自動車工業の減産により低下した鉱工業生産指数(IIP)と拡大続く商業販売統計と足踏み続く消費者態度指数
本日は月末閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計が、それぞれ公表されています。いずれも6月の統計です。IIP生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲3.6%の減産でした。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+3.7%増の13兆6780億円を示し、季節調整済み指数は前月から+0.6%の上昇を記録しています。まず、ロイターのサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
鉱工業生産6月は前月比3.6%低下、車減産で2カ月ぶりマイナス
経済産業省が31日発表した6月鉱工業生産指数速報は前月比3.6%低下と、2カ月ぶりのマイナスとなった。ロイターの事前予測調査では同4.8%低下が予想されていた。
一部メーカーの型式不正の影響で自動車の減産が響いたほか、半導体製造装置なども下押しした。基調判断は「一進一退ながら弱含んでいる」で据え置いた。
企業の生産計画に基づく予測指数は7月が前月比6.5%上昇、8月が同0.7%の上昇だった。
6月の鉱工業生産指数を下押ししたのは、自動車、生産用機械、汎用・業務用機械など。
特に自動車が前月比8.9%減となり、指数を1.26ポイント押し下げた。個別品目では半導体製造装置が18.0%減、ショベル系掘削機械7.8%減、一般用蒸気タービン99.0%減、コンベヤ35.5%減となり指数を押し下げた。
7月の予測指数は6月時点の3.6%上昇から引き上げられた。予測の上方修正は40カ月ぶり。
4-6月期の鉱工業生産指数は前期比2.9%上昇し2期ぶりのプラスとなった。
小売業販売額6月は+3.7%、食品値上げ・家電好調で28カ月連続増
経済産業省が31日に発表した6月の商業動態統計速報によると、小売業販売額(全店ベース)は前年比3.7%増となり、28カ月連続(訂正)で前年を上回った。飲食料品の値上げや家電販売などが販売額を押し上げた。
ロイターの事前予測調査では3.2%の増加が予想されていた。
業種別では、飲食料品が前年比2.4%増、家電などの機械器具小売が10.1%増、各種商品小売が7.7%増、燃料小売が4.7%などとなった。食品や石油の値上げの影響や、スマートフォン・エアコン販売の好調で販売が伸びた。自動車小売は、一部メーカーの生産停止の影響では1.6%減だった。
業態別では、家電大型専門店が10.3%増、ドラッグストア7.5%増、百貨店13.5%増、スーパー4.4%増、コンビニエンスストアが1.6%増。ドラッグストアで飲料・コメ、コンビニでアイスクリーム・菓子の販売が伸びた。
やや長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。
まず、引用した記事にはある通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は▲4.8%の減産が予想されていましたので、実績の前月比▲3.6%の減産は、やや上振れした印象です。しかしながら、引用した記事にもある通り、減産の大きな要因は自動車工業の認証不正の影響ですので、何とも先行きは不透明です。ただ、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、1月に下方修正した「一進一退ながら弱含み」を本日公表の6月統計でも据え置いています。また、先行きの生産については、製造工業生産予測指数を見ると、引用した記事にもある通り、足下の6月は補正なしで+6.5%の増産、上方バイアスを除去した補正後でも+4.0%の大きな増産となっています。前回調査の補正なしベースでの+3.6%増よりも上方修正されていますし、さらに、7月も+0.6%の増産との予想となっています。加えて、6月単月の統計では減産となっているものの、4~6月期の生産は前期比+2.9%増ですから、GDPもプラス成長の可能性が十分あります。4~6月期GDP統計速報1次QEは8月15日に公表予定ですので、またシンクタンクによる予想を取りまとめたいと思います。ということで、GDPから鉱工業生産に戻って、経済産業省の解説サイトによれば、5月統計での生産は、引用した記事にもある通り、自動車工業では▲8.9%の減産で、▲1.26%の寄与度を示しています。加えて、生産用機械工業が▲8.7%の減産、寄与度▲0.74%、汎用・業務用機械工業でも▲8.3%の減産、寄与度▲0.61%、などとなっています。そして、何と、経済産業省の解説サイトでは、生産・出荷とも上昇方向に寄与した産業が出現しません。
商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。見れば明らかな通り、小売業販売は堅調な動きを続けています。季節調整済み指数の後方3か月移動平均により、経済産業省のリポートでかなり機械的に判断している小売業販売額の基調判断は、本日公表の6月統計までの3か月後方移動平均の前月比が+1.0%の上昇となりましたので、基調判断が上方修正されています。すなわち、4月統計の「一進一退」から5月統計では「緩やかな上昇傾向」に、また、本日公表の6月統計では「上昇傾向」と2か月連続の上方改定となっています。加えて、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、6月統計ではヘッドライン上昇率が+2.8%、生鮮食品を除くコア上昇率も+2.6%となっていますので、小売業販売額の6月統計の+3.7%の増加は、インフレ率をやや超えている可能性が十分あります。したがって、実質的な消費も伸びていると考えるべきです。ただし、考慮しておくべき点は、国内需要ではなく海外からのインバウンドにより、部分的なりとも小売業販売額の伸びが支えられている可能性です。引用した記事にある通り、国民生活に身近で頻度高い購入が想像されるスーパーやコンビニよりも、百貨店販売の伸びの方が大きくなっている点にインバウンド消費が現れている可能性がうかがえます。したがって、小売業販売額の伸びが国内消費の実態よりも過大に評価されている可能性は考慮されるべきです。
本日、内閣府から7月の消費者態度指数が公表されています。グラフは上の通りです。消費者態度指数を構成する4項目の消費者意識指標のうち、「収入の増え方」が低下した一方で、ほかの「暮らし向き」と「雇用環境」と「耐久消費財の買い時判断」が上昇し、消費者態度指数としては前月から+0.3ポイント上昇し、36.7を記録しています。統計作成官庁である内閣府は基調判断を「改善に足踏みがみられる」で据え置いています。また、消費者の物価予想について「上昇する」と見込む割合は先月の93.8%からやや下がって、93.2%となっています。引き続き、9割を超えて高い比率です。
| 固定リンク
コメント