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2024年2月27日 (火)

ほぼ2年ぶりの+2%まで縮小した1月の消費者物価指数(CPI)上昇率をどう見るか?

本日、総務省統計局から1月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.0%を記録しています。前年比プラスの上昇は27か月連続ですが、先月11月統計の+2.5%のインフレ率からは上昇幅が縮小しています。日銀のインフレ目標である+2%とピッタリでした。ただ、ヘッドライン上昇率は+2.2%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+3.5%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

1月の消費者物価2.0%上昇 伸び1年10カ月ぶり低水準
総務省が27日発表した1月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が106.4となり、前年同月比で2.0%上昇した。伸びは3カ月連続で縮小した。上昇率は22年3月の0.8%以来、1年10カ月ぶりの低水準だった。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は1.8%の上昇だった。23年12月は2.3%上昇だった。プラスは2年5カ月連続となる。
生鮮食品を除く食料や宿泊料は伸びを縮めたものの、依然として高い上昇率が続く。外国パック旅行費もプラスに寄与した。電気代や都市ガス代、固定電話の通信料は指数を下げる方向に働いた。
生鮮食品を除く総合指数の上昇率は日銀の物価安定目標である2%と同じだった。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は3.5%上がった。生鮮食品を含む総合指数は2.2%上昇した。
総務省によると政府の電気・ガス料金の抑制策がなければ、生鮮食品を除いた総合指数の上昇率は2.6%だった。政策効果で物価の伸びを0.5ポイント程度抑えた。
品目別にみると電気代は前年同月比21.0%、都市ガス代は22.8%それぞれ下がった。政府の料金抑制策で前年同月と比べてマイナスでの推移が続く。都市ガス代の下げ幅は比較可能な1971年1月以降で最大だった。
観光需要の回復が続く宿泊料は26.9%上昇した。前年の23年1月から政府の観光振興策「全国旅行支援」の割引額が縮小し、価格が上昇していた。この反動で23年12月の59.0%プラスから伸びを縮めた。
光回線を使う「IP網」への移行で固定電話の通信料も12.0%下がった。
全体をモノとサービスに分けると、サービスは2.2%伸びた。サービスの伸びは23年7月以降、7カ月連続で2%以上で推移する。
外国パック旅行費は62.9%上昇した。新型コロナウイルス禍の影響で21年1月以降は価格の収集を一時的に取りやめていたため、総務省は「20年1月との比較になっている」と説明した。この項目を除くと生鮮食品を除く総合指数は1.9%の上昇だった。

何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2%を下回るとの予想でしたので、実績の+2.0%の上昇率はやや上振れた印象ながら、サプライズはありませんでした。品目別に消費者物価指数(CPI)を少し詳しく見ると、まず、エネルギー価格については、昨年2023年2月統計から前年同月比マイナスに転じていて、本日発表された1月統計では前年同月比で▲12.1%に達し、ヘッドライン上昇率に対する寄与度も▲1.07%の大きさを示しています。先月の2023年12月統計ではこの寄与度が▲1.02%ありましたので、1月統計でコアCPI上昇率が先月統計から▲0.3%ポイント縮小した背景のひとつは、こういったエネルギー価格の動向にあります。特に、そのエネルギー価格の中でもマイナス寄与が大きいのが電気代です。エネルギーのウェイト712の中で電気代は341と半分近くを占め、1月統計では▲21.0%下落し、寄与度は▲0.90%の大きさを示しています。都市ガス代も▲22.8%下落していて、寄与度が▲0.30%となっています。統計局の試算によれば、政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の影響を寄与度でみると、▲0.48%に達しており、うち、電気代が▲0.40%に上ります。他方で、政府のガソリン補助金が縮減された影響で、ガソリン価格は昨年2023年7月統計から上昇に転じ、直近の1月統計では+4.7%となっています。中東の地政学的なリスクも高まっています。すなわち、ガザ地区でのイスラエル軍の虐殺行為、親イラン武装組織フーシによる商船の襲撃なども、今後、どのように推移するかについても予断を許しませんし、食料とともにエネルギーがふたたびインフレの主役となる可能性も否定できません。なお、食料について細かい内訳をヘッドライン上昇率に対する寄与度で見ると、コアCPI上昇率の外数ながら、生鮮野菜が+0.11%、生鮮果物が+0.10%の寄与を示しています。鶏卵の前年同月比上昇率も+18.3%と、まだまだ高い伸び率が続いています。コアCPIのカテゴリーの中でヘッドライン上昇率に対する寄与度を見ると、調理カレーなどの調理食品が+0.24%、アイスクリームなどの菓子類が+0.24%、フライドチキンなどの外食が+0.16%、鶏卵などの乳卵類が+0.15%、などなどとなっています。サービスでは、引用した記事にあるように、宿泊料が前年同月比で+26.9%上昇し、寄与度も+0.23%に達しています。もっとも、サービス価格については、上昇の勢いが鈍っている、という見方がある一方で、日経新聞の記事などでは、飲食店、金融機関、病院・診療所については、新型コロナウイルス禍前と比べてサービスの内容が悪化していて、実態的には「ステルス値上げ」が起きている、といった指摘もあったりします。

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