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2023年11月 9日 (木)

現状判断DIが3か月連続で低下した10月の景気ウォッチャーと黒字基調が戻った9月の経常収支

本日、内閣府から10月の景気ウォッチャーが、また、財務省から9月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲0.4ポイント低下の49.5となった一方で、先行き判断DIも▲1.1ポイント低下の48.4を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+2兆7236億円の黒字を計上しています。まず、ロイターのサイトから景気ウォッチャーの記事を、日経新聞のサイトから経常収支の記事を、それぞれ引用すると以下の通りです。

街角景気10月は0.4ポイント低下、好悪材料が交錯 判断は維持
内閣府が9日発表した10月の景気ウオッチャー調査では、現状判断DIが49.5と前月から0.4ポイント低下した。DIの低下は3カ月連続。人流回復がプラス材料、物価上昇がマイナス材料という構図に大きな変化がなかったことから、景気判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」とし、前回の表現を維持した。
構成項目の3部門では、家計動向関連DIが49.5と前月から横ばい。調査先からはインバウンドや秋の行楽シーズンなど観光需要の拡大を歓迎する声があった一方、客の生活防衛意識や節約志向に対する指摘があった。
企業動向関連DIは1.5ポイント低下の49.0。調査先からは、原料価格の高騰や資材価格・物流費の値上がりなどが利益を圧迫しているとのコメントがあった。雇用関連DIは1.1ポイント低下の50.4だった。
先行き判断DIは前月から1.1ポイント低下し48.4となった。3カ月連続低下。内閣府は先行きについて「価格上昇の影響などを懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている」とした。年末年始や忘年会シーズンに期待する声が出始めているという。
経常黒字3倍の12.7兆円 4-9月、年度半期ベースで最大
財務省が9日発表した2023年度上期(4~9月)の国際収支統計の速報値によると、貿易や投資などの海外との取引状況を表す経常収支は12兆7064億円の黒字だった。前年同期から3倍に増え、年度の半期ベースで過去最大となった。
資源高の一服でエネルギー関連の輸入額が減少した。貿易収支の改善が経常黒字を押し上げた。インバウンド(訪日外国人)が増えたことに伴って旅行収支の黒字額が拡大し、サービス収支の赤字幅は縮小した。
経常収支は輸出から輸入を差し引いた貿易収支や、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支、旅行収支を含むサービス収支などで構成する。
輸入額は13.2%減の51兆266億円だった。原粗油や液化天然ガス(LNG)、石炭の輸入が減った。輸出額は微増の49兆6214億円だった。半導体不足の緩和で自動車の輸出が好調だった。貿易収支の赤字額は1兆4052億円で、赤字幅は84.7%縮小した。
為替相場は23年度上期は平均で1ドル=140円99銭と、22年度上期の134円01銭に比べて円安になった。原油価格は1バレルあたり83.52ドルで、前年同期より25.3%安くなっている。円ベースでは1キロリットルあたり7万3332円と21.2%下がった。
海外からの利子や配当の収入を示す第1次所得収支は3.9%増の18兆3768億円だった。証券投資収支の黒字が6兆1052億円と30.4%増えた。金利上昇や円安の影響を受けた。
サービス収支は2兆3347億円の赤字で赤字幅は29%縮小した。インバウンドの増加で旅行収支の黒字額は1兆6497億円と15倍ほどになった。23年4~9月の訪日客数は1258万人で、新型コロナウイルス禍前の19年同期の8割弱の水準に戻っている。
9月単月の経常収支は前年同月比で3倍超の2兆7236円の黒字だった。貿易収支は3412億円で黒字に転換した。原粗油やLNGの輸入額が減った。第1次所得収支は3兆764億円の黒字、サービス収支は2878億円の赤字だった。

とても長くなりましたが、よく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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現状判断DIは、今年2023年に入ってから、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のための行動制限が徐々にフェイドアウトするとともに、ウクライナ戦争に伴う資源高もほぼ昨年2022年10~12月期にピークを過ぎたことから、高い水準を続けていて、2月以降は50を超えていました。しかし、先月9月統計で50を割って49.9となった後、本日公表の10月統計でもさらに低下し49.5を記録しています。もっとも、長期的に平均すれば50を上回ることが少ない指標ですので、7月統計をピークに3か月連続の低下とはいえ、50近い水準は決して低くない点には注意が必要です。前月から▲1.5ポイント低下した企業動向関連も水準は49.0ですし、▲1.1ポイント低下した雇用関連ではまだ50.4と50を上回っていたりします。こういった点も考慮されているのか、いないのか、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。」で据え置いています。ただ、家計動向関連を少し詳しく見ると、COVID-19に起因していた行動制限の緩和やインバウンドの恩恵を受ける飲食関連が前月から+4.3ポイント上昇した一方で、小売関連が▲0.4ポイント低下しているなど、明らかに物価上昇の影響であると考えるべきです。ただし、このインフレはそれほど長続きしないと私は見込んでいます。また、内閣府のリポートの中の近畿の景気判断理由の概要の中から悪化の判断の理由を見ると、家計動向関連では「野菜価格の高騰や食料品の値上げにより、買い控えの動きが散見される(スーパー)。」とか、企業動向関連では「依然として価格の安い商品は売れているが、製品の値上げによる影響もあり、生産全体は徐々に減ってきている。この傾向はしばらく続くと予想される(食料品製造業)。」とかに私は目が止まってしまいました。もちろん、逆に、改善判断についても、「外国人バイヤーの動きは少し落ち着いたが、観光客による買物が増えている(百貨店)。」といった意見も見られます。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは経常黒字+3兆億円余りでしたので、実績の+2兆7236億円はやや下振れした印象です。2011年3月の東日本大震災と福島第一原発の影響を脱したと考えられる2015年以降で経常赤字を記録したのは、季節調整済みの系列で見て、昨年2022年10月統計▲3419億円だけです。もちろん、ウクライナ戦争後の資源価格の上昇が大きな要因です。ですから、経常黒字の水準はウクライナ戦争の前の状態に戻っていますし、たとえ赤字であっても経常収支についてもなんら悲観する必要はなく、資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。ただ、逆に、今年2023年4~6月期には経常黒字の名目GDP比が+4%を超える水準にまで達しています。日本の経済的なプレゼンスが大きかった時代であれば、経常収支の黒字減らしが国際的に必要であったかもしれません。でも、国際通貨基金(IMF)の経済見通しで今年2023年統計ではGDP規模でドイツに抜かれて世界第4位となる現在の日本の国際的なポジションからして、この程度の経常黒字は何ら注目を受けないようです。

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