商品市況と円高の影響で上昇幅が縮小した8月の企業物価指数(PPI)と自動車の認証不正を底に企業マインドの回復続く法人企業景気予測調査
本日、日銀から8月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+3.0%の上昇となり、先月6月統計からさらに上昇幅が拡大しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業物価指数、8月2.5%上昇 8カ月ぶりに伸び鈍化
日銀が12日発表した8月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は123.0と、前年同月比で2.5%上昇した。7月(3.0%上昇)から伸び率が0.5ポイント鈍化した。民間予測の中央値(2.8%上昇)より0.3ポイント低かった。中国経済の減速による銅など原材料価格の下落が響いた。
8カ月ぶりに伸びが鈍化した。企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。
内訳では、銅など非鉄金属が前年同月比11.4%上昇と、7月(18.9%)から伸び率が縮まった。非鉄金属の主要消費国である中国景気の減速を受け、商品相場が下落したことが影響した。
円高の進行が輸入物価の伸び鈍化につながった。円ベースの輸入物価指数は2.6%上昇で、7月(10.8%)と比べて伸び率が鈍化した。24年8月のドル・円相場は平均で1ドル=146円台と、7月(157円台)から円高にふれた。
電力・都市ガス・水道は10.6%上昇し、7月から増加幅が拡大した。政府が停止した電気・ガスの補助金が価格の押し上げにつながった。
いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。
まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+2.8%と見込まれていましたので少し下振れた印象でした。国内物価の上昇幅が大きく縮小したした要因は、引用した記事にもある通り、中国の景気減速による商品価格の低下と円高です。政府による電気・ガスの補助金は停止されたままで、物価の押上げ要因となっています。非鉄金属をはじめとする商品価格の下落と円高ですから輸入物価への影響が大きく、前年同月比ベースで輸入物価は4~7月まで2ケタ上昇でしたが、8月は一気に+2.6%まで上昇幅を縮小させています。原油についても基本的に童謡の価格動向が観察されます。すなわち、円建て輸入物価指数の前年同月比で見て、6月+22.0%、7月+22.2%の上昇が、8月統計では一気に+6.5%まで上昇幅を縮小させています。ちなみに、8月統計の原油の契約通貨建て価格の前年同月比上昇率は+5.3%を記録しています。何度も繰り返している通り、我が国では金融政策を通じた需給関係などよりも、原油価格のパススルーが極端に大きいので、上昇にせよ下落にせよ国内物価にも無視し得ない影響を及ぼしています。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率・下落率で少し詳しく見ると、電力・都市ガス・水道が7月の+6.5%から8月は+10.5%に大きく上昇幅を拡大しています。食料品の原料として重要な農林水産物は7月の+4.0%から8月は+5.3%と上昇幅をやや拡大しています。したがって、飲食料品の上昇率も8月+2.1%と高止まりしており、ほかに、非鉄金属が+11.4%が2ケタ上昇を示しています。ただし、石油・石炭製品は7月+0.4%から8月には▲4.0%と下落に転じています。原油価格が円建てでも上昇を示している一方で、石油・石炭製品の価格の落ち着きはやや不思議であると私は受け止めています。
また、本日、財務省から4~6月期の法人企業景気予測調査が公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は前期の4~6月期に+0.4とプラスに転じた後、足元の7~9月期は+5.1と2四半期連続のプラスを記録し、先行き10~12月期には+7.2、2025年1~3月期でも+4.7と、順調にプラスを続けると見込まれています。法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは上の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は、企業物価(PPI)と同じで、景気後退期を示しています。
自動車の品質不正問題が響いて、BSIのヘッドラインとなる大企業全産業で見て前期の1~3月期に瞬間風速で小さなマイナスをつけたものの、前期の4~6月期にはプラスに転じ、足元の7~9月期、先行きの10~12月期から2025年1~3月期と企業マインドは順調に回復する見通しが示されています。この間、大企業レベルでは製造業・非製造業ともにBSIはプラスと見込まれています。雇用人員も引き続き大きな「不足気味」超を示しており、大企業全産業で見て9月末時点で+27.0の不足超、12月末で+24.1、来年3月末でも+21.3と大きな人手不足が継続する見通しです。設備投資計画は今年度2024年度に全規模全産業で+12.5%増が見込まれています。これまた、製造業・非製造業とも2ケタ増を計画しています。それなりに期待していいのではないかと思いますが、まだ、機械受注の統計やGDPに明確に反映されるまで至っていませんので、私自身は計画倒れになる可能性もまだ残っているものと認識しています。
果たして、10月1日公表予定の日銀短観やいかに?
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