2か月連続で低下した4月の景気ウォッチャーと黒字が続く3月の経常収支
本日、内閣府から4月の景気ウォッチャーが、また、財務省から3月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲2.4ポイント低下の47.4となった一方で、先行き判断DIは▲2.7ポイント低下の48.5を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+3兆3988億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をNHKのサイトなどから記事を引用すると以下の通りです。
4月の景気ウォッチャー調査 2か月連続で前月下回る 続く円安で
働く人に景気の実感を聞く先月の景気ウォッチャー調査は、円安が続く中、物価の上昇による消費の押し下げや原材料高による企業の負担を懸念する声が寄せられ、景気の現状を示す指数が2か月連続で前の月を下回りました。
内閣府は、働く人たち2000人余りを対象に毎月、3か月前と比べた景気の実感を聞いて指数として公表しています。
先月の調査では、景気の現状を示す指数が47.4となり、前の月を2.4ポイント下回って、2か月連続で低下しました。
調査の中では、東海地方の飲食店からは「円安を受けた値上げの影響が大きく、購入量が減少している」といった声や中国地方の製造業から「円安や物価高の影響でコストが上がっているが、すべてを販売価格には転嫁できていない」といった声が寄せられています。
こうしたことを踏まえ、内閣府は景気について「緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」という見方に下方修正しました。
また、2か月から3か月先の景気の先行きを示す指数は、前の月より2.7ポイント低い48.5と2か月連続で低下しました。
23年度の経常黒字、最高の25.3兆円 資源高一服で
財務省が10日発表した2023年度の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引状況を表す経常収支の黒字は25兆3390億円だった。22年度から約2.8倍に増加し過去最高だった。資源価格の高騰が一服したことで貿易収支の赤字が改善したことが影響した。
経常収支は輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支や、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支、旅行収支を含むサービス収支などで構成する。
経常黒字が大きく増えた要因は貿易赤字の縮小だ。23年度の赤字額は3兆5725億円と22年度と比べて金額はおよそ8割減った。22年度は原油や液化天然ガス(LNG)といった資源価格の高騰に円安が重なり、貿易収支の赤字幅が膨らんでいた。
為替相場は23年度の平均は1ドル=144円55銭で、22年度の135円43銭と比べると6.7%の円安となった。原油価格は1バレルあたり85.98ドルと16.3%下がっている。円建ては1キロリットルあたり7万7868円と10.7%下がった。23年度の輸入額はこうした要因から105兆4391億円と22年度と比べて10.3%減った。
輸出額は北米向けの自動車などが好調で2.1%増の101兆8666億円だった。100兆円を超えるのは初めてで過去最高となった。
海外からの利子や配当の収入を示す第1次所得収支は0.6%増の35兆5312億円の黒字だった。伸びは小幅だったが過去最大を更新した。
旅行収支などを含むサービス収支は2兆4504億円の赤字で、赤字幅は半分以下に縮小した。主な要因は訪日客の増加による旅行収支の黒字幅の拡大だ。23年度は4兆2295億円となり、前年度から3.6倍に増えた。
同時に発表した3月の経常収支は前年同月比44%増の3兆3988億円の黒字だった。
長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。
景気ウォッチャーの現状判断DIは、昨年2023年年末11~12月から50を超える水準が続いて、今年2024年に入っても1月統計52.5、2月統計53.0と50を超えていましたが、3月統計で▲1.5ポイント低下して49.8を、また、本日公表の4月統計ではさらに▲2.4ポイント低下して47.4を記録しています。長期的に平均すれば50を上回ることが少ない指標ですので、2か月連続で低下したとはいえ、現在の水準は決して低くない点には注意が必要です。4月統計では家計動向関連・企業動向関連ともに低下しています。企業動向関連では、非製造業が前月から▲1.2ポイントの低下にとどまった一方で、製造業は▲3.1ポイントの低下と低下幅が大きくなっています。これには、本格化し始めたインバウンド消費がいくぶんなりとも寄与しているのではないか、と考えられます。したがって、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」に半ノッチ下方修正しています。先月までは最後が「一服感がみられる」でした。また、内閣府のリポート「景気の現状に対する判断理由等」の中には、価格上昇に起因する売上減、すなわち、インフレの影響と見られるものがいくつかありました。例えば、南関東のコンビニで「客単価は前年を超えているが、来客数は前年割れが続いている。」とかです。近畿でも、「値上げの影響で、売上は前年よりも上向いているが、消費の減少によって、販売数量は減っている。」といった意見が見られます。もうひとつ目についたのは賃上げへの言及です。例えば、その他レジャーのうちの映画で「物価の上昇は止まらないが、それに伴う賃上げがない(東京都)。」などです。ただ、外国人客やインバウンドについての効果の言及も少なくありません。私の直感的な印象としては、今年に入ってからの円安の影響も無視できませんが、同時に、年度替わりの4月に価格改定が相次いだ影響もあるものと考えています。
続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは経常黒字は+3兆4591億円でしたので、実績の+3兆3988億円はほぼほぼジャストミートしました。報道は2023年度の年度統計に着目しているものを多く見かけますが、引用した記事にもある通り、年度を通じて円安が進みましたので経常黒字が大きく膨らんでいます。しかし、貿易収支は相変わらず赤字を計上しており、円安にも関わらず赤字が縮小したのとどまっています。もちろん、経常収支にせよ、貿易収支にせよ、たとえ赤字であっても何ら悲観する必要はなく、資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。
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