物価高と震災により現状判断DIが低下した1月の景気ウォッチャーと黒字が続く経常収支
本日、内閣府から1月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2023年12月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲1.6ポイント低下の50.2となった一方で、先行き判断DIは+2.1ポイント上昇の52.5を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+7443億円の黒字を計上しています。まず、ロイターのサイトなどから統計を報じた記事を引用すると以下の通りです。
街角景気、1月は1.6ポイント低下 物価高や震災の影響で
内閣府が8日発表した1月の景気ウオッチャー調査で、景気の現状判断DIは前月から1.6ポイント低下し、50.2となった。景気判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」と据え置きつつ、「能登半島地震の影響もみられる」と付け加えた。
指数を構成する項目では、家計動向関連DIが前月から2.1ポイント低下の49.5、企業動向関連DIが1.2ポイント低下の50.9だった一方、雇用関連DIは0.6ポイント上昇して53.3となった。
地域別では全国12地域中2地域で上昇、10地域で低下。能登半島地震が発生した北陸地方が9.1ポイント低下し、最も低下幅が大きかった。北陸の百貨店からは「消費マインドが大幅に低下している」、都市型ホテルからは「観光客が激減し、宴会部門も自粛でほぼキャンセルになり、新規予約も入らなくなっている」といったコメントが出ていた。
先行き判断DIは前月から2.1ポイント上昇し52.5となった。内閣府は先行きについて「価格上昇の影響などを懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている」とした。
経常収支、暦年黒字2年ぶり20兆円超 貿易赤字縮減で倍増
財務省が8日発表した国際収支状況速報によると、2023年暦年の経常収支は20兆6295億円の黒字となった。貿易収支の赤字縮減などで黒字幅が倍増し、2年ぶりに20兆円台を回復した。
通年の経常収支のうち、貿易収支は6兆6290億円の赤字だった。輸出が前年比1.5%増の100兆2743億円だったのに対し、輸入は106兆9032億円と6.6%減少し、赤字幅は前年から縮小した。
稼ぎ頭の第一次所得収支は34兆5573億円の黒字で、ほぼ横ばいにとどまった。
併せて発表された23年12月の経常収支は7443億円の黒字で、黒字幅はロイターの事前予測(1兆0189億円程度の黒字)を下回った。
とても長くなってしまいましたが、よく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。
現状判断DIは、昨年2023年に入ってから高い水準が続いて、2月以降は12か月連続して50を超えています。ただし、本日公表の1月統計では前月から▲1.6ポイント低下してしまいました。もっとも、長期的に平均すれば50を上回ることが少ない指標ですので、50近傍の水準は決して低くない点には注意が必要です。1月統計で上昇した主因はインフレと能登半島地震と考えるべきです。まず、前月から▲2.1ポイント低下した家計動向関連の中でも、飲食関連が▲7.8ポイントと大きく低下しています。企業動向関連は前月から▲1.2ポイントの低下にとどまっていますが、製造業が+0.5ポイント上昇している一方で、非製造業は▲2.5ポイントの低下です。加えて、地域別の現状判断DIの前月差を見ると、引用した記事にもある通り、北陸が▲9.1ポイントと最大の落ち込みを示しています。先行き判断DIも北陸は沖縄とともに前月差マイナスとなっています。ただ、全国レベルでは先行き判断DIが前月から+2.1ポイント上昇していますので、長続きはしない、という受け止めなのかもしれません。従って、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。」で据え置いています。ただ、「令和6年能登半島地震の影響もみられる。」との追加文言もあったりします。また、内閣府のリポートの中の北陸の景気判断理由の概要の中から悪化の判断の理由を見ると、現状判断では「能登半島地震の直接的な被害はほとんどなかったが、予約のキャンセルや自粛ムードにより、客足は止まっている(一般レストラン)。 」とか、先行き判断では「能登半島地震による自粛ムードがすぐに払拭できるとは考えられない。北陸応援割が始まる春以降に期待したい(商店街)。」といった意見が見られます。
続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。引用したロイターの記事では、2023年12月単月の経常収支に関する市場の事前コンセンサスは+1兆円余り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも同様に+1兆億円余りでしたので、実績の7443億円の黒字はやや下振れした印象です。しかしながら、ウクライナ戦争後の資源価格の上昇に起因する国際商品市況の価格上昇により輸入が大きく増加した局面はすでに過去のものなり、経常黒字の水準はウクライナ戦争の前の状態に戻っています。ですから、2023年12月のように市場の事前コンセンサスを下回っても、もちろん、たとえ赤字であっても、経常収支の水準については何ら悲観する必要はありません。当然、エネルギーや食料をはじめとして経済安全保障には留意する必要はあるものの、資源の乏しい日本では消費や生産のためならエネルギーや食料は輸入すればよく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。
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