失業率が低下した一方で有効求人倍率が上昇した6月の雇用統計をどう見るか?
本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも6月の統計です。失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して2.5%を記録した一方で、有効求人倍率は前月を▲0.01ポイント下回って1.23倍となっています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
6月の有効求人倍率、1.23倍に低下 失業率は2.5%
厚生労働省が30日発表した6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.23倍で前月から0.01ポイント低下した。物価上昇が続き、より収入が高い企業に転職する人が増えている一方、コスト増から企業が求人を手控える動きもある。総務省が同日発表した6月の完全失業率は2.5%で前月比で0.1ポイント下がった。
有効求人倍率は3カ月連続の低下で、2022年3月以来、27カ月ぶりの低水準となった。完全失業率は5カ月ぶりに改善した。
有効求人倍率は全国のハローワークで職を探す人に対し、1人あたり何件の求人があるかを示す。6月の有効求人数は前月比で0.1%減の233万6101人、有効求職者数は0.6%増の202万1057人だった。新規求職の申込件数は4.8%減った。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月から9.4%減少した。今年の6月は昨年より平日が2日少なかったことが、求人数の減少につながったと厚労省は説明する。
業種別にみると、製造業が14.6%減、生活関連サービス業・娯楽業が13.7%減のほか、建設業が12.8%減と落ち込みが大きかった。円安や物価高に伴うコスト上昇により、一部の企業は人手不足でも求人を控えざるを得ない状況にある。
6月の就業者数は6822万人で前年同月から0.5%増加し、過去最多となった。男性は3730万人で0.3%増、女性は3093万人で0.9%増だった。
雇用者のうち、正規の職員・従業員数は3669万人で前年同月から0.9%増え、8カ月連続で増加した。非正規は2121万人で0.6%減と2カ月連続の減少となった。
完全失業者数は181万人で前年同月から1.1%増えた。
いつも通り、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、雇用統計のグラフは下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。
まず、失業率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月から横ばいの2.6%と見込まれ、有効求人倍率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスも、同様に、前月から横ばいの1.24倍と見込まれていました。実績については、失業率が予想よりも低い2.5%、有効求人倍率は逆に予想より高い1.23倍でした。しかし、いずれにせよ、人口減少局面下の人手不足を背景に、失業率も有効求人倍率もともに水準が高くて雇用は底堅い印象ながら、そろそろ改善が鈍っている可能性がある、と私は評価しています。例えば、季節調整していない原数値の前年同月比で見て、勤め先や事業の都合による非自発的な離職者は3月まで減少していましたが、4-5月は保合いとなり、6月には増加に転じています。他方で、自発的な離職(自己都合)や新たに求職が増加しています。やや、雇用はまだら模様になってきた気がします。同時に、まだ1倍を軽く上回っているとはいえ有効求人倍率が低下しているのは上のグラフの通りですし、これもグラフに見られる通り、新規求人数も減少している現状で、自発的とはいえ離職して新たな求職行動を取ることがどこまで合理的かは疑問が残ります。失業率は景気の遅行指標ですし、6月統計で低下したという点をどこまで評価するかはなんともいえません。一致指標の有効求人倍率や先行指標の新規求人数などを見る限り、あるいは、そろそろ景気回復局面は最末期に近づいているのかもしれません。先進各国が景気後退に陥らないソフトランディングのパスに乗っているにもかかわらず、我が国の雇用の改善が緩やかな印象を持つのは、おそらく、私だけではないと思います。ただ、あくまで雇用統計はまだら模様であり、人口減少下での人手不足は続くでしょうし、米国がソフトランディングの可能性を強めている限り、それほど急速な景気悪化が迫っているようにも見えません。
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