さらに加速した6月の消費者物価指数(CPI)上昇率をどう見るか?
本日、総務省統計局から6月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.6%を記録しています。日銀の物価目標である+2%以上の上昇は23か月連続、すなわち、2年あまりの連続です。ヘッドライン上昇率は+2.8%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+2.2%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
消費者物価、6月2.6%上昇 電気・ガス代が押し上げ
総務省が19日発表した6月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が107.8となり、前年同月と比べて2.6%上昇した。政府が電気代やガス料金などの負担軽減策を縮小したことで、電気代やガス代が値上がりした。
エネルギーの上昇率は7.7%と前月の7.2%から拡大した。電気代が13.4%と大幅に上昇し、生鮮食品を除く指数の伸びを0.47ポイント押し上げた。都市ガス代も3.7%上昇した。
電気代は23年1月に始めた補助金の影響でマイナスの推移が続いたものの、5月に再生可能エネルギー普及にかかる賦課金が上昇し16カ月ぶりにプラスに転じていた。
政府補助は5月使用分で半減となり、6月のCPIから押し下げ効果が縮小した。電気代の上昇は2カ月連続。6月の政府補助による電気代の押し下げ効果はマイナス0.22ポイントだった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は2.2%上昇した。生鮮食品を含む総合指数は2.8%上がった。
食料は3.6%の上昇だった。オレンジの原産国での天候不良が不作を招いた影響で果実ジュースが32.1%上昇した。さくらんぼも15.7%上がった。昨年夏や今季の収穫期における猛暑が影響した。食料の上昇幅は前月の4.1%からは縮小した。
猛暑による影響でルームエアコンの需要が拡大し、家庭用耐久財は3.9%上昇した。宿泊料も19.9%伸び、前月の14.7%から上昇幅が広がった。
全品目をモノとサービスに分けたうち、サービスは1.7%上昇だった。前月は1.6%で上昇幅は拡大した。外食は2.8%上昇して、前月から横ばいだった。
何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。
まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.7%ということでしたので、実績の+2.6%はやや下振れたとはいうものの、4月統計の+2.2%、5月統計の+2.5%から見れば少し上昇幅が拡大した印象です。品目別に消費者物価指数(CPI)を少し詳しく見ると、まず、生鮮食料を除く食料の上昇が継続しています。すなわち、先月5月統計では前年同月比+3.2%、寄与度+0.76%であったのが、今月6月統計ではそれぞれ+2.8%、+0.68%と引き続き高い伸びを示しています。次に、エネルギー価格については、4月統計の+0.1%から前年同月比で上昇に転じ、本日公表の6月統計では+7.7%まで上昇が加速しています。ヘッドライン上昇率に対する寄与度も5月統計の+0.54%から6月統計では+0.59%まで拡大しています。5月統計から6月統計への上昇幅拡大の+0.1%ポイントに寄与していることは明らかです。インフレを大きく押し上げているのは電気代であり、ヘッドライン上昇率に対する寄与で何と+0.45%に達しています。これも引用した記事で指摘されている通りであり、先月5月から再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2024年度以降の買取価格等と2024年度の賦課金単価が引き上げられ、その影響が物価に出ています。
私が注目している食料について細かい内訳をヘッドライン上昇率に対する寄与度で見ると、コアCPI上昇率の外数ながら、生鮮食品が野菜・果物・魚介を合わせて+0.38%あり、うち生鮮野菜が+0.21%、生鮮果物が+0.14%の寄与をそれぞれ示しています。繰り返しになりますが、生鮮食品を除く食料の寄与度も+0.76%あります。コアCPIのカテゴリーの中でヘッドライン上昇率に対する寄与度を見ると、せんべいなどの菓子類が+0.13%、うるち米などの穀類が+0.12%、焼肉などの外食が+0.10%、おにぎりなどの調理食品が+0.09%、果実ジュースなどの飲料が+0.06%、などなどとなっています。サービスでは、宿泊料の+0.19%を含めて教養娯楽サービスの寄与度が+0.39%、コア財では引用した記事にも見られるルームエアコンなどの家庭用耐久財が0.06%、などといった寄与を示しています。
最後に上のグラフは、消費者物価指数(CPI)のヘッドラインと帰属家賃を除く総合のそれぞれの前年同月比上昇率をプロットしています。私は昨年まで大学院の院生に対して日本の物価について教えていた時、以下の引用情報にある渡辺教授の論文を読ませて、日本では家賃が動かないので物価上昇の認識が遅れる、と教えていました。バブル経済期の分析ではありますが、現時点でも、東京のマンション価格などが大きく高騰する中で、大きな動きを示さない帰属家賃を除く総合はヘッドライン上昇率よりも上昇率が高くなっています。上のグラフの通りです。本日公表された6月統計ではヘッドライン+2.8%、コア+2.6%に対して、帰属家賃を除く総合は+3.3%に達しています。もちろん、渡辺教授が分析した家賃とグラウにインプリシットに現れている帰属家賃は異なるのですが、参考まで、帰属家賃を除けばインフレ率は+3%を超えているという事実は頭の片隅に置いておきたいと思います。
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