24か月連続で日銀物価目標の+2%を上回った消費者物価指数(CPI)上昇率をどう見るか?
本日、総務省統計局から3月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.6%を記録しています。日銀の物価目標である+2%以上の上昇は24か月連続、すなわち、2年連続です。ヘッドライン上昇率は+2.7%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+2.9%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
消費者物価3月2.6%上昇 2年連続で日銀目標の2%以上
総務省が19日発表した3月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が106.8となり、前年同月比で2.6%上昇した。伸び率は22年4月から2年連続で日銀の物価安定目標の2%以上となった。食料などの価格の高止まりが続く。
上昇率はQUICKが事前にまとめた市場予測の中央値の2.6%上昇と同じだった。前年同月比での上昇は2年7カ月連続となる。伸びは2月の2.8%から縮小した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は2.9%上がった。伸び率は7カ月連続で縮小した。生鮮食品を含む総合指数は2.7%上昇した。
3月の結果を品目別にみると電気代は1.0%低下した。2月のマイナス2.5%から下げ幅を縮めた。火力発電に使う液化天然ガス(LNG)価格などが上がっている。都市ガス代の下落幅も縮小した。ガソリンは4.3%上昇と、2月に引き続き4%台の伸びだった。
生鮮食品を除く食料は前年同月比4.6%上がった。原材料価格の上昇の影響により、せんべいが19.8%、レトルトカレーを示す調理カレーが18.8%それぞれ上がった。
生鮮食品を除く食料の上昇率は2月の5.3%からは縮んだ。23年に相次いだ値上げによる上昇分が一巡し、伸びは7カ月連続で縮小した。鶏卵は3.6%低下と、2年11カ月ぶりに前年同月と比べて下がった。
全体をモノとサービスに分けるとサービスは2.1%上昇した。上昇率は9カ月連続で2%以上だった。観光需要の回復が続く宿泊料は27.7%高まった。
同日公表した23年度平均の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)は前年度比2.8%上昇した。上昇幅は政府の電気・ガス料金の抑制策の影響で22年度の3.0%から縮小した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は23年度は3.9%上昇した。第2次石油危機の影響があった1981年度の4.0%以来42年ぶりの高い伸びとなる。
何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。
まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.6%ということでしたので、まさにジャストミートしました。品目別に消費者物価指数(CPI)を少し詳しく見ると、まず、エネルギー価格については、昨年2023年2月統計から前年同月比マイナスに転じていたのですが、本日発表された3月統計では前年同月比で▲0.6%まで下落幅が縮小し、ヘッドライン上昇率に対する寄与度も▲0.04%まで小さくなっています。いうまでもなく、政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が先月の2月に終了したことに起因します。統計局の試算によれば、電気代▲0.41%、都市ガス代▲0.08%、合計▲0.49%のヘッドライン上昇率に対する寄与があったことが明らかにされています。すでにガソリン補助金が縮減された影響で、ガソリン価格は3月統計では+4.3%、ヘッドライン上昇率に対する寄与度が+0.09%となっています。中東の地政学的なリスクも高まっています。すなわち、ガザ地区でのイスラエル軍の虐殺行為、イラクのイスラエル攻撃なども、今後、どのように推移するかについても予断を許しませんし、食料とともにエネルギーがふたたびインフレの主役となる可能性も否定できません。
現在のインフレの主役である食料について細かい内訳をヘッドライン上昇率に対する寄与度で見ると、コアCPI上昇率の外数ながら、生鮮食品が野菜・果物・魚介を合わせて+0.23%あり、うち生鮮野菜が+0.13%、生鮮果物が+0.12%の寄与をそれぞれ示しています。生鮮食品を除く食料の寄与度が+1.09%あります。コアCPIのカテゴリーの中でヘッドライン上昇率に対する寄与度を見るとせんべいなどの菓子類が+0.22%、調理カレーなどの調理食品が+0.18%、うるち米などの穀類が+0.14%、焼肉などの外食が+0.12%、鶏卵は下がったものの牛乳など上昇した乳卵類が+0.09%、などなどとなっています。サービスでは、宿泊料が前年同月比で+27.7%上昇し、寄与度も+0.25%に達しています。
先行き、足元の4月については、第1に、新年度を迎える区切りの月であることから値上げ予定が集中するとともに、第2に、足元で円安が進んでいることもあり、インフレ率が高まる可能性に注意が必要です。例えば、帝国データバンクから3月29日に明らかにされた「食品主要195社 価格改定動向調査」や4月19日の「上場主要外食100社 価格改定動向調査」などのリポートでも、そういった方向性が示唆されているように私は感じています。
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