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2024年1月15日 (月)

OECD Economic Surveys JAPAN: JANUARY 2024 の政策提言はやや問題点あり

先週木曜日1月11日に、経済協力開発機構(OECD)から「OECD対日経済審査報告書」OECD Economic Survey of Japan 2024 が公表されています。OECDのサイトでは邦訳資料も利用可能です。一般向けには不明ながら、勤務校からはpdfの全文リポートも利用可能です。しかし、100ページを超えるリポートで、しかも英文資料ですから、すべてに目を通したわけでもなく、リポート冒頭のExecutive Summaryを見ただけなのですが、かなり、ムチャな政策提言がいくつか目につきます。

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リポート p.13 Main findings/Key recommendations を引用すると上のテーブルの通りです。右欄の Key recommendations のマーカーは引用者である私がつけています。最初のマーカーは "start raising policy rates gradually" です。インフレ率が2%近傍であると予想される限りにおいて、というただし書きがあるとはいえ、利上げが推奨されているような印象です。このただし書きを無視して利上げに踏み出す方向性を見出すタカ派がいそうな気がして、私はやや怖い気がします。少し前まで、インフレ対応のための円安是正を目的とする金利引上げという、ややムチャな観測が流れていましたが、現時点では、この見方は後景に退いていると考えるべきですが、引き続き、理由不明ながら利上げを目指す見方があるのは、私には理解不能です。次に、"Gradually raise tax revenues, including by increasing the consumption tax rate further in small increments." という部分も、2014年の消費税率引上げで明確にデフレ脱却プロセスに大きな障害となった経験がありながら、いまだに「財政再建」の錦の御旗の下でデフレ脱却と財政再建の間で後者のウェイト高い人達がいるのにも、私の理解がついていきません。
テーブルの画像は引用しませんが、ほかに2点、雇用関係でも疑問があります。まず、"Break down labour market dualism by relaxing employment protection for regular workers and making it more transparent." です。正規雇用と非正規雇用の格差は、私からすれば非正規雇用の待遇改善でもって是正されるべきだと考えていたのですが、OECDは真逆の方向性を示していて、正規職員の雇用保護を緩和することにより達成されるべき目標と捉えているようです。昔の言い方になぞらえれば、「1億総非正規化」を目指したいのかもしれません。次に、"Further increase the mandatory retirement age with a view to abolish it" というのもあります。日本の高齢者は就業率がほかの先進国と比べてもかなり高く、さらに定年を引き上げて、あるいは、定年を廃止してまでも高齢者の就業率を高めることは限界があるように私は考えています。それでも、ある意味で、高齢者は安価な労働力ですので、これを利用したいというのは判らないでもないのですが、私は全幅の賛意を示すことはできません。ヤメておいた方がいいような気すらします。少なくとも、「生涯現役社会」はムリです。1980年代の大陸欧州諸国と違って、早期引退パスを設定することに失敗した我が国ですが、どこかで引退するパスは作っておいた方がいいように、直感的ながら感じます。

このリポートにどこまで日本の実情が反映されているのか不明ですが、何らかの意図を感じないでもありません。しかし、いくつか問題となる論点が含まれていますから、OECDの見解を鵜呑みにする必要はないと思います。

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