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2024年9月 6日 (金)

8月米国雇用統計に見る米国労働市場の過熱感は払拭されたか?

日本時間の今夜、米国労働省から8月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は昨年2021年から着実にプラスを記録していましたが、6月統計では+179千人増、7月統計では+89千人増、直近の8月統計では+142千人増となり、失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して4.2%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を、中見出しを除いて、やや長めに7パラ引用すると以下の通りです。

August jobs report: Economy added disappointing 142,000 jobs as unemployment fell to 4.2%
U.S. employers added a disappointing 142,000 jobs in August as hiring bounced back only partly after temporary hurdles curtailed payroll gains the previous month and sparked recession fears.
And employment gains for June and July were revised down sharply, portraying an even weaker picture of the labor market in early summer. The report, along with the downward revisions, may prompt the Federal Reserve to lower its key interest rate more sharply at a meeting later this month, some economists said.
The unemployment rate, which is calculated from a separate survey of households, fell from 4.3% to 4.2%, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg previously estimated 163,000 jobs were added last month.
Payroll gains were revised from 179,000 to 118,000 in June and from 114,000 to 89,000 in July, underscoring that the labor market may be cooling more rapidly than economists anticipated.
Average hourly pay rose 14 cents to $35.21, pushing up the yearly increase from 3.6% to 3.8%.
Wage growth generally has slowed as pandemic-related worker shortages have eased. Economists have said yearly pay increases need to drop to 3.5% to align with the Federal Reserve’s 2% inflation goal.

いつもの通り、よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、2020年4月からの雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたのですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

photo

ということで、米国の雇用は非農業部門雇用者の増加が、ひとつの目安とされる+200千人を大きく下回って、8月統計では+142千人を記録しています。引用した記事の4パラ目にあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは+163千人という見方でした。ですので、記事のタイトルにも "disappointing" 「失望」と表現しています。なお、引用した記事の5パラ目にあるように、6-7月統計も先月の公表時から下方修正されています。すなわち、6月統計は+179千人増が+118千人増に、7月統計は+114千人増が+89千人増に、それぞれ修正されています。他方、失業率は▲0.1%ポイント低下して4.2%に達しました。レイオフされていた雇用者が8月には職場に戻るといわれていましたので、この失業率の低下は予想通りと受け止められているようです。ですので、失業率が低下したからといって、米国労働市場の過熱感はほぼ払拭されたといえます。逆に、先行き一気に冷え込むリスクを表明するエコノミストもいたりしますので、そのあたりの経済政策の舵取りが微妙な局面に差しかかった気がします。
米国連邦準備制度理事会(FED)のパウエル議長は、先月8月23日のジャクソンホール会合における発言で "The time has come for policy to adjust. The direction of travel is clear, and the timing and pace of rate cuts will depend on incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks." と明確に次の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げを示唆しました。日米ともに株式市場の動向が荒っぽくなっている中で、今年2024年年内から来年2025年年初くらいまでは、米国FEDは利下げ、日銀は利上げの方向が模索されることになります。日本がデフレに逆戻りしないよう、私に出来ることは祈ることだけです。

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