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2024年4月30日 (火)

自動車品質不正からリバウンドした3月の鉱工業生産(IIP)ほか本日公表の経済指標をどう見るか?

本日は月末閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。すべて3月の統計です。IIP生産指数は季節調整済みの系列で前月から+3.8%の増産でした。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.2%増の14兆6910億円を示した一方で、季節調整済み指数は前月から▲1.0%の低下を記録しています。雇用統計では、失業率は前月から横ばいの2.6%を記録した一方で、有効求人倍率は前月を+0.02ポイント上回って1.28倍となっています。まず、日経新聞ほかのサイトなどから各統計を報じる記事を引用すると以下の通りです。

3月の鉱工業生産、3カ月ぶり上昇 自動車再開がけん引
経済産業省が30日に発表した3月の鉱工業生産指数(2020年=100、季節調整済み)速報値は101.1となり、前月から3.8%上がった。ダイハツ工業などの認証不正問題で落ち込んでいた自動車の生産再開や生産用機械工業がけん引し、3カ月ぶりのプラスとなった。
生産の基調判断は「一進一退ながら弱含み」として前月を維持した。
全15業種のうち9業種が上昇した。伸びが最も大きかったのは、普通乗用車や普通トラックなどの自動車工業で9.6%上がった。
ダイハツ工場で発覚した認証試験の不正問題や大雪により多くのメーカーが一時的に工場稼働を停止したことで2月の生産が落ち込んでいたため、その反動があった。
半導体製造装置などの生産用機械工業も11.6%上がった。電子部品・デバイス工業は9.2%プラスとなった。スマートフォンに使うモス型半導体集積回路(メモリ)のほか、アクティブ型液晶パネルなどが回復した。
残る6業種は低下した。アルミニウム板製品や普通鋼鋼帯などの鉄鋼・非鉄金属工業が2.5%下がった。自動車関連の生産低下のほか、定期修理や大規模修繕が響いた。
主要企業の生産計画から算出する生産予測指数は4月に前月比で4.1%の上昇を見込む。5月の予測指数は4.4%のプラスとなった。
経産省は「世界経済への影響や自動車工業における工場の再開状況について引き続き注視したい」とした。
23年度の鉱工業生産指数の速報値は102.8で前年度に比べて2%低下した。2年連続のマイナスとなった。半導体など車載部品の供給不足が緩和した一方、自動車メーカーによる不正が相次ぎ一部で工場が停止したことが背景にあった。
自動車の生産・出荷停止で個人消費や輸出が落ち込み、民間エコノミストは1~3月期の実質国内総生産(GDP)はマイナス成長になるとみる。1~3月期の鉱工業生産指数は前期比5.4%低下の98.8だった。水準では新型コロナウイルス禍の2020年7~9月期の97.7以来の低さとなる。
影響は一部で4月以降も残る見込みだ。認証不正のあった車種は国土交通省から段階的に出荷停止が解除されている。経産省は「ラインが再稼働しても、生産は(すぐには回復せずに)徐々に戻る」と指摘する。
4月と5月の生産予測指数がプラスなのは、自動車などの輸送機械工業や半導体製造装置などの生産用機械工業が押し上げるとみられているためだ。ただ経産省が過去の予測の誤差をもとに推計した補正値では、4月の生産は前月比で1.0%落ち込む見通しだ。
小売業販売額3月は前年比1.2%増、値上げ効果続くが自動車・衣類低調
経済産業省が30日に発表した3月の商業動態統計速報によると、小売業販売額(全店ベース)は前年比1.2%増だった。ロイターの事前予測調査では2.2%の増加が予想されていた。値上げの影響がある一方自動車出荷減や春物衣料の低調が響いた。うるう年の影響のあった2月の4.7%からプラス幅は縮小した。
業種別の前年比では機械器具が8.1%増、燃料が7.3%増、各種商品が6.1%増など伸びた一方、自動車が15.9%減少した。織物・衣服も3.8%減だった。
機械器具小売りは、通信家電や調理家電の販売が好調だった。
業態別の前年比は百貨店9.5%増、スーパー5.7%増、コンビニ0.4%増、家電大型専門店6.3%増、ドラッグストア8.7%増、ホームセンター2.5%増。
スーパーは値上げの影響が寄与。ホームセンターも相対的に割安な「大容量製品の販売が好調だった」(経産省)。百貨店はインバウンド向けなど高額ブランド製品の販売が伸びた。
3月の求人倍率1.28倍、16カ月ぶりの上昇 失業率は2.6%
厚生労働省が30日発表した3月の有効求人倍率(季節調整値)は1.28倍で、前月から0.02ポイント上昇した。上昇は16カ月ぶりとなった。今後の賃上げを期待して転職に慎重になる動きがあり、求職者が減ったことが影響した。
総務省が同日発表した3月の完全失業率は2.6%だった。前月と同率だった。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人当たり何件の求人があるかを示す。3月の有効求職者数は前月と比べて1.9%減少した。有効求人数は0.9%減となった。
景気の先行指標とされる新規求人(原数値)は前年同月比で7.4%減少した。原材料や光熱費の高騰を受けて製造業は10.8%減、生活関連サービス業・娯楽業も10.5%減となった。
2023年度平均の有効求人倍率は1.29倍で、前年度に比べて0.02ポイント低下した。3年ぶりに前年度を下回った。
23年度の有効求人は前年度に比べて1.6%減で、3年ぶりの減少となった。原材料高のあおりを受けた建設業や製造業での求人が少なかった。宿泊業・飲食サービス業で、新型コロナウイルス禍後の求人の増加が落ち着いてきたことも要因の一つだ。

とてつもなく長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にはある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は予測中央値で+3.6%の増産でしたので、実績の前月比+3.8%の増産は、ほぼジャストミートした印象です。ですので、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、1月に下方修正した「一進一退ながら弱含み」を据え置いています。また、先行きの生産については、製造工業生産予測指数を見ると、引用した記事にもある通り、足下の4月は補正なしで+4.1%の増産、上方バイアスを除去した補正後では▲1.0%の減産となっていますが、明日から始まる5月は4.4%の増産と見込まれています。しかし、いずれにせよ、1~3月期の生産は▲5.4%の減産でしたので、GDPもマイナス成長の可能性が十分あります。鉱工業生産に戻って、経済産業省の解説サイトによれば、3月統計での生産は、自動車工業のリバウンドが大きく、前月から+9.6%の増産となっていて、寄与度+1.13%となっています。加えて、生産用機械工業でも+11.6%の増産、寄与度+0.98%、電子部品・デバイス工業も+9.2%の増産、寄与度+0.52%など、我が国のリーディング産業が軒並み増産を示しています。しかし、今年2024年1月に自動車の品質不正問題でドカンと▲6.7%の減産があった後、2月も減産でしたし、本日公表の3月統計で+3.8%を盛り返しても、指数レベルでまだ1月減産の半分も取り戻せていない点は忘れるべきではありません。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。見れば明らかな通り、小売業販売は堅調な動きを続けています。季節調整済み指数の後方3か月移動平均により、経済産業省のリポートでかなり機械的に判断している小売業販売額の基調判断は、本日公表の3月統計までの3か月後方移動平均の前月比が+0.2%の上昇となりましたので、1月統計から引き下げられた「一進一退」で据え置かれています。ただ、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、3月統計ではヘッドライン上昇率も生鮮食品を除くコア上昇率も、前年同月比で+2%台後半のインフレですので、小売業販売額の3月統計の+1.2%の前年同月比での増加は、インフレ率に追いついていません。現在の高インフレは国内では消費の停滞をもたらしている可能性が高く、したがって、国内需要ではなく海外からのインバウンドにより小売業販売額の伸びが支えられている可能性が否定できません。引用した記事にもある通り、百貨店販売の伸びがスーパーなどよりも大きくなっている点にインバウンド消費が現れている気がします。したがって、小売業販売額の伸びが国内消費の実態よりも過大に評価されている可能性は否定できません。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。なお、失業率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月から△0.1%ポイント低下の2.5%と見込まれ、有効求人倍率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、前月から横ばいの1.26倍と見込まれていました。失業率・有効求人倍率ともに実績は市場の事前コンセンサスのレンジ内といえます。人口減少局面ということもあって、失業率も有効求人倍率もともに水準が高くて雇用は底堅い印象ながら、3月統計に現れた雇用の改善が鈍い、と私は評価しています。季節調整済みのマクロの統計で見て、一昨年2022年年末12月から直近の3月統計までの1年余りの期間で、人口減少局面に入って久しい中であるにもかかわらず労働力人口は+41万人増加し、非労働力人口は▲66万人減少しています。就業者+35万人増、うち雇用者+55万人増の一方で、完全失業者は+8万人増にとどまっており、就業率は着実に上昇しています。ただ、就業率上昇の評価は難しいところで、働きたい人が着実に就労しているという側面だけではなく、物価上昇などで生活が苦しいために働かざるを得ない、というケースもありえます。加えて、就業者の内訳として雇用形態を見ると、正規が+45万人増の一方で、非正規が+34万人増ですら、国際労働機構(ILO)のいうところも decent work だけが増えているわけではありません。先進各国がこのまま景気後退に陥らないソフトランディングのパスに乗っているにもかかわらず、我が国の雇用の改善が緩やかな印象を持つのは私だけではないと思います。加えて、今年は昨年から引き続き順調な賃上げとなっているとはいえ、大手が名を連ねる経団連加盟企業だけでなく、中小企業の賃金動向も重要な課題です。

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