上昇率が高まった9月の企業物価指数(PPI)をどう見るか?
本日、日銀から9月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+2.8%の上昇となり、先月8月統計の+2.6%から上昇幅が拡大しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業物価指数9月2.8%上昇 伸び率拡大、コメなど寄与
日銀が10日発表した9月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は123.1と前年同月比で2.8%上昇した。民間予測の中央値より0.5ポイント高かった。コメや鶏卵の価格上昇の影響で、伸び率は8月から0.2ポイント増え、2カ月ぶりに拡大した。
精米や玄米、鶏卵など農林水産物の伸び率は12.4%と8月の5.4%から大幅に拡大した。コメは飼料価格や輸送費、人件費などの上昇の転嫁が進んだ。
一方、円ベースの輸入物価指数は2.6%下落し、2024年1月(0.1%下落)以来、8カ月ぶりにマイナスに転じた。9月のドル円相場は平均で1ドル=143円台と円高・ドル安方向に振れたことを反映した。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。
電力・都市ガス・水道は7.9%上昇と8月(10.5%上昇)から伸び率が鈍化した。電気・ガスの補助金が9月検針分から再開されたことが押し下げ要因となった。補助金は11月検針分まで続く予定だ。
石油・石炭製品は1.3%上昇と8月(3.8%下落)からプラスに転じた。非鉄金属は9.7%上昇と8月(11.4%上昇)から伸び率が鈍化した。非鉄金属の主要消費国である中国景気の減速を受け、商品相場が下落したことが影響した。
いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。
まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+2.3%、予測レンジの上限でも+2.8%と見込まれていましたので、実績の+2.8%はレンジ内とはいえ少し上振れた印象でした。国内物価の上昇幅が拡大したした要因は、引用した記事にもある通り、米や鶏卵などの農林水産物の価格上昇です。政府による電気・ガスの補助金は9月検針分から再開されたことが押下げ要因となっており、11月検針分まで継続される予定です。ただ、注意すべき点は、企業物価指数の国内物価、輸出物価、輸入物価のうち前年同月比で見て上昇しているのは国内物価だけです。すなわち、輸出物価と輸入物価については9月統計ではマイナスを記録しています。ですから、為替レートの円安是正は十分に進んだ可能性がある、と考えるべきです。他方で、原油価格の影響についても、中東の地政学リスクを別にすれば、日本の物価にとっては中立水準にかなり近づいた可能性が否定できません。何度も繰り返している通り、我が国では金融政策を通じた需給関係などよりも、原油価格のパススルーが極端に大きいので、上昇にせよ下落にせよ国内物価にも無視し得ない影響を及ぼしています。参考までに、日本総研「原油市場展望」(2024年10月)では、「2024年9月のWTI原油先物価格は、上旬に60ドル台半ばに低下」した後、「中旬には、70ドル台前半に上昇」し、「先行きを展望すると、原油価格は70ドル台を中心に推移する見込み」ということになっていて、地政学的リスクに対する警戒に言及しています。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率・下落率で少し詳しく見ると、まず、食料品の原料として重要な農林水産物は8月の+5.4%から9月は+12.4%と上昇幅を大きく拡大しています。したがって、飲食料品の上昇率も9月は+2.0%と高止まりしています。他方で、電力・都市ガス・水道が8月の+10.5%から9月は+7.9%に小幅に上昇幅を縮小させています。ほかに、非鉄金属が+9.7%と2ケタ近い上昇を示しています。ただし、石油・石炭製品は8月の▲3.8%から8月は+1.3%の上昇に転じていますが、まだまだ小幅な上昇です。
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