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2024年7月11日 (木)

5月統計の機械受注は足踏みがみられ設備投資は停滞するのか?

本日、内閣府から5月の機械受注統計の結果が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月から▲3.2%減少し8578億円となっています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

5月の機械受注3.2%減 基調判断を下方修正
内閣府が11日発表した5月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力を除く、季節調整済み)は前月比3.2%減少し8578億円だった。2カ月連続で低下した。通信業で携帯電話の基地局関連の受注が落ち込むなど非製造業が弱かった。
基調判断は「持ち直しの動きに足踏みがみられる」とし、4月までの「持ち直しの動きがみられる」から下方修正した。QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は0.9%増だった。
非製造業が7.5%減と2カ月ぶりに減少した。通信業が27.6%減と3カ月連続のマイナスだった。基地局向けとみられる通信機の受注が弱かった。
金融業・保険業は前月にシステム投資に伴う電子計算機の大きい受注があった反動で7.8%減と低調だった。不動産業も前月に大きく増えた反動で72.4%減だった。
製造業は1.0%増だった。電気機械や情報通信機械の受注が堅調だった。自動車・同付属品は7.4%減と4カ月ぶりに減った。
内閣府はトヨタ自動車などの認証不正について「それによって受注が落ちているとの情報は寄せられていない」と説明した。
基調判断を下方修正したのは1月以来で、このときは「足踏みがみられる」から「足元は弱含んでいる」に引き下げた。3月に「持ち直しの動きがみられる」に上方修正し、今回再び「足踏みがみられる」に下方修正となった。
内閣府は基調判断の変更理由について、船舶・電力を除く民需で月ごとのぶれをならした3カ月移動平均が減少したことなどを挙げた。
農林中金総合研究所の南武志氏は「全体的な設備投資意欲は底堅いが、足元はやや慎重になっている可能性もある」と指摘した。

包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比+1.2%増でした。記事にある+0.9%増というには見当たりませんでした。いずれにせよ、市場の事前予想は+1%程度ということでしたので、実績の▲3.2%減は予想レンジの下限▲0.1%減を大きく下回りました。4月の前月比▲2.9%減に続いて、5月も▲3.2%減だったわけで、したがって、というか、何というか、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に半ノッチ下方修正しています。今年に入ってからの基調判断は目まぐるしく変更されており、引用した記事の7パラ目にある通り、1月には「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から「足元は弱含んでいる」に引き下げられ、2か月後の3月には「持ち直しの動きがみられる」に上方修正し、今回5月統計を受けて再び「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に下方修正されています。これも、引用した記事の最後のパラにあるように、設備投資については企業マインドとしての意欲は底堅い一方で、設備投資が実行されているかどうかは、GDP統計や本日公表された機械受注などには一向に現れていません。すなわち、投資マインドと実績の乖離が激しくなっています。その理由について、私は十分には理解できていません。これだけ人手不足が続いている中で、設備投資の伸びもなく、したがって、DXやGXが進まないとすれば、日本企業は大丈夫なのでしょうか?

最近読んだ伊丹先生の『漂流する日本企業』でも指摘されていますし、長らく日本企業の投資不足が指摘されていますが、設備投資が進まず、労働者の資本装備率も低迷するため生産性が伸びない中で、人口減少が加速するとすれば、投資不足と人手不足が負のスパイラルを生じるような気がしてなりません。

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