in EMEs, quite in contrast to a substantial body of work in AEs. Instead, attention has mostly focused on other inflation drivers, for instance exchange rates. To fill this gap, the Bank for International Settlements dedicated its annual meeting of emerging market Deputy Governors to the topic of "Inflation and labour markets in the wake of the pandemic". The meeting was held in Basel 16-17 March 2023.
The current volume contains a background paper by BIS staff as well as contributions by the participating central banks. Using the responses to a survey of EME central banks, the BIS background paper analyses the structure of labour markets in EMEs, wage formation and the relationship between wages and inflation. While there are important parallels, there are also notable differences across countries, both within and between regions. For example, a few countries feature strong unions and collective bargaining, while these are mostly absent from others. Such parallels and differences are also apparent in the central bank contributions, which dig deeper into individual country cases.

この論文集にはアルファベット順で、アルゼンティン、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、香港、など20か国の中央銀行副総裁がリポートを寄せています。その中で、p.85 から中国のリポート "Labour market and inflation: the case of China" に着目すると、日本と同じでフィリップス曲線が年を経るごとにフラットになっていくのが観察されています。

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上のフィリップス曲線のグラフはリポートから p.92 Graph 6 Relationship between China's inflation and growth を引用しています。明らかに年を経てフィリップス曲線がフラットに変化して行き、かつ、横軸であるy切片も小さくなっています。本来であれば、縦軸はGDP成長率ではなく、GDPギャップ、すなわち、統計から観察される実績GDPと潜在GDPの実績に対する比率、とすべきであろうと思いますが、第1次アプローチとしては実績の成長率でOKでしょう。おそらく、年を追ってフィリップス曲線の傾きがフラットになり、縦軸のy切片が小さくなってきているという意味で、同じことが多くの先進国、日本も含めての多くの国に当てはまっているのだろうと思います。加えて、このリポートで強調されているように、中国の場合は都市と農村の間で、また、産業間や地域間での労働移動の増加が大きく、少なくとも短期には労働市場のタイト化は、先進国や他の新興国に比べて、賃金上昇やインフレに対する大きな圧力にはなっていない可能性が高いと私も考えています。

最終的な結論を得るまでには至りませんが、ノーベル経済学賞も受賞したフェルペス教授らによる垂直のフィリップス曲線や自然失業率、などという仮説はほとんど意味をなさず、むしろ、フィリップス曲線は水平かもしれない、という仮説が出てくる可能性が示唆されているのかもしれません。そうなったら、中央銀行はその昔の日銀が主張するように物価に対する政策手段を持たない可能性すらあります。

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