まずまず底堅い雇用統計と2%台の伸びが続く企業向けサービス価格指数(SPPI)
本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率など、雇用統計が、また、日銀から企業向けサービス価格指数 (SPPI)が、それぞれ公表されています。いずれも11月の統計です。雇用統計では、失業率は前月から横ばいの2.5%を記録した一方で、有効求人倍率は前月から▲0.02ポイント低下し1.28倍となっています。SPPIはヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月と同じ+2.4%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIについても前月と同じ+2.4%の上昇を示しています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
11月の求人倍率1.28倍、前月比0.02ポイント低下
厚生労働省が26日に発表した11月の有効求人倍率(季節調整値)は1.28倍で前月から0.02ポイント低下した。原材料費の高騰を受けて求人を控える動きが広がっており、堅調だった宿泊・飲食サービス業でも求人が大幅に減少した。
総務省が同日発表した11月の完全失業率は2.5%で前月と同水準だった。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。11月の有効求職者数は前月比0.2%上昇した一方、有効求人数は1.5%減少した。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月比で4.8%マイナスとなった。前年同月比の下がり幅は宿泊・飲食サービス業が最も高くマイナス12.8%で、製造業でも10.5%下がった。
宿泊・飲食サービス業は、新型コロナウイルス禍から回復傾向にあった22年11月の求人の伸びの反動が大きかった。
完全失業者数は169万人で、前年同月比で4万人増えた。就業者数は6780万人で56万人伸び、16カ月連続の増加となった。仕事に就かず職探しもしていない非労働人口は4055万人だった。21カ月連続で減少した。
企業向けサービス価格、11月2.3%上昇 宿泊けん引
日銀が26日発表した11月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は110.2と、前年同月比2.3%上昇した。上昇率は10月(2.3%)から横ばいだった。宿泊サービスの上昇や人件費転嫁の動きに支えられ、4カ月連続で2%台の上昇率を維持した。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格変動を表す。モノの価格の動きを示す企業物価指数とともに消費者物価指数(CPI)の先行指標とされる。調査対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは108品目、下落は22品目だった。
宿泊サービスはインバウンド(訪日外国人)など人流の回復で、前年同月比51.8%上がった。22年10月に始まった政府の全国旅行支援が各地で終わったことも、上昇率を押し上げる要因となった。情報通信も2.4%上昇した。システムエンジニア(SE)職の賃上げを価格に反映する動きが続いている。
国際航空貨物輸送は前年同月比36.9%下落した。ウクライナ情勢や新型コロナウイルス禍の落ち着きで便数が回復し、価格が下がってきた。下落幅は10月(40.7%下落)より3.8ポイント縮小した。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、いくつかの統計を並べましたので、やや長くなってしまいました。続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。
まず、失業率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月から横ばいの2.5%と見込まれ、有効求人倍率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスも、前月から悪横ばいの1.30倍と見込まれていました。実績では、失業率は予想と同じ横ばいながら、有効求人倍率はわずかに悪化し、予測レンジの下限である1.29倍を下回りました。でも、総合的に見て、「こんなもん」という気がします。いずれにせよ、足元の統計は改善がやや鈍い面もあるとはいえ、雇用は底堅いと私は評価しています。季節調整済みのマクロの統計で見て、昨年2022年年末12月から直近の11月統計までの期間で、人口減少局面に入って久しい中で労働力人口は+56万人増加し、非労働力人口は▲81万人減少しています。就業者は+49万人増の一方で、完全失業者は+6万人しか増加しておらず、これには積極的な職探しの結果の増加も含まれていると考えるべきです。就業者の内訳として雇用形態を見ると、正規が+28万人増の一方で、非正規が+17万人増ですら、わずかながら質的な雇用も改善しているといえます。先進各国がこのまま景気後退に陥らずにソフトランディングに成功すれば、我が国の雇用も大きく悪化するとは考えにくいのではないかと思います。ですので、問題は量的な雇用ではなく賃金動向です。その意味でも、来年の春闘が気にかかります。
続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは上の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。モノの方の企業物価指数(PPI)の上昇トレンドは2022年中に終了した可能性が高い一方で、その名の通りのサービスの企業向けサービス物価指数(SPPI)はまだ上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、景気後退期を示しています。上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドライン指数の前年同月比上昇率は、今年2023年7月から+2%台まで加速し、本日公表された11月統計では+2.3%に達しています。もちろん、+2%前後の上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性が高いながら、日銀の物価目標、これは生鮮食品を除く消費者物価上昇率ですが、物価目標の+2%近傍であることも確かです。加えて、下のパネルにプロットしたように、モノの物価である企業物価指数のうちの国内物価のグラフを見ても理解できるように、インフレ率は高いながら、物価上昇がさらに加速する局面ではないんではないか、と私は考えています。繰り返しになりますが、ヘッドラインSPPI上昇率にせよ、国際運輸を除いたコアSPPIにせよ、日銀の物価目標とほぼマッチする+2%程度となっている点は忘れるべきではありません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて11月統計のヘッドライン上昇率+2.3%への寄与度で見ると、宿泊サービスや土木建築サービスや機械修理などの諸サービスが+1.11%ともっとも大きな寄与を示しています。+2.3%のほぼ半分です。引用した記事にもある通り、特に、宿泊サービスは前年同月比で+51.8%と大きな上昇となっています。ほかに、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスといった情報通信が+0.54%、加えて、SPPI上昇率高止まりの背景となっている石油価格の影響が大きい道路旅客輸送や国内航空旅客輸送や鉄道旅客輸送などの運輸・郵便が+0.22%のプラス寄与となっています。リース・レンタルについても+0.19%と寄与が大きくなっています。情報通信の価格上昇は、引用した記事にもある通り、システムエンジニア(SE)などの賃上げの反映という面があります。
最後にご参考まで、メディアで盛んに報道された1人当りGDPがG7で最下位、OECD加盟国で21番目という記事、例えば、朝日新聞「日本の名目GDP,割合最低 80年意向 1人あたりはG7最下位」、日経新聞「22年の1人あたりGDP、G7で最下位 円安で順位下げる」などの記事の1次資料は、内閣府から記者発表された以下のリンクの通りです。
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