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2023年12月30日 (土)

今週の読書は経済書なしで6冊読んで年間読書は227冊

今週の読書感想文は以下の通りです。年末最後の読書では、とうとう経済書を読みませんでした。少し体調を崩していましたので、ごく簡単に以下の通りのレビューです。
まず、今野敏『署長シンドローム』(講談社)は、竜崎と伊丹を主人公とする「隠蔽捜査」シリーズの一環ながら、大森署の藍本署長を主人公として、その美貌とほんわかとした雰囲気で周囲のおっさんをメロメロにするミステリです。織守きょうや『幻視者の曇り空』(二見書房)は連続殺人犯を追い詰めた主人公なのですが、最後の最後に大きなどんでん返しがあります。上野千鶴子・髙口光子『「おひとりさまの老後」が危ない!』(集英社新書)では誰しも迎える老後、特に介護について東大名誉教授の社会学者と介護施設の経験豊富なケアマネが対談します。三浦展『孤独とつながりの消費論』(平凡社新書)は、コロナ禍の中での孤独化をキーワードに、消費の方向性を議論しています。特に、古着をはじめとするビジネスについても論じています。岡田晃『徳川幕府の経済政策』(PHP新書)では、元禄バブルを経て幕府財政が逼迫してからの諸改革を財政だけではなく通貨改鋳、新田開墾や通商政策も含めて幅広く解説しています。瀬尾まいこ『夜明けのすべて』(文春文庫)では、月経前症候群(PMS)の女性とパニック症候群の男性がお互いを思いやって、誰もが抱える可能性のある困難に立ち向かう勇気を与えてくれる小説です。最後に、新刊書ではなく、もう3年半あまりの前の出版ですで、ここには取り上げませんでしたが、藤野可織『ピエタとトランジ 完全版』(講談社)も読みました。そのうちに、Facebookでシェアしたいと予定しています。
ということで、今年の新刊書読書は227冊となります。ほとんどをFacebookでシェアしていると思います。

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まず、今野敏『署長シンドローム』(講談社)を読みました。著者は、ミステリ、特に、警察小説の人気作家です。本書は、竜崎と伊丹を主人公とする「隠蔽操作」シリーズとして位置づけられるのですが、竜崎が電話の向こう側に登場するだけで、伊丹の方は名前すら登場しません。では誰が主人公かというと、竜崎の後任として大森署の署長として赴任した藍本小百合になります。そして、語り手は大森署副署長の貝沼です。藍本署長はその超絶な美貌とほんわかとした天然の雰囲気で、男社会の警察において周囲のおっさんをメロメロにして要求を通すという、最終兵器的な抜群の強さを発揮します。ストーリーは、アジア系と南米系のギャングが東京湾で武器や薬物の取引をするという情報に基づいて大森署に前線本部が設けられ、無事に取引を阻止しギャングを逮捕したのですが、警察や厚生労働省の麻薬取締官を絶望に追い込むような取逃がしが発覚し、その最後の後始末に当たるという形で、最後の方のどんでん返しがあります。また、藍本署長だけでなく、大森署に新たに配属された山田刑事がとんでもない能力を発揮したりします。藍本署長の判断は極めて的確で、前の竜崎の合理的な判断を彷彿とさせます。私はこのシリーズについては前々から大好きだったのですが、本書もとってもおススメです。最後の最後に、映像化するなら誰が適任かと考えてみます。決して鋭いタイプではなく、ほんわかした雰囲気で、しかも、破壊力ある美貌ですから、30代半ば後半なら北川景子か、はたまた、佐々木希か、といったところでしょうか。

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次に、織守きょうや『幻視者の曇り空』(二見書房)を読みました。著者は、ミステリ作家です。私はこの作家の作品は少し前の『花束は毒』しか読んだことがなくて、その作品では最後の舞台反転というか、どんでん返しがものすごく見事であったことに感激した記憶がありますが、この作品でも最後の最後に何ともいえないどんでん返しが待ち受けています。ストーリーは、タイトル通りに幻視者である久守一という大学生を主人公に、ホームレスなどに対するボランティア活動を行う団体を舞台に進みます。主人公はこの団体の手伝いを時折するだけで、正式なメンバーというわけではありません。そして、その団体に美大生でやや得体のしれないグレーヘアの男性が加わります。主人公は身体的な接触で幻視するのですが、その美大生の視点で人が殺される場面を幻視します。世間で話題になっている連続殺人事件とよく一致する場面を幻視することになります。しかし、主人公は幻視が未来を見ていることに気づき、次の殺人を防ぐべくいろいろと考えをめぐらせて工夫します。そして、最後に殺人者がナイフをふるって殺人を行おうとする場面に直面し、連続殺人犯は警察に取り押さえられます。しかし、このラストがすごいです。ジェフリー・ディーヴァーの長編ミステリのようにジャカスカ登場人物がいるわけではなく、これだけ登場人物が少ないにもかかわらず、しかも、語り手の主人公が未来のこととはいえ幻視できるにもかかわらず、ここまで犯人像を大きく反転させるプロットは、ミステリ作家としての著者の並々ならぬ実力の現れではないかと思います。この作者の作品を少しフォローしたい気がします。

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次に、上野千鶴子・髙口光子『「おひとりさまの老後」が危ない!』(集英社新書)を読みました。著者は、東大名誉教授の社会学者と介護の専門家であり、両者の対談を収録しています。上野教授の方はかねてより「おひとりさま」の老後について発言をしていて、本書では、対談相手の高口さんがその老後の介護の現場の見方や意見を述べています。広く知られている通り、介護保険制度の創設から20年超を経て、度重なる制度の改悪と待遇改善が滞っているため、介護現場は疲弊し利用者は必要なケアを受けられなくなりつつあります。上野教授は「在宅ひとり死」の提唱者なのですが、介護施設のプロフェッショナルとの対談により、長寿社会において誰もが迎える老後と、その介護のあり方に関して、何が重要かを浮き彫りにしています。

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次に、三浦展『孤独とつながりの消費論』(平凡社新書)を読みました。著者は、マーケターを本質としつつ、『下流社会』がベストセラーになっていて、消費分析も幅広く手がけています。本書では、主としてアンケート調査結果の独自データの活用もしつつ消費の最前線における分析を展開しています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により、国民の孤立化が進み、本書でいうところの「孤独」に基づく消費が増えているのは事実だろうと私も考えています。ただ、事例レポートで展開されているような古着ビジネスが経済社会のカギになるとは、さすがに私は考えていません。古着は確かにSDGsや循環型社会のひとつのありようではありますが、何か、本質的な要素が本書には抜けているように感じられてなりません。ただ、私の感覚が古いだけかもしれませんが、消費のカギとなる何かをエコノミストとして今後とも考えたいと思います。

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次に、岡田晃『徳川幕府の経済政策』(PHP新書)を読みました。著者は、日経新聞やテレビ東京で活躍したジャーナリストです。徳川幕府が成立したのが1603年の家康の征夷大将軍就任ですから、その後の天下泰平の時代における江戸の天下普請、そして、江戸に限らず各城下町の普請という地方公共事業に始まって、元禄バブルを経て、いずこも同じ財政逼迫により引締め政策が取られるという経緯があります。しかし、他方で、通貨改鋳により「出目」といわれる通貨発行益を手にするとか、あるいは、今でいうリフレ清濁に近いような金融政策が実行されたりもしています。本書で取り上げるのは、荻原重秀による積極財政と金融緩和、それを批判した新井白石による正徳の治の緊縮財政と金融引締め、享保の改革を主導した徳川吉宗による緊縮財政と金融引締め、しかし、享保の改革の後半では金融は緩和に転じます。田沼時代には金融緩和を継続し、積極的な成長政策も講じられ、松平定信による寛政の改革では復古主義に基づいて緊縮財政と金融引締めに転じた後、田沼の縁戚に連なる水野忠成が積極財政と金融緩和に戻すものの、徳川期最後の改革である天保の改革では水野忠邦が寛政の改革を手本に緊縮財政と金融引締めを実行する、という流れになります。もちろん、財政と金融だけではなく、株仲間による積極的なビジネス展開の支援、新田開墾による供給力の強化、蝦夷地の開発を通じたロシアとの交易をはじめとする貿易制限の緩和や強化などなど、さまざまな幕府の経済政策がいろんな転機で方向性を変えつつ実施されていくさまがよく理解できます。また、当時のことですから、現在のような純粋な経済政策ではなく、「武士たるものかくあるべし」といった倫理面の重要性も解説されています。

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次に、瀬尾まいこ『夜明けのすべて』(文春文庫)を読みました。著者は、大阪出身の小説家です。本書を原作として、松村北斗と上白石萌音のW主演にて映画化が決まっています。来年2024年2月の封切りだそうです。ということで、PMS(月経前症候群)で感情を抑えられず、月経前には些細なことに怒りを爆発させる30歳過ぎの女性と、希望していたコンサル会社に勤めながらも、パニック障害になり生きがいも気力も恋人も失った20台半ばの男性を主人公に、交互に視点を入れ替えつつ物語は進みます。ある意味では、人生に絶望しつつも、まだまだ若い年代ですので、何とかしようという意欲も随所に感じられる主人公2人です。特に、女性の虫垂炎による入院から物語は大きく変化し始めます。主人公2人の奮闘を、中小企業の社長をはじめとする周囲では温かく見守り、そういった場面を作者はリアルに、時にユーアをもって描き出しています。PMSにせよ、パニック症候群にせよ、ごく一部の限られた人たちに限定された問題と考えがちですが、場合によってはこういった病気に限らず、誰もが抱える可能性がある困難に立ち向かう人に勇気を与えるストーリーです。多くの方にオススメします。

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