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2024年4月18日 (木)

国際通貨基金「IMF世界経済見通し」見通し編を読む

一昨日、4月16日の日本時間の夜に国際通貨基金から「IMF世界経済見通し」IMF World Economic Outlook 見通し編が公表されています。すでに、Analytical Chapters 分析編は先週4月12日に取り上げていますので、見通し編についてもpdfの全文リポートなどからグラフを引用しつつ、ごく簡単に見ておきたいと思います。

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まず、IMFのサイトから成長率見通しの総括表 World Economic Outlook Growth Projections を引用すると上の通りです。こんかいの「世界経済見通し」の副題は Steady but Slow: Resilience amid Divergence となっていて、すなわち、着実な成長であるものの回復ペースは遅くて、回復のレジリエンス=強靭性はある一方で成長はまちまち、という特徴を持っているようです。上のテーブルで示されているように、世界経済の成長率は今年2024年+3.2%、来年2025年も+3.2%ですから着実な成長が見込まれています。一応、日本を見ておくと、今年2024年+0.9%、来年2025年+1.0%とほぼほぼ潜在成長率近傍の成長を予想しています。成長がレジリエントであるという意味は、景気後退に陥る確率が低くてソフトランディングの確率が増している、という意味です。

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さらに詳しく、リポートから p.9 Figure 1.14. Growth Outlook: Broadly Stable を引用すると上の通りです。上のパネルから明らかなように、昨年2023年10月時点での見通しと比較して、先進国や新興国経済は明らかに上振れしていて、今回の見通しでは上方改定されているのが見て取れます。ただし、この先、何と2029年までの中期的な成長率見通しが示されていますが、サブサハラアフリカを別にすれば、成長率がゆっくりと鈍化すると見込まれています。この点は、分析編の Chapter 3: Slowdown in Global Medium-Term Growth: What Will It Take to Turn the Tide? で議論が展開されていて、この私のブログでも先週4月12日に取り上げたように、資源配分是正のための構造改革 Structural reforms reducing misallocation については+1%ポイントを超える成長促進効果があると試算していたり、AIの活用 AI adoption はかなり大きな効果が見込めるとの分析結果を示していたりします。ただ、繰り返して強調しておきますが、世界経済はレジリエントであり、景気後退に陥ることなくソフトランディングの可能性が高まっています。

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そのソフトランディングの可能性が高まっているという分析結果をサポートするのが上のグラフであり、リポートから p.13 Figure 1.15. Inflation Outlook: Falling を引用しています。これも前回2023年10月時点の「世界経済見通し」と比較していて、大雑把に予想のラインまたはややインフレ率が下振れしているのが見て取れます。おおむね、インフレ高進下での金融政策は成功していると考えるべきです。

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金融政策がインフレの抑制とソフトランディングに成功しつつある一方で、経済のレジリエンスの維持強化のための第1に優先すべき政策課題は Rebuilding Room for Budgetary Maneuver and Ensuring Debt Sustainability 予算運営のバッファーを再構築し、債務の持続可能性を確保することであると指摘しています。我が国財務省が裏から手を回しているのではないか、という気もしますが、まあ、一応、正統な志向であるように見えます。そして、その財政再建のために考慮すべき要因として選挙を上げています。上のグラフはリポートから p.21 Figure 1.24. Medium-Term Fiscal Adjustment を引用しています。隣国である韓国の選挙はすでに終わって与党が敗北しましたが、日本は今年2024年中には選挙がありませんから、まあ、有り体にいって、選挙のある国よりもしっかりと財政再建すべきである、という主張が透けて見えます。秋に大東呂選挙が控えている米国なんかはどうするんでしょうか?

最後の政策課題については、私は少し異見ありますが、少なくとも、世界経済は景気後退を回避してソフトランディングに向かっている点は国際通貨基金(IMF)でも確認できているようです。

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