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2024年10月16日 (水)

2か月連続で減少した8月の機械受注をどう見るか?

本日、内閣府から8月の機械受注が公表されています。機械受注のうち民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月から▲1.9%減の8581億円となっています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。

機械受注8月は前月比-1.9%、2カ月連続減 「持ち直しに足踏み」維持
内閣府が16日に発表した8月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標である船舶・電力を除いた民需の受注額(季節調整値)は前月比1.9%減だった。2カ月連続の減少。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」で据え置いた。
内閣府によると、航空機など前月に大幅に伸びた分野で減少に転じた影響もあった。基調判断は3カ月移動平均も勘案しており変更しなかった。前年比では3.4%減だった。
ロイターが事前にまとめた予測値は前月比0.1%減で、結果は予想よりも減少幅が大きかった。
内閣府によると、7-9月見通しの0.2%増の達成には9月は同4.2%増が必要となる。
農林中金総合研究所の理事研究員、南武志氏は「基調は弱く、先行きも踊り場的な状況が続くだろう」と指摘。国内の個人消費に加えて、外需も中国、米国、欧州など弱く、設備投資の先行きは期待できないとみている。
製造業は前月比2.5%減の3884億円で、3カ月連続の減少。業種別では「その他輸送用機械」、「情報通信機械」、「電気機械」などが押し下げに影響した。

包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、市場の事前コンセンサスでは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比▲0.1%減でしたので、実績の▲1.9%減は下振れした印象です。しかも、7~8月の2か月連続で前月比マイナス、8月統計では製造業が▲2.5%減の3884億円、船舶・電力を除く非製造業も▲7.7%減の4469億円と弱い内容となっていますが、しかしながら、というか、何というか、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」で据え置いています。引用した記事にもある通り、次の9月統計で+4.2%増となれば、7~9月期の受注見通し+0.2%増の結果がもたらされます。かなり大きな増加幅ではないかという印象がある一方で、単月での振れの大きな指標ですので、何とも先行きは見通せません。例えば、7月統計では運輸業・郵便業に大型受注があって+35.0%増を記録した後、8月統計ではその反動により▲34.4%減となっていますし、この運輸業・郵便業の動向が部分的なりとも8月の前月比のマイナス幅を大きくした可能性は否定できません。ただ、先行きリスクは下方に厚いと私は考えており、製造業については円高のダメージが、非製造業については内需の弱さが、それぞれ現れている可能性が否定できません。加えて、年内10~12月期くらいから年明けには日銀による金利引き上げの影響がラグを伴って現れる可能性が十分あります。すでに、住宅ローン金利が引き上げられたのは広く報じられている通りです。
ただ、さらに大きな謎は、設備投資については、日銀短観などで示されている企業マインドとしての意欲は底堅い一方で、設備投資が実行されているかどうかは、GDP統計や本日公表された機械受注などには一向に現れていない点です。すなわち、投資マインドと実績の乖離が気にかかります。乖離の理由について、私は十分には理解できていません。これだけ人手不足が続いている中で、設備投資の伸びもなく、したがって、DXやGXが進まないとすれば、日本企業は大丈夫なかどうか、とても不安が残ります。

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