« グリーン投資家は株価にどのようなインパクトを及ぼすか? | トップページ | 明日公表予定の1-3月期GDP統計速報1次QEは自動車の品質不正などを受けてマイナス成長か? »

2024年5月14日 (火)

底堅い動きを続ける4月の企業物価指数(PPI)をどう見るか?

本日、日銀から4月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+0.9%の上昇となり、先月3月統計と同じ上昇率でした。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業物価指数、4月0.9%上昇 伸び率は横ばい
日銀が14日発表した4月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は121.2と、前年同月比0.9%上昇した。3月から伸び率は横ばいだった。銅や原油価格上昇の価格転嫁が進んだ。加えて円安の影響で円ベースの輸入物価が上がり、企業物価の押し上げ圧力になっている。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに、今後の消費者物価指数(CPI)に影響を及ぼす。4月の上昇率は民間予測の中央値(0.8%上昇)より0.1ポイント高かった。
内訳は、銅価格の上昇を受けて非鉄金属が前年同月比11.7%上昇した。3月の5.8%上昇から拡大した。新年度に切り替わる4月は価格改定が増えやすく、原材料コストや物流費、人件費を転嫁する動きもみられた。飲食料品はコスト上昇の転嫁により2.9%上昇した。
石油・石炭製品は中東情勢など地政学リスクを背景に前年同月比5.3%上昇した。伸び率は3月から横ばいだった。一方、電力・都市ガス・水道は19.7%下落した。下落率は30%近かった直近ピークより狭まってきた。2023年に始まった政府による電気・ガス料金の支援制度が一巡してから、企業物価の前年同月比を押し下げる効果はなくなってきている。
円ベースの輸入物価指数は、前年同月比6.4%上昇と3月の1.4%から大きく拡大した。23年3月(9.4%)以来の伸び率となった。日銀担当者は「国際商品市況や為替の影響があり、上昇している。輸入物価はラグを持って国内の企業物価に影響する可能性がある」と説明した。

いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

まず、引用した記事にあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+0.8%と見込まれていましたので、やや上振れたもののほぼジャストミートしました。これも引用した記事にある通り、国内物価指数は3月統計では1-2月統計よりも上昇率を高めていましたが、4月統計は3月統計と伸びは横ばいでした。すなわち、1月の前年同月比上昇率はその直前の12月と同じ+0.3%だったのですが、2月+0.8%、3月+0.9%に続いて、4月も+0.8%となっています。国内物価の上昇幅が拡大した背景には、政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が一巡した影響もあると考えるべきです。加えて、輸入物価が2月から再び上昇に転じ、3-4月もジワリと上昇幅を拡大し始めています。その背景として、引用した記事にもある円安は決して無視できないのですが、原油価格の上昇も考慮すべきです。すなわち、企業物価指数のうちの輸入物価の原油価格の円建ての前年同月比を見ると、2023年12月に+3.0%と再上昇に転じた後、1月+10.4%、2月+7.9%、3月+7.8%、4月は+19.2%の上昇と大きく値上がりしています。我が国では、金融政策を通じた需給関係などよりも、原油価格のパススルーが極端に大きいので、国内物価にも無視し得ない影響を及ぼしている可能性があります。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率・下落率で少し詳しく見ると、電力・都市ガス・水道が▲19.7%、食料品の原料として重要な農林水産物+▲0.7%と下落が続いている一方で、飲食料品は+2.9%と3月の+4.0%から伸びが縮小したとはいえ、依然として高い伸びが続いています。ほかに、非鉄金属+11.7%、窯業・土石製品+9.8%、非鉄金属+6.6%、石油・石炭製品+5.3%、生産用機器+5.0%などといった費目で+5%以上の上昇率を示しています。そして、価格上昇がかなり幅広い費目に及んでおり、電気機器と情報通信機器がともに+3.3%、はん用機器+3.2%、などが+3%超の上昇率となっています。ある意味で、企業間で順調な価格転嫁が進んでいると見ることも出来ます。

|

« グリーン投資家は株価にどのようなインパクトを及ぼすか? | トップページ | 明日公表予定の1-3月期GDP統計速報1次QEは自動車の品質不正などを受けてマイナス成長か? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« グリーン投資家は株価にどのようなインパクトを及ぼすか? | トップページ | 明日公表予定の1-3月期GDP統計速報1次QEは自動車の品質不正などを受けてマイナス成長か? »