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2023年11月16日 (木)

赤字を計上した10月の貿易統計と足踏み続く9月の機械受注をどう見るか?

本日、財務省から10月の貿易統計が、また、内閣府から9月の機械受注が、それぞれ公表されています。貿易統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見て、輸出額が前年同月比+1.6%増の9兆1470億円に対して、輸入額は▲12.5%減の9兆8096億円、差引き貿易収支は▲6625億円の赤字を記録しています。機械受注の方は、民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+1.4%増の8529億円となっています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから手短に引用すると以下の通りです。

10月の貿易赤字6625億円、前年比7割縮小 資源高一服
財務省が16日発表した10月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は6625億円の赤字だった。赤字は2カ月ぶり。赤字幅は前年同月比で70.0%縮小した。資源高が一服して輸入額が減った。
輸入額は9兆8096億円で12.5%減少した。輸出額は9兆1470億円で1.6%増えた。
輸入を見ると、原油が1兆146億円で16.8%減、液化天然ガス(LNG)が4955億円で37.6%減、石炭が4231億円で45.7%減と資源関連が押し下げた。
原油はドル建て価格が1バレルあたり92.7ドルと前年同月から12.6%下がった。円建て価格は1キロリットルあたり8万6808円と10.3%下落している。
地域別では中国からの輸入が2兆3255億円で2.9%減った。電算機類や半導体など電子部品が落ち込んだ。米国は1兆134億円で4.5%減だった。航空機類や液化石油ガスの減少幅が大きかった。
輸出は半導体等製造装置が2858億円で18.2%減少した。船舶や自動車などは増えた。
地域別では中国向けが1兆6512億円で4.0%減少した。半導体など電子部品や鉄鋼が落ち込んだ。米国向けは1兆9286億円で8.4%増えた。ハイブリッド車など自動車の輸出が5536億円と37.9%増加した。
10月の貿易収支は季節調整値で見ると、4620億円の赤字だった。輸入が前月比で0.7%減の9兆2616億円、輸出が1.2%減の8兆7996億円だった。赤字幅は9.9%拡大した。
7-9月の機械受注1.8%減 2四半期連続でマイナス
内閣府が16日発表した7~9月期の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力を除く、季節調整済み)は前期比1.8%減の2兆5385億円だった。マイナスは2四半期連続。製造業、非製造業ともに発注が減少した。
9月単月の民需は前月比1.4%増の8529億円だった。プラスは3カ月ぶり。QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値の0.8%増を上回った。
7~9月期の動きを見ると、製造業は前期比2.5%減で3四半期ぶりのマイナスとなった。船舶と電力を除く非製造業は0.8%減で2四半期連続のマイナスだった。非製造業の減少幅は前期の8.8%減から縮んだ。
製造業では電気機械からの受注が12.1%減った。具体品目として大型コンピューターや半導体製造装置などの「電子計算機等」が低調だった。非製造業では金融業・保険業からの受注が9.6%減った。
内閣府は実績を見通しで割った「達成率」を公表しており、7~9月期は94.6%だった。4~6月期の89.8%から上昇した。
9月末時点の10~12月期の受注額見通しは前期比0.5%増だった。船舶と電力を除く非製造業からの受注が4.8%伸びて全体をけん引する。見込み通りであれば、3四半期ぶりのプラスとなる。
9月単月では船舶と電力を除く非製造業が前月比5.7%プラスとなった。リース業や金融業・保険業からの受注が増えた。製造業は1.8%マイナスで、化学工業や汎用・生産用機械からの受注が減った。

やたらと長くなってしまいましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、▲7400億円の貿易赤字が見込まれていたのですが、大きな額ではないとはいえ、実績の▲6625億円の貿易赤字は、ほぼジャストミートしたといえます。何らサプライズはありませんでした。他方、季節調整済みの系列の統計で見て、まだ10月統計でも貿易赤字は継続しているわけで、赤字幅は縮小したとはいえ▲5000億円近い赤字が継続していることも確かです。季節調整していない原系列の統計で見ても、季節調整済みの系列で見ても、グラフから明らかな通り、輸出額の伸びではなく輸入額の落ち込みが貿易赤字縮小の原因です。ただし、注意すべきは為替水準であり、円安については足元で1ドル150円近辺で推移しています。ですので、最近ではもう取り上げられなくなったJカーブの初期の効果が出ている可能性があります。いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、貿易収支が赤字であれ黒字であれ、輸入は国内生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観する必要はない、と考えています。
10月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が大きく減少しています。すなわち、原油及び粗油は数量ベースで▲7.3%減、金額ベースで▲16.8%減となっています。この差は単価の低下です。LNGは原油からの代替が進んだのか、数量ベースでは+6.4%増ながら、金額ベースでは▲37.6%減となっています。価格は国際商品市況で決まる部分が大きく、そこでの価格低下なのですが、少し前までの価格上昇局面でこういったエネルギー価格に応じて省エネが進みましたので、原油からの代替が進んだ可能性のあるLNGは別としても、価格と数量の両面から輸入額が減少していると考えるべきです。ただ、少しタイムラグを置いて、価格低下に見合って逆方向の輸入の増加が先行き生じる可能性は否定できません。ある意味で、エネルギーよりも注目されている食料について、穀物類は数量ベースのトン数では▲10.3%減にとどまっている一方で、金額ベースでは▲22.5%減と数量の減少を超えて輸入額が減少しています。輸出に目を転ずると、輸送用機器の中の自動車は季節調整していない原系列の前年同月比で数量ベースの輸出台数は+22.8%増、金額ベースでは+35.4%増と大きく伸びています。半導体部品などの供給制約の緩和による生産の回復が寄与しています。自動車や輸送機械を別にすれば、一般機械▲6.4%減、電気機器▲3.8%減と、自動車以外の我が国リーディング・インダストリーの輸出額はやや停滞気味です。ただし、こういった我が国の一般機械や電気機械の輸出の停滞はソフトランディングに向かっている米国をはじめとする先進各国に起因するものではなく、むしろ、10月統計を見る限り、中国向け輸出額の減少が寄与しているように見えます。すなわち、例えば、米国向け輸出額は前年同月比で+8.4%と伸びている一方で、中国向けは▲4.0%減を記録しています。国際通貨基金(IMF)の「地域経済見通し アジア太平洋編」 でも指摘しているように、中国の不動産セクターの動向が気にかかるところです。

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機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。引用した記事には「QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は0.8%」とありますが、私が確認したところ、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比+0.7%増でした。いずれにせよ、微増ないしほぼ横ばい圏内の予想でしたから、実績の+1.4%増はやや上振れた印象です。もっとも、予想レンジの範囲内ですし、もともとが単月での振れの大きな指標ですので、大きなサプライズはなかったと私は考えています。引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いています。11か月連続の据え置きだそうです。上のグラフで見ても、太線の移動平均で示されているトレンドとして下向きとなっている可能性が読み取れると思います。加えて、4~6月期▲3.2%減の2兆5855億円に続いて、7~9月期も▲1.8%減の2兆5385億円と2四半期連続で減少しています。ただ、受注水準としてはまだ8,000億円をかなり上回っており決して低くはありませんし、足元の10~12月期の受注見通しは+0.5%増の2兆5,506億円と見込まれています。引用した記事にもある通り、達成率を見ると、今年2023年4~6月期に89.8%と一瞬90%を下回りましたが、7~9月期には94.6%に上昇しています。記事にはありませんが、この達成率が90%を下回ると景気後退局面入りのサインと経験的に考えられています。
ただ、インフレ抑制のための金融引締めが進められた欧米先進国の景気減速により製造業への受注が停滞している一方で、インバウンドが本格的に増加し始めコロナ前の水準に近づきつつあることから非製造業では増加、という明暗が分かれています。本日公表された9月統計では、製造業が季節調整済みの前月比▲1.8%減の4082億円であった一方で、船舶・電力を除く非製造業が+5.7%増の4448億円となっていて、10~12月期の受注見通しでも、製造業は前期比▲3.8%減の1兆1836億円、船舶と電力を除く非製造業は+4.8%増の1兆3656億円と見込まれています。もっとも、欧米先進国で景気後退に陥ることなくソフトランディングに成功すれば、輸出が回復して製造業が盛り返すことも十分ありえます。非製造業も、この先、インフレのダメージが現れる可能性がないとはいえません。

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