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2024年11月14日 (木)

明日公表予定の7-9月期GDP統計速報1次QEは小幅のプラス成長か

先月末の鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計をはじめとして必要な統計がほぼ出そろって、明日11月15日に、7~9月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下のテーブルの通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である4~6月期ではなく、足元の7~9月期から先行きの景気動向を重視して拾おうとしています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.2%
(+0.9%)
10~12月期の実質GDPは7~9月期から小幅に加速する見通し。物価の伸びが鈍化する一方、名目賃金が拡大基調を維持することで、実質賃金は上昇基調を辿る見込み。所得環境の改善により個人消費は増勢を維持するほか、内外需の回復を受けた能力増強投資の回復を背景に設備投資が再び増加に転じる見通し。
大和総研+0.1%
(+0.3%)
2024年10-12月期の日本経済は3四半期連続のプラス成長を見込んでいる。自動車の生産体制正常化に伴う増産や所得環境の継続的な改善、企業の旺盛な設備投資意欲、インバウンド消費の持ち直しなどが押し上げに寄与しよう。
個人消費は、持ち直しが加速すると予想する。実質賃金は2024年6月に前年比+1.1%と27カ月ぶりにプラスへと転換し、8月は同▲0.8%と再びマイナスに転じたものの、均して見れば2023年初からの持ち直し基調が継続している。今後も賃上げを反映した賃金改定が広がり、また物価上昇が一服する中で、実質賃金の緩やかな上昇が進むとみている。また、自動車のペントアップ需要の消化は一部で進捗が見られているものの、不正認証問題や台風に伴う断続的な供給制約の影響から当初想定していたほどには進んでおらず、今後の加速が期待される。
住宅投資は減少するとみられる。住宅価格の上昇ペースの減速などが需要を下支えするものの、2四半期連続で増加した反動が表れよう。
設備投資は増加に転じると予想する。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)によると、9月調査時点3における2024年度の設備投資計画(全規模全産業、除く土地、含むソフトウェア・研究開発)は前年度比+10.1%だった。9月調査時点としては比較的高水準を維持しており、企業の投資意欲は引き続き旺盛だ。10-12月期には自動車の増産なども追い風となり、建設投資の一層の進捗にも期待がかかる。デジタル化、グリーン化に関連したソフトウェア投資や研究開発投資も底堅く推移するとみられる。
公共投資は減少するとみられる。「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の執行が下支えする一方、4-6月期に上振れした影響の剥落が下押し要因となりそうだ。他方、政府消費は増加すると予想する。医療費などの趨勢的な増加が続くとみられる。
輸出は増加が続くとみられる。財輸出は、前述した自動車の増産や半導体市況の回復などを受けて増加する見込みだ。サービス輸出は、7-9月期に落ち込んだインバウンド消費が持ち直す一方、業務用サービスなども趨勢的な増加が続くとみられる。
みずほリサーチ&テクノロジーズ+0.2%
(+0.7%)
10~12月期は、既往の利上げの影響で減速が見込まれる米国、ドイツを中心に不振が続く欧州、不動産部門の調整長期化が予想される中国など海外経済の減速が外需の重石になる一方、高水準の企業収益が賃金や設備投資に回ることで、内需を中心に日本経済は回復基調で推移する見通しであり、現時点で年率+1%程度のプラス成長を予測している。
前述したとおり、高水準の賃上げ率を背景に、名目賃金(所定内給与)は前年比+3%程度の伸びが続くことが見込まれる一方、消費者物価については政府による「酷暑乗り切り緊急支援」を受けて9月以降の電気代・ガス代の前年比上昇率が再び低下するため、10~12月期の実質賃金は前年比プラスで推移すると予測している(10月には昨年10月にガソリン代・都市ガス代の補助金が半減されたことの裏が出る影響もあり、エネルギーの伸び率はさらに縮小する見込みである)。基調的な実質賃金の回復を受けて、個人消費も増加基調で推移するとみている。ただし、実質賃金前年比のプラス幅は0%台半ば程度が見込まれ、これまで2年以上過続いた実質賃金の低下に比して反発力は十分なものとは言えず、個人消費の回復も緩やかなものになるとみている。米類を中心とした食料の価格上昇等を受けて10月の消費者態度指数は低下しており、消費マインドの改善には足踏み感がみられる。
設備投資についても、前述したように2024年度の設備投資計画が堅調であることに加え、世界的な半導体市場の回復等が先行きの押し上げ要因になり、増加基調での推移が続くだろう。中期的な観点からは、中国・アジアの人件費上昇に伴う生産拠点としてのコスト優位性の低下、米中対立の深刻化・地政学的リスクの高まり(経済安全保障への関心の高まり)を背景としたグローバル・サプライチェーンの見直し、さらには近年の円安進行等が国内投資シフトを後押ししている面もあると考えられる。内閣府「企業行動に関するアンケート調査」(上場企業が調査対象)をみると、今後3年間の設備投資見通しは全産業で年度平均+6.8%と1990年(同+7.9%)以来の高い伸びとなっている。また、日本政策投資銀行「2024年度設備投資計画調査」をみても、コロナ禍前対比で国内の生産拠点を強化する動きが継続していることが確認できる。精密機械や輸送用機械等を中心に広がりつつある国内生産拠点強化の動きが設備投資の持続的な押し上げ要因になろう。ただし、前述した建設業等の人手不足が下押し要因となることで強気な計画対比でみると低い伸びとなりそうだ。
一方、外需については当面力強い伸びは期待しにくい。海外経済の減速が引き続き財輸出の逆風になるだろう。米国経済は、企業の値下げ戦略が奏功し、家計の消費は大幅な悪化を回避するほか、インフレ減速に伴い仕入れコストが抑制されることで企業業績も底堅く推移し、雇用が下支えされるなどソフトランディングに成功する可能性は高いとみている。一方で、既往の高金利政策の余波が低所得層・中小企業を中心に及ぶことで2025年前半にかけて小幅な減速が見込まれる(FRBの利下げで金融環境は徐々に緩和に向かうものの利下げの恩恵が顕在化するまでにタイムラグがある)。欧州経済についても、製造業の低迷が続くドイツを中心に低成長が続く見通しだ。既往の利上げによる需要減少に加えて、エネルギー価格上昇を主因とした競争力の低下が不振の背景にあり、ドイツの製造業の弱さは物流やリースなど製造業の影響を受けやすいサービス業にも波及していることも踏まえると、2025年にかけて低成長が続く可能性が高い。10月のユーロ圏総合PMIも2カ月連続で50割れとなっており、景況感の低迷が続いている。さらに、中国経済は、不動産過剰在庫の調整が完了し、価格が底入れして住宅販売や不動産投資が上向くまで3年以上かかる公算が大きい。雇用や所得の先行き不安に加え、住宅不況による逆資産効果が消費回復の足かせになるだろう。こうした海外経済の動向を踏まえると、財輸出の力強い回復は当面期待しにくい。特に中国は内需の不振を輸出ドライブ(価格引き下げによる輸出促進)でカバーする構図が2023年半ば以降続いており、中国製品との競争激化が日本の輸出の伸び悩みにつながることも懸念される(特に近年はNIEs・ASEANといった市場で幅広い日本製品が中国製品に割り負けしている模様だ)。
インバウンド需要についても、高水準での推移が継続するものの増勢は鈍化するとみられる。国内線も含めた航空需要が回復する中で、グランドハンドリング人材不足等で地方空港では国際線の復便や増便に対応できない事例もあり、地方訪問縮小の一因になった可能性があるだろう。中国からの訪日客数が伸び悩んでいる背景に旅客便回復の遅れがあるとみられる。円高進展等を受けて、一人当たり消費単価についても買い物代や平均泊数(観光・レジャー目的)の縮小等を通じて高水準ながらも回復ペースが鈍化する可能性が高いだろう。
ニッセイ基礎研+0.2%
(+0.8%)
2024年7-9月期は2四半期連続のプラス成長を確保したが、所得税・住民税減税が6月から実施されていることを考慮すると、消費を中心に期待はずれの低成長にとどまったとみられる。現時点では、10-12月期の実質GDPは前期比年率1%程度のプラス成長を予想しているが、物価の高止まりなどを背景に、引き続き民間消費を中心に下振れリスクは高い。
第一生命経済研▲0.0%
(▲0.1%)
仮に7-9月期のマイナス成長になったとしても、日本銀行は「台風や地震による下振れの影響が大きい。個人消費は底堅い」として問題視しない可能性が高い。日本銀行は伝統的にGDPを重要視しない傾向があるため、金融政策に影響が生じる可能性は小さいと思われる。
もし影響が出るとすれば財政政策だろう。政府は現在、11月中にもまとめる総合経済対策の内容について調整を行っているが、仮にマイナス成長となれば、対策規模を膨らませようという意見が増える可能性がある。与党の過半数割れにより歳出拡大圧力が強まっている状況であるため、GDPの結果がそうした流れをさらに後押しする可能性があることに注意したい。
伊藤忠総研+0.1%
(+0.4%)
続く2024年10~12月期も、賃金上昇と物価上昇の鈍化により実質賃金が増加し、個人消費の拡大が加速しよう。設備投資も景気の回復を背景に増勢を強めるとみられる。輸出も増勢を維持し、実質GDP成長率は内需主導で前期比の成長率を高めると予想する。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.1%
(+0.4%)
2024年7~9月期の実質GDP成長率(1次速報値)は、前期比+0.1%(前期比年率換算+0.4%)と予想される。2四半期連続でのプラス成長であり、景気は緩やかな持ち直しを続けていることが示されようが、プラス幅は小幅であり、持ち直しペースは極めて緩慢である。個人消費が力強さに欠け、設備投資も減少に転じるなど内需の弱さが目立つ。
三菱総研+0.3%
(+1.2%)
2024年7-9月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.3%(年率+1.2%)と、2四半期連続のプラスを予測する。
明治安田総研+0.2%
(+0.7%)
先行きについては、賃金上昇のほか、「酷暑乗り切り緊急支援」などの政策の後押しによる物価上昇率の鈍化が個人消費の下支え要因になると予想する。設備投資は、企業収益が堅調なことに加え、シリコン・サイクルの好転に伴う半導体製造装置や、半導体材料の増産のための投資需要が追い風になるとみる。一方、住宅投資は、住宅価格の高止まりと住宅ローン金利の上昇が足枷になると見込む。外需も当面軟調な推移が続くとみる。インバウンド需要は下支え要因となるものの、中国景気が力強さを欠くことなどから財輸出は停滞気味の推移が見込まれ、日本の景気の回復ペースは緩やかなものにとどまると予想する。
農中総研+0.6%
(+2.5%)
7~9月期のGDPについて、実質成長率は前期比0.2%(同年率換算 0.6%)と、4~6月期(2.9%)から鈍化するものの、2期連続のプラスと予想する。また、前年比も0.3%と3期ぶりのプラスが見込まれる。名目成長率も前期比0.6%(同年率2.5%)と2期連続のプラスとなるだろう。なお、全般的には、デフレギャップが存在する中で「潜在成長率」並みの成長率にとどまるなど、足踏み感を払拭できない数字と評価できる。

マイナス成長予想をしている第一生命経済研究所を別にして、ズラリと小幅のプラス成長の予想が並んでいる印象です。ひとつには消費が緩やかに持ち直している点を上げておきたいと思います。消費者物価が近年になく上昇しているとはいえ、春闘の大幅賃上げに加えて、6月から実施されている所得税・住民税減税により所得環境は改善していることが明らかです。ただし、他方で、南海トラフ地震情報や異常気象による工場操業停止の影響などもあって、マインドはそれほど好転していない可能性も高いと考えるべきです。住宅投資と設備投資は物価上昇の影響が消費よりも強く出る可能性がありますので、それほど期待はできません。外需はプラス寄与すると予想していますが、直近の9月の経常収支の黒字幅はやや懸念材料かもしれません。ただ、何といっても消費の牽引によりプラス成長の可能性高いと私は考えています。
下のグラフはニッセイ基礎研究所のリポートから引用しています。

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