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2024年3月13日 (水)

移民について考える

アレシーナ教授とタベリーニ教授のイタリア人コンビによる移民に関する論文 "The Political Effects of Immigration: Culture or Economics?" が Journal of Economic Literature にアクセプトされて今年2024年3月号に掲載されることになったようです。引用情報は以下の通りです。

まず、アメリカ経済学会のサイトから Abstract を引用すると以下の通りです。

Abstract
We review the growing literature on the political economy of immigration. First, we discuss the effects of immigration on a wide range of political and social outcomes. The existing evidence suggests that immigrants often, but not always, trigger backlash, increasing support for anti-immigrant parties and lowering preferences for redistribution and diversity among natives. Next, we unpack the channels behind the political effects of immigration, distinguishing between economic and noneconomic forces. In examining the mechanisms, we highlight important mediating factors, such as misperceptions, the media, and the conditions under which intergroup contact occurs. We also outline promising avenues for future research.

私はこのジャーナルを購読しておらず、掲載されるバージョンの論文ではない可能性がありますが、全米経済研究所(NBER)で公表されたワーキングペーパーのバージョンで簡単に見ておきたいと思います。

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上のグラフはワーキングペーパーから Figure 1. Immigration and Political Polarization in US History を引用しています。米国議会の上院及び下院における政党の2極化と移民の割合がそれなりの相関を持っていることが示唆されています。直感的には、移民シェアのほうが先行していて、上下院の2極化が遅行しているように見えます。でもまあ、相関ですから、移民流入が増加すれば政治経済的な影響が大きくなり、移民に反対する政党と賛成する政党の2極化をもたらす可能性は十分理解できます。
通常、移民に起因する影響といえば、私のようなエコノミストは雇用に関する影響を考えます。一般国民、というか、雇用者のサイドからすれば、職を奪われたり、賃金が低下したり、といったリスクがあります。他方で、雇用する企業のサイドからは、未熟練労働者=低賃金労働の需要は大いに満たされる可能性があります。しかし、当然に非経済的な影響があるわけで、私が我が国への移民受け入れに消極的なのも、主として非経済的な影響を重視するからです。まあ、もうひとつは地理的な要因も無視できません。海を挟んですぐお近くに、日本の人口の10倍を超える世界でも有数の人口大国があるわけで、大挙して移民が我が国に押し寄せれば、経済面だけではなく、文化的あるいは社会的な影響も大きいわけで、どこまで移民を許容すべきなのかを考える必要があります。さらに、第2次安倍政権依頼、国民の間で分断化が進んできているように私は感じていますが、上の引用したグラフのような分断化=2極化の進展の可能性も考慮する必要があります。そうです。こういった学術研究の成果も踏まえて、じっくりと考える必要があると思います。したがって、私は移民の促進にはとっても慎重です。

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