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2024年7月 8日 (月)

緩やかな回復続く景気ウォッチャーと赤字の貿易収支を上回る第1次所得収支で黒字となった経常収支

本日、内閣府から6月の景気ウォッチャーが、また、財務省から5月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+1.3ポイント低下の47.0となった一方で、先行き判断DIも+1.6ポイント上昇の47.9を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+2兆8499億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトなどから記事を引用すると以下の通りです。

街角景気6月は1.3ポイント上昇、4カ月ぶりプラス 判断は維持
内閣府が8日発表した6月の景気ウオッチャー調査は現状判断DIが47.0となり、前月から1.3ポイント上昇した。4カ月ぶりのプラス。景気判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」で維持した。
指数を構成する3部門では、家計動向関連DIが前月から2.1ポイント上昇し47.0、雇用関連が0.2ポイント上昇し46.2となった。企業動向関連は47.3と0.6ポイント低下した。
内閣府の担当者によると、インバウンド需要や人流の回復が景況感を押し上げている一方、物価高が押し下げ要因となっている大きな構図は変わらない。
2-3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは前月から1.6ポイント上昇の47.9と、4カ月ぶりに上昇した。内閣府は先行きについて「価格上昇の影響などを懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている」とした。
調査期間は6月25日から30日。6月は所得税・住民税の定額減税が実施された。電気・ガス料金は政府補助の終了で、7月請求分(6月使用分)から値上がりが予定されている。
経常黒字41.8%増、5月は2兆8499億円 配当金が増加
財務省が8日発表した5月の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引状況を示す経常収支は2兆8499億円の黒字だった。前年同月から41.8%増加した。海外からの債券利子や配当金の受け取りが増え、第1次所得収支の黒字幅が拡大した。
経常収支は輸出から輸入を差し引いた貿易収支や、旅行収支を含むサービス収支、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支などで構成する。
経常収支の黒字額は、比較可能な1985年以降の5月としては過去最大となった。
第1次所得収支の黒字幅が前年同月比で13%増の4兆2111億円と、比較可能な1985年以降で過去最大となった。海外の金利上昇や円安を背景に受取額が増えた。
貿易収支は1兆1089億円の赤字と、前年同月から赤字幅は7.6%縮小した。資源高や円安により原油などの輸入額が膨らんだ。輸出は自動車のほか半導体関連の製造装置や電子部品が好調で、赤字幅縮小の要因となった。
サービス収支は23億円と、前年同月の1803億円の赤字から黒字に転じた。黒字は2カ月ぶり。訪日外国人の消費額から日本人が海外で使った金額を引いた旅行収支の黒字が55.7%増の4417億円と、黒字幅を拡大した。

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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景気ウォッチャーの現状判断DIは、昨年2023年年末11~12月から今年2024年2月まで50を超える水準が続いていましたが、5月統計で45.7をつけた後、本日公表の6月統計では47.0に上昇しています。長期的に平均すれば50を上回ることが少ない指標ですので、現在の水準は決して低くない点には注意が必要です。6月統計では家計動向関連・企業動向関連ともに上昇しています。家計動向関連では住宅関連を別にすれば、小売関連・飲食関連・サービス関連とも+2前月からポイントを上回る上昇でした。企業動向関連では、製造業が前月から+1.5ポイント上昇したものの、非製造業が▲2.5ポイント低下し、企業動向関連として▲0.6ポイント低下を示しています。やはり、内需に依存する部分が大きい非製造業における物価上昇の影響が出ている印象です。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」で据え置いています。先行きについては、猛暑効果や定額減税への期待が見られると考えるべきです。
また、内閣府のリポート「景気の現状に対する判断理由等」の中には、例えば飲食関連で、インバウンドの好影響につき「コーヒー豆製造卸の売上が2倍になっている。新規取引依頼が多く、良くなっている兆しがある。インバウンドが多く客単価が高いことも、良くなるとみている要因の1つである(東京都)」といった見方がある一方で、価格上昇に起因する売上減、すなわち、インフレの影響と見られるものがいくつかありました。例えば、南関東の一般小売店で「じりじりと円安が続いているため、輸入商材の価格が上昇し、販売量に影響している(東京都)」とかです。近畿のスーパーでも、「値上げの動きが始まった年明けから春頃は、そこまで販売量の落ち込みはみられなかった。その後の円安などもあり、値上げ価格が定着してくるにつれて、買い控えによる販売量の減少が進んでいる。」といった意見が見られます。もうひとつ目についたのは賃上げへの言及です。例えば、その他レジャーのうちの映画で「物価の上昇は止まらないが、それに伴う賃上げがない(東京都)。」などです。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは経常黒字は+2兆4577億円でした。レンジの上限は+3兆円を超えていましたので、実績の+2兆8499億円は大きなサプライズはありませんでした。円安が進みましたので経常黒字が大きく膨らんでいます。しかし、貿易収支は相変わらず赤字を計上しており、円安にも関わらず赤字が縮小したのとどまっています。もちろん、経常収支にせよ、貿易収支にせよ、たとえ赤字であっても何ら悲観する必要はなく、資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。加えて、先週7月2日に「国際収支から見た日本経済の課題と処方箋」報告書が公表されていますが、国際収支や経常収支に関して、それほど騒ぎ立てる必要もないと私は受け止めています。

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