自動車の生産再開で上昇した3月の景気動向指数をどう見るか?
本日、内閣府から3月の景気動向指数が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、CI先行指数は前月から▲0.7ポイント下降の111.4を示し、CI一致指数は+2.4ポイント上昇の113.9を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから報道を引用すると以下の通りです。
景気動向一致指数、3月は前月比2.4ポイント改善 自動車の生産再開で
内閣府が9日公表した3月の景気動向指数速報(2020年=100)は、指標となる一致指数が前月比2.4ポイント上昇の113.9となり、3カ月ぶりにプラスに転じた。一部自動車メーカーの生産再開や半導体製造装置の出荷増で、鉱工業生産指数や投資財出荷指数などが指数を押し上げた。
このほか一致指数の押し上げに寄与したのは、耐久消費財出荷指数や輸出数量指数、有効求人倍率など。小売販売額は2月がうるう年の影響で増えていた反動で指数を押し下げた。
先行指数は前月比0.7ポイント低下の111.4となり2カ月ぶりのマイナス。鉱工業用生産財在庫率指数や最終需要財在庫率指数、新設住宅着工床面積などが指数を押し下げた。新設住宅着工床面積はトレンド的に低下しており、生産財在庫率は電子デバイスなど幅広い品目で悪化した。
一致指数の移動平均値などから内閣府が決める基調判断は、「下方への局面変化を示している」とし、前月の表現を据え置いた。
包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

3月統計のCI一致指数については、昨年2023年12月以来3か月ぶりのの上昇となりました。ただし、3か月後方移動平均の前月差では▲0.67ポイントの下降となり、加えて、7か月後方移動平均の前月差でも▲0.19ポイント下降と、当月では前月差プラスながら、3か月と7か月の両方の後方移動平均では前月差がマイナスを引き続き記録しています。引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を前月2月統計に続いて「下方への局面変化」で据え置いています。もっとも、私の直感ながら、自動車の品質不正問題による生産や出荷の停止といった経済外要因の影響が3月統計では剥落しましたので、基調判断が2か月連続で「下方への局面変化」であっても、米国経済がソフトランディングに成功するとすれば、そうすぐには日本経済が景気後退局面に入ることはないのではないか、と考えています。もちろん、景気回復・拡大局面の後半に入っている点は忘れるべきではありません。
CI一致指数を構成する系列を前月差に対する寄与度に従って詳しく見ると、自動車の品質不正からの生産再開のペントアップにもっとも直接的な影響を受ける生産指数(鉱工業)が+0.66ポイントの寄与を示したほか、投資財出荷指数(除輸送機械)が+0.61ポイント、耐久消費財出荷指数と輸出数量指数がともに+0.41ポイント、有効求人倍率(除学卒)も+0.39ポイント、鉱工業用生産財出荷指数も+0.35ポイント、などで大きなプラス寄与を示しています。ただし、他方で、商業販売額(小売業)(前年同月比)が▲0.26ポイント、商業販売額(卸売業)(前年同月比)も▲0.19ポイント、などがマイナスの寄与を示しています。
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