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2024年11月22日 (金)

やや上昇率が縮小した10月の消費者物価指数(CPI)

本日、総務省統計局から10月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、前月の+2.8%から縮小し+2.4%を記録しています。久しぶりの上昇幅縮小です。日銀の物価目標である+2%以上の上昇は2022年4月から30か月、すなわち、2年半の間続いています。ヘッドライン上昇率も+2.5%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+2.1%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

10月の消費者物価、2.3%上昇 2カ月連続で伸び率縮小
総務省が22日発表した10月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が108.8となり、前年同月と比べて2.3%上昇した。政府による電気・ガス代補助の再開でエネルギーの上昇幅が縮んだことなどから、2カ月連続で伸び率が縮小した。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は2.2%の上昇だった。
エネルギーの上昇幅は2.3%で、9月の6.0%から縮小した。政府が5月使用分までで止めていた電気・ガス代への補助を8月使用分から再開したことで、請求分が反映される9月、10月と2カ月連続でエネルギーの伸び率は鈍化した。
生鮮食品を除く食料は3.8%プラスだった。価格高騰が続くコメ類は58.9%上昇し、比較可能な1971年1月以降、過去最大の伸び率となった。
原材料価格の高騰でチョコレートなどの菓子類が5.0%プラス、オレンジジュースなど飲料が6.1%プラスと多くの品目で上昇した。生鮮果物でも、猛暑の影響で不作だったみかんが12.5%プラスと大幅に上昇した。
このほか、ルームエアコンが売れたことなどから家庭用耐久財が6.0%、地震や災害の増加による保険料改定に伴い火災・地震保険料が7.0%上昇した。下落が大きかったのは通信で、マイナス3.5%だった。

何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.2%ということでしたので、実績の+2.3%はやや上振れた印象はあるものの大きなサプライズはありませんでした。品目別に消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率に対する寄与度を少し詳しく見ると、まず、生鮮食品を除く食料の上昇が継続しています。すなわち、先月9月統計では前年同月比+3.1%、寄与度+0.73%であったのが、今月10月統計ではそれぞれ+3.8%、+0.92%と、さらに高い伸びと寄与度を示しています。次に、エネルギー価格については、4月統計から前年同月比で上昇に転じ、本日公表の10月統計では先月からやや上昇率は縮小したものの、+2.3%の高い上昇率となっていて、寄与度も+0.17%を示しています。特に、インフレを押し上げているのは電気代であり、寄与度は+0.13%に達しています。引用した記事で指摘されている通り、政府の「酷暑乗り切り緊急支援」による押し下げ効果が再開されて、先月から上昇率はこれでも縮小しています。なお、統計局のプレスリリースによれば、この緊急支援の寄与度は▲0.54%、うち電気代▲0.45%、都市ガス代▲0.09%、とそれぞれ試算されています。
多くのエコノミストが注目している食料について細かい内訳について、前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率に対する寄与度で見ると、繰り返しになりますが、生鮮食品を除く食料が上昇率+3.8%、寄与度+0.92%に上ります。その食料の中で、コシヒカリを除くうるち米などの穀類が上昇率+60.3%ととてつもないインフレとなっていて、寄与度も+0.22%あります。さすがに一時の品薄感は解消されつつありますが、少し前までスーパーなどからコメが姿を消していたわけですし、今でも大きく値上げされているのは日常生活でも目にし、広く報道されているところかと思います。コメの値上がりの余波を受けて、外食のすしが上昇率+6.1%、寄与度+0.02%を記録しています。すしも含めた外食のカテゴリーでは、上昇率+2.9%、寄与度も+0.13%に上っています。豚肉などの肉類が上昇率+5.0%、寄与度も+0.13%あり、チョコレートなどの菓子類が上昇率+5.0%、寄与度+0.13%、果実ジュースなどの飲料も上昇率+6.1%、寄与度0.10%、焼豚などの調理食品が上昇率+1.8%、寄与度+0.07%、などなどとなっています。コアCPIの外数ながら、みかんなどの生鮮果物も上昇率+6.6%、寄与度+0.07%の寄与となっています。また、食料からコア財に目を転じると、引用した記事にもあるように、ルームエアコンなどの家庭用耐久財が上昇率+6.0%、寄与度+0.09%、うち、ルームエアコンだけでも上昇率+15.2%、寄与度+0.07%を示しています。サービスでは、外国パック旅行費の上昇率+75.6%、寄与度+0.17%を含めて教養娯楽サービス全体で上昇率+5.5%、寄与度が+0.29%、などとなっています。食料だけでなく、耐久財などのコア財、サービスまで幅広い値上がりが見られます。

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